矢野康治

数十兆円もの大規模な経済対策が謳われ、一方では、財政収支黒字化の凍結が訴えられ、さらには消費税率の引き下げまでが提案されている。まるで国庫には、無尽蔵にお金があるかのような話ばかりが聞こえてきます。
今の日本の状況を喩えれば、タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなものです。氷山(債務)はすでに巨大なのに、この山をさらに大きくしながら航海を続けているのです。タイタニック号は衝突直前まで氷山の存在に気づきませんでしたが、日本は債務の山の存在にはずいぶん前から気づいています。ただ、霧に包まれているせいで、いつ目の前に現れるかがわからない。そのため衝突を回避しようとする緊張感が緩んでいるのです。

4 thoughts on “矢野康治

  1. shinichi Post author

    「このままでは国家財政は破綻する」矢野康治財務事務次官が“バラマキ政策”を徹底批判

    「文藝春秋」編集部

    https://bunshun.jp/articles/-/49082

    「最近のバラマキ合戦のような政策論を聞いていて、やむにやまれぬ大和魂か、もうじっと黙っているわけにはいかない、ここで言うべきことを言わねば卑怯でさえあると思います。

     数十兆円もの大規模な経済対策が謳われ、一方では、財政収支黒字化の凍結が訴えられ、さらには消費税率の引き下げまでが提案されている。まるで国庫には、無尽蔵にお金があるかのような話ばかりが聞こえてきます」

     そう語るのは財務省事務方トップの矢野康治事務次官(58)。10月末の総選挙に向けて与野党ともにバラマキ合戦のような経済政策をアピールするなか、財源も不確かな財政楽観論を諫めようと、「文藝春秋」11月号に論文を寄稿した。財務事務次官と言えば、霞が関の最高ポストのひとつ。在任中に寄稿するのは異例のことだ。

    「今の日本の状況を喩えれば、タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなものです。氷山(債務)はすでに巨大なのに、この山をさらに大きくしながら航海を続けているのです。タイタニック号は衝突直前まで氷山の存在に気づきませんでしたが、日本は債務の山の存在にはずいぶん前から気づいています。ただ、霧に包まれているせいで、いつ目の前に現れるかがわからない。そのため衝突を回避しようとする緊張感が緩んでいるのです」

     10月末には総選挙も予定されており、各政党は、まるで古代ローマ時代の「パンとサーカス」かのように大盤振る舞いを競う。だが、日本の財政赤字はバブル崩壊後、悪化の一途をたどり、「一般政府債務残高/GDP」は256.2%と、第二次大戦直後の状態を超えて過去最悪。他のどの先進国よりも劣悪な状態にある(ちなみにドイツは68.9%、英国は103.7%、米国は127.1%)。

    「心あるモノ言う犬」としてお話したい

    「私は、国家公務員は『心あるモノ言う犬』であらねばと思っています。昨年、脱炭素技術の研究・開発基金を1兆円から2兆円にせよという菅前首相に対して、私が『2兆円にするにしても、赤字国債によってではなく、地球温暖化対策税を充てるべき』と食い下がろうとしたところ、厳しくお叱りを受け一蹴されたと新聞に書かれたことがありました。あれは実際に起きた事実ですが、どんなに小さなことでも、違うとか、よりよい方途があると思う話は相手が政治家の先生でも、役所の上司であっても、はっきり言うようにしてきました。

    『不偏不党』――これは、全ての国家公務員が就職する際に、宣誓書に書かせられる言葉です。財務省も霞が関全体も、そうした有意な忠犬の集まりでなければなりません」

     矢野氏の告発の背景には、これまで財務省が政治家との関係を重視するあまり、言うべきことを言って来なかったという反省もある。

    「もちろん、財務省が常に果敢にモノを言ってきたかというと反省すべき点もあります。やはり政治家の前では嫌われたくない、嫌われる訳にはいかないという気持ちがあったのは事実です。政権とは関係を壊せないために言うべきことを言わず、苦杯をなめることがままあったのも事実だと思います。

     財務省は、公文書改ざん問題を起こした役所でもあります。世にも恥ずべき不祥事まで巻き起こして、『どの口が言う』とお叱りを受けるかもしれません。私自身、調査に当たった責任者であり、あの恥辱を忘れたことはありません。猛省の上にも猛省を重ね、常に謙虚に、自己検証しつつ、その上で『勇気をもって意見具申』せねばならない。それを怠り、ためらうのは保身であり、己が傷つくのが嫌だからであり、私心が公を思う心に優ってしまっているからだと思います。私たち公僕は一切の偏りを排して、日本のために真にどうあるべきかを考えて任に当たらねばなりません」

    “破滅的な衝突”を避けるためには……

    「昨今のバラマキ的な政策論議は、実現可能性、有効性、弊害といった観点から、かなり深刻な問題をはらんだものが多くなっています。それでも財務省はこれまで声を張り上げて理解を得る努力を十分にして来たとは言えません。そのことが一連のバラマキ合戦を助長している面もあるのではないかと思います。

