まぼろし

昔々 神が祀られたときに
山や丘は木で覆われ
あたりは草ぼうぼうで
人は自然のなかにいた
だから
草を引っこ抜き
地面をならし
周りを縄で囲うだけで
その場所が神聖に見え
 神がいる
そう思えたのに違いない

禅寺の庭が作られたときに
禅寺に向かう道は
木や草や花がいっぱいで
鳥や虫や蝶が忙しく
だから
庭に大きな石を置き
まわりに小さな石を敷き詰め
波を描いただけで
その場所が静寂に包まれ
 無の境地に立てる
そう思えたに違いない

今 人が住む町には 音があふれ
人や乗り物が動き回り
夜が来ても 闇はない

神社に入っても
神を感じない
禅寺の庭を前にしても
無は遠い
バーチャルな世界には
安らぎがない
人が感じていた愛は
今でもあるのだろうか
君は
ずっとそこにいるのだろうか

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