シュテファン・ツヴァイク

(ドストエフスキー、ペテルスブルク、セメノフ広場、1849年12月22日)
あの瞬間の彼自身が
千数百年の昔に十字架につけられた
あの彼であったこと、
そして彼自身もあの彼のように
死の熱い接吻を受けてからは
生を悩みのために愛さなければならないことが解った

兵士らが彼を柱から引きはなした
彼の顔はあおざめて
死人のようだった
つきとばされて
彼はふたたび列の中へ押しもどされた
彼の眼ざしは
異様であり まったく自分の心の底へむけられていた
そして彼のけいれんしてわななくくちびるには
カラマーゾフ的な黄いろい笑いがうかんでいた

2 thoughts on “シュテファン・ツヴァイク

  1. shinichi Post author

    Decisive Moments in History (Sternstunden der Menschheit)
    by Stefan Zweig

    or

    Three Masters: Balzac, Dickens, Dostoevsky (Drei Meister. Balzac – Dickens – Dostojewski)
    by Stefan Zweig

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