ハッキング

泣いた女が バカなのか 騙した男が 悪いのか
という歌があったけれど
騙したほうが悪いのか 騙されたほうが悪いのか
という議論は 永遠に尽きない

騙したほうが悪いに決まっているのだが
社会はそんなに甘くない
信用してはいけない人を信用したり
嘘を見抜けずに金を払ったりすれば
ひどい結果が待っている

良いことをすれば報われて
悪いことをすれば罰せられると
言われるままに信じてみたいけれど
高級住宅地に並んでいる家々は
悪いことをしなければ手に入るまい

泥棒に入られる方が悪いとか
いじめられた方が悪いとか
悪い人たちが弱者を悪く言う

ふざけるんじゃない
泥棒が悪いに決まっているし
いじめた人が悪いに決まっている
悪い人が悪い
そう言わなければいけない

騙したほうが悪いのだ

**

でも 騙したほうが悪いというような論理は
ハッキングには通じない
ハッキングする方が悪いなんて言っているうちに
ITシステムは次々にハッキングされ
ハッキングされる方が悪いとしか
言いようのない現実が広がっている

ホワイトハット・ハッカーと言われる人がいて
どんな時にも法を守り 倫理に反することはせずに
政府機関や民間企業などのITシステムを守っている

ブラックハット・ハッカーと言われる人もいて
法を破ることも 倫理に反することも 躊躇せず
政府機関や民間企業などのITシステムを攻撃する

グレイハット・ハッカーはその中間で
自分が任されているITシステムを守るためなら
時として法を破り 倫理に反する行動をとる

ホワイトハット・ハッカーに課せられた制約は大きく
ITシステムを防衛しようと思えば
グレイハット・ハッカーにならざるをえない

ホワイトハット・ハッカーは そもそも報酬が少ないし
いい道具と環境が与えられず 技術的に劣ることが多いから
ブラックハット・ハッカーの攻撃を 防ぐことはできない

ホワイトハット・ハッカーを 倫理的なハッカーと呼ぼうと
コンピュータセキュリティの専門家と呼ぼうと
侵入テストを繰り返していれば そうそうホワイトではいられない

ブラックハット・ハッカーの攻撃を防ぐには
ホワイトハット・ハッカーに 法を破り 倫理に反することを許し
ブラックハット・ハッカーの道具や環境以上のものを与えるしかない

いい道具や環境を与えたからといって
ハッキングが防げるわけでもない

こちらのホワイトハット・ハッカーは
あちらにとってはブラックハット・ハッカーで
こちらのブラックハット・ハッカーは
あちらにとってはホワイトハット・ハッカーなのだ

ハッキングは戦いだと心に決めて
味方を守るために戦うしかない
負けた武将が消えるしかなかったように
負けたハッカーは消えるしかない

優秀なハッカーを揃えた集団が
勝ち残っていくという現実から
目をそむけないほうがいい
ハッキングが いい悪いで語られた時代は
もう とうに 終わったのだ
ハッキングは強いほうがいいに決まっている

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