     先ほどのタイタニック号の喩えでいえば、衝突するまでの距離はわからないけれど、日本が氷山に向かって突進していることだけは確かなのです。この破滅的な衝突を避けるには、『不都合な真実』もきちんと直視し、先送りすることなく、最も賢明なやり方で対処していかねばなりません。そうしなければ、将来必ず、財政が破綻するか、大きな負担が国民にのしかかってきます」

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  2. shinichi Post author

    世良公則 矢野事務次官の “財政破綻発言” を批判「彼らの理論では『放置』か『大増税』の二択」

    東スポWeb

    https://news.yahoo.co.jp/articles/497ab80ba99bfdc69a314a3113604d016cb9f622

     ロックシンガーの世良公則(65)が18日、ツイッターを更新。財務省・矢野康治事務次官が月刊誌に投稿した「財政破綻論」に言及した。矢野氏は投稿した記事の中で与野党のバラまき政策を批判し「このままでは財政は破たんする」と指摘した。

     世良は元総務官僚で政策コンサルタントの室伏謙一氏の動画を貼り付け「財務省矢野財務事務次官の『財政破綻発言』が真実で無い事が室伏謙一氏の動画解説 スッキリと明確に解る」と指摘。

     また、ワイドショーなどで矢野氏の記事を引用しながら「国民の借金が増える」と言った類の報道がされていることに「連日矢野氏に賛同しコメンテーターが『借金大国日本・財政破綻』を強調し結果、衆院選で『積極財政』を掲げる与野党の政策を否定 彼らの理論では『放置』か『大増税』の二択 衰退は加速」と訴えた。

     世良が引用した室伏氏の動画では「自国通貨建ての国債のデフォルトはありえない」「ウソがバレてしまった断末魔の叫び声のよう」と矢野氏を批判している。

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  3. shinichi Post author

    矢野財務次官は間違ったことを言ったのか?〜公務員はロボットではない

    政治主導の限界と傷つく霞が関の能力

    山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

    https://webronza.asahi.com/business/articles/2021101400001.html

     矢野康治財務次官の文芸春秋への寄稿が問題となっている。自民党総裁選や衆院選をめぐる政策提案について「ばらまき合戦のようだ」と批判した。また、財政の現状を「タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなものだ」と例え、数十兆円規模の経済対策や消費税率引下げが主張されることについて「国庫には、無尽蔵にお金があるかのような話ばかりが聞こえてくる」と指摘した。

     これに対して、政治家サイドから強い批判が行われている。高市早苗自民党政調会長は「基礎的財政収支にこだわり、困っている人を助けないのはばかげた話だ」と反論した。さらに、同会長は「小ばかにしたような話だ。次官室から見える景色と私たち(国会議員)が歩いて聞いてくる声とは全然違う」とも述べている。矢野氏の更迭を主張している自民党幹部もいるという。18歳未満の国民全てに10万円を支給すべきと提案している山口那津男公明党代表は「政治は国民の声を受け止めて合意をつくる立場にある」と批判している。

     矢野氏が危惧した通り、自民党の政権公約から、二年前まであった財政再建の実行という文言は消されている。野党は全て、消費税の5%への引き下げを提案している。どの党も、国家財政など心配していないようだ。これに対し、アメリカの連邦議会には、財政赤字について厳しい目を向ける政党や議員たちが存在する。

    矢野財務次官は間違ったことを言ったのか?

     矢野氏は個人的な見解を述べただけだと言う。財政赤字についてはさまざまな意見があることは承知しているが、私も個人的見解として、氏の心配を共有する。

     日本の債務残高(財政赤字)は1200兆円を超え、GDPの2.6倍強となっている。これは、各国のGDP比で、アメリカの1.3倍、ドイツの0.7倍に比べて、異常に高い。アメリカでさえ、国民の10人に6人は、財政赤字は「将来世代に対する不公正な遺産”unfair legacy to the future generations”」と思っている(10月7日アメリカPBS放送)。政治家の皆さんは国民の声を聞いていると言うが、このまま財政赤字を放置することが、国民の声とは思えない。

     困っている人を救済するのは、政治の役割だ。本当に困っている人になら、10万円どころか100万円だって払ってよい。所得が2千万円ある北海道の酪農家に、毎年6百万円以上が交付されていることを考えると、安すぎるくらいだ。これは「ばらまき」ではない。「ばらまき」と批判されるのは、一律に交付するので、困っていない人にも交付されるからだ。払っても多くは貯金に回るだけで、消費には回らず、経済の浮揚効果もないだろう。

     それでも、本当に必要な金を積み上げていくらになるという提案ならまだわかる。しかし、何が必要かも議論しないで、初めから“数十兆円規模”の対策が必要だというのは、それこそ国民を愚弄していないか?

