美術館

美術館のなかを歩く
絵が時代順に並んでいる

ロマネスクから ゴシックへ そしてルネサンスへ
マニエリスム バロック ロココ の時代の後
ネオクラシシズム ロマンティシズム アカデミズム リアリズム
という イズムの時代が続き
今でも人気の インプレッショニズム の時代に至る
そんな本のなかにあるアートの流れは
美術館では まったく感じられない

絵から感じるのは