おにぎり (id:kyonbokkun)

突然の不幸が起きた時、私たちはただ運が悪かったと受け入れることができずに理由を探そうとします。
「コロナにかかった人は遊び歩いていたにちがいない」
「痴漢にあったのは短いスカートをはいていたせいだ」
不幸の原因を本人のせいにして責め立てることで、自分は安全な場所にいるのだと安心する心理。
不幸にあった人を吊るし上げて被害者を2度苦しめ追い詰める社会。
「死亡予告を受けた者は罪を犯している」という言説を信じ込んでしまう人々。心底それを正義だと信じて悪質な書き込みをするネット民、一度真実になってしまった嘘を否定することの難しさ。
インターネットでの個人の吊るし上げ、監視社会。。。

2 thoughts on “おにぎり (id:kyonbokkun)

  1. shinichi Post author

    韓国ドラマ「地獄が呼んでいる」感想 監視社会への強烈な風刺

    by おにぎり (id:kyonbokkun)

    https://kyonbokkun-onigiri.com/entry/jioku

    _______________

    作品情報

    原題 지옥(地獄)
    Netflix制作
    全6話
    2021.11.19配信開始

    演出・脚本
    演出:ヨン・サンホ『新感染 ファイナル・エクスプレス』
    脚本:チェ・ギュソク

    キャスト
    ユ・アイン / キム・ヒョンジュ / パク・ジョンミン / ヤン・イクジュン

    _______________

    あらすじ

    この世のものではない”何か”が突然現れ、人間たちを地獄へと突き落とす…。人々が恐怖におののく中、この現象を神の裁きだと主張する宗教団体が台頭し始める。

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    「他人は地獄だ」に引き続き、こちらの地獄にもお呼ばれしてきました~!!!(こんなノリで語るようなドラマではない)

    視聴してから1か月ほど経ってしまったので、記憶をたどりながらのレビューになりますが、よろしければお付き合いください。

    ※ふんわりしたネタバレになる内容です。

    ある日、どこからともなく地獄からの使者があらわれ、狙った者を壮絶なリンチの末に焼き殺すという怪奇現象が起こり始める。人々の恐怖と混乱に付け入るように「新真理会」を名乗る新興宗教が民心を集め、”矢じり”と呼ばれる妄信的な信者たちが暴徒化していく___

    Netflix制作、約50分×6話の短編ドラマ。
    「人間レッスン」「D.P.脱走兵追跡官」などメッセージ性の強い作品が多いのがNetflixオリジナル作品の特徴ですが、その中でも特に社会風刺の強い作品だと思います。

    出演はユ・アイン、キム・ヒョンジュ、パク・ジョンミンなど。
    菅田将暉とW主演の『あゝ、荒野』など日本映画にもたびたび出演し、日本での知名度が高いヤン・イクチュンが刑事役で出演しています。

    世界的に知名度のあるスター俳優はおらず一見地味なキャスティングですが、ユ・アインをはじめ独特の世界観のある個性的な俳優さんばかり。

    特に新興宗教「新真理会」の議長役を演じるユ・アインの得体の知れない不安感を感じさせる演技はユ・アインにしかできないアインワールド全開でした。

    「韓国語が聞き取りにくい俳優さん」の代表格ユ・アインさん(個人の主観)
    ”저 양아치 아닙니다 ”(私はチンピラではありません)の台詞が妙に耳に残って怖すぎる。素朴かつ不気味な教祖様がチンピラよりも恐ろしい。

    「地獄が呼んでいる」では、1部と2部でふたつの地獄が描かれています。

    1部では「突然あらわれた湯気の出るゴリラたち(地獄の使者)が人間を襲って壮絶なリンチを加えた末に焼き殺す」という地獄。超常現象(自然)の前では人間は非力で、なすすべなく受け入れるしかないという現実。

    (目を覆いたくなるようなむごくて残酷な描写があるので苦手な方は要注意です。個人的には、クるぞ!というタイミングがわかるので心構えをしておけば全然大丈夫でした)

    そして、もうひとつの地獄。
    一見ホラーものに見える今作ですが、監督が伝えたいメッセージはおそらくこちらの地獄に表現されているのではないかと思います。

    新興宗教「新真理会」が「死亡予告を受けた人は罪を犯したために地獄に行くのだ」という言説で信者を集め権威化していき、”矢じり”と呼ばれる盲目的な信者たちが死亡予告を受けた人をSNSや動画配信を使ってさらし者にする。
    矢じりたちはやがて暴徒化していき、ネットリンチのみならず現実世界でもリンチを繰り返すようになるというもの。

    どちらの地獄も「不特定多数からの攻撃」を思わせるものですが、後者の方はよりリアルで、現実での出来事を連想させます。

    突然の不幸が起きた時、私たちはただ運が悪かったと受け入れることができずに理由を探そうとします。

    「コロナにかかった人は遊び歩いていたにちがいない」

    「痴漢にあったのは短いスカートをはいていたせいだ」

    不幸の原因を本人のせいにして責め立てることで、自分は安全な場所にいるのだと安心する心理。

    不幸にあった人(地獄の使者に狙われた人)を大衆が吊るし上げて(矢じりや新真理会の攻撃)被害者を2度苦しめ追い詰める社会への痛烈な批判が込められています。

    「死亡予告を受けた者は罪を犯している」という新真理会の言説を信じ込んでしまう大衆、心底それを正義だと信じて悪質な書き込みをするネット民、一度真実になってしまった嘘を否定することの難しさなど。現代のインターネットでの個人の吊るし上げ、監視社会への風刺が効いています。

    大衆がカルトに飲み込まれていく描写は不気味で背筋が薄ら寒くなり、どこか浦沢直樹の20世紀少年を思い出させるものがありました。(20世紀少年よりはカルト臭少なめ、現実感強めです。)

    全体的な感想としては、社会風刺が前に出すぎていて、ドラマとしてのおもしろさが足りなかったなぁというのが正直なところ。

    テンポは良いのですが人物描写や感情描写が浅く、地獄の世界観にはいりこむ隙がありませんでした。
    新真理会が権威化していく過程や、新真理会に対抗する勢力の心の揺れ動きなどがもっと深く描かれてたら良かったのに。全6話というのはあまりにも短くて、せめてあと2話足してくれたら話に厚みが出たと思うなど。

    メッセージ性のあるドラマは大好きなのですが、あくまでもエンタメとしてのドラマのおもしろさが1番にある作品が好きです。

    まずエンタメとしておもしろさがあって感情が揺り動かされるものがあり、その上で制作側のメッセージが伝わればベスト。

    シーズン3くらいまで続く壮大な物語の序章としてなら完璧なプロローグだと思うので、ぜひシーズン2の制作よろしくお願いします!

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