島薗進

 再生医療の技術がより発展し、また誰もが気軽に受けられるものになったとしたら、この技術は病気の治療を超えて用いられることもあるのではないでしょうか。歳をとって機能・能力が衰えてきたら、その部分「だけ」を取り替える、というように。 …
このような状況に加えて、人間の“遺伝子”のレベルにまで到達して治療を施すような医療、というものも見えてきます。いわゆる「遺伝子工学」と呼ばれる技術を医療の現場に応用するものです。 … もし、今は限定的になされている人間の遺伝子治療がより広範囲に拡大していったとすれば、これまでの人間がもっていなかったような特殊な性質や能力をもつ人間が誕生するかもしれない、ということは十分に考えられることです。 …
今まさに、私たちはこうした問題に直面しつつあり、それを真正面から考えていく必要が生じてきているのではないかと思います。そこで用いられるようになった言葉・概念が「エンハンスメント」です。エンハンスメントは、「より強い、より有能な、より幸せな」人間を求める科学技術と言えるでしょう。

One thought on “島薗進

  1. shinichi Post author

    いのちを“つくって”もいいですか?
    生命科学のジレンマを考える哲学講義
    by 島薗進
    (2016)

    p.34-p.37

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