移ろいゆく風景

すべてのものは移ろいゆき
すべてのことも移ろいゆく
変わらないものなど なにもなく
変わらないことなど ありはしない

移ろいゆく季節
移ろいゆく時間
移ろいゆく気持ち
移ろいゆく心

空から降る雪が雨に変わり
氷が溶けて水になる頃
春一番が吹き 霞たなびき
草木めばえいずる
梅咲き 桃咲き 桜咲く
牡丹咲き 紅花咲き 梅の実黄ばむ
菖蒲咲き 蓮の花咲き 桐の花咲く
綿の花咲き 菊の花咲き 楓も蔦も黄ばむ

自然のリフレインの繰り返しも
移ろいのなかにある
暗い夜の後には明るい夜明けが
寒い冬の後には暖かい春がやって来る

季節の移ろいは美しく
時間の移ろいも美しさのなかにあるというのに
気持ちの移ろいは空しく映り
心の移ろいは悲しい

移ろいに何の罪もない
それなのに私たちは感情移入し
美しいだの 空しいだの
哀しいだのと 感じる

君は移ろいを愛し 移ろいを憂う
それなのに 君も移ろいに身をまかせ
君自身も 移ろう
そして 僕も 移ろう

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