     「ただのランチ」というものはない。財政赤字(国債による借金)によって過大に消費しているのが現状だ。もちろん、国債が将来のGDPにつながるような社会資本形成に貢献するもの(建設国債)であれば、否定すべきではない。しかし、今の国債の多くは単なる赤字国債である。

     この借金を解消するには、二つしか方法がない。将来世代が生産するGDPのかなりを自分たちで消費しないで、我々の借金を払ってくれることだ。もう一つは、激しいインフレ、金利の上昇が起きて、国債の価格が暴落し、国の借金がチャラになることだ。このとき負担するのは、現在国債を保有している人たち(多くは金融機関)だ。これには先例がある。戦前の国債はこれで帳消しにされた。我が家には、紙切れとなった国債がたくさん残されていた。しかし、今の国債保有状況でこのような事態が起きれば、大変な金融不安(恐慌)が生じる恐れがある。

    政治主導の限界

     財政赤字自体を議論するのが、この小論の目的ではない。議論したいのは、公務員は意見を言ってはいけないのかという点である。その前提として、まず“政治主導”について議論しよう。

     “政治主導”という言葉には、抗しがたく、否定できない響きがある。どの国でも、政策が国民による選挙によって選ばれるのではない公務員によって考案され実施されることに批判がある。ヨーロッパでも、選挙で選ばれない欧州員会の官僚によってEUの意思決定が行われることは、“民主主義の赤字”として批判されてきた。このため、近年では、かつてはほとんど権限を持たなかった欧州議会の発言力を高める改革が行われてきた。

     今回の矢野氏の寄稿に対しても、選挙の洗礼を受けていない公務員が政治家による政策決定に異を唱えるのはけしからんという感情があるようだ。矢野氏の寄稿を第二次世界大戦に突き進んだ軍部の行動に例えるような評論家の主張もあった。横暴な役人の暴走だと言いたいのだろう。

     しかし、選挙で選ばれた政治家が主張する個々の政策が、果たして国民の声を代弁しているのだろうか。

    。。。

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  4. shinichi Post author

    財務事務次官の寄稿/財政責任 軽視は許されぬ

    河北新報

    https://kahoku.news/articles/20211016khn000009.html

     財務省の矢野康治事務次官が、与野党の政策論争を「ばらまき合戦」と批判した月刊誌への寄稿について、経済界などから支持する声が上がっている。

     「大変失礼な言い方」(高市早苗・自民党政調会長)などと反発が広がり、一時は更迭論まで出たという与党内の反応とは、極めて対照的だ。

     与野党が大規模な経済対策を公約に掲げる中、このタイミングで最も言われたくないことを言われたせいかもしれない。

     国の借金がこれ以上膨れあがり、次世代に重い負担を残すことに不安を抱いている国民は少なくない。

     景気の良いスローガンを掲げながら、財源について語ろうとしない各党の姿勢にも、有権者は納得していないはずだ。財政の現実を見据えた議論を避けてはならない。

     文芸春秋11月号に掲載された矢野氏の寄稿は「ばらまき合戦はこれまで往々にして選挙のたびに繰り広げられてきた」と指摘。その上で深刻な財政赤字にもかかわらず、日本は他の先進国と異なり、コロナ対策の財源確保のために増税などの措置を講じていないことを紹介している。

     経済同友会の桜田謙悟代表幹事は12日の記者会見で「書いてあることは事実だ。100%賛成する」と評価。現職の事務方トップが与野党の政策論争を公然と批判するのは確かに異例だが、与党の一部に問題視する声があることには疑問を呈した。

     寄稿の内容は、これまで財務省が主張してきたことと全く変わらない。矢野氏は事前に麻生太郎財務相(当時)の了解も得ていたとされる。

     矢野氏の寄稿が大きく波紋を広げた背景には、財政問題に対する自民党内での考え方の違いがありそうだ。

     そもそも麻生氏は、高市氏が経済対策を優先するため、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標を「時限的に凍結する」と総裁選で主張したことに対し、強い不満を示していた。

     リーマンショック後の2009年には、75兆円の経済対策を打ち出すに当たり、首相(当時)として「大胆な財政出動を行うからには、財政責任を明確にしなければならない。子や孫に負担を先送りしてはならない」と演説した。現在に通じる正論と言っていいだろう。

     20年度に3度の補正予算を組んで積み上げた60兆円規模のコロナ対策費は、いまだにその効果の検証さえ行われていない。これでは効率的な施策の展開は期待しにくい。緩みきった財政規律は、国際社会の目にも奇異に映ることだろう。

     矢野氏は寄稿の中で「国民は本当にばらまきを求めているのか。日本人はそんなに愚かではない」と強調している。求められるのは経済再生への希望と同時に、将来世代への責任を語る政治である。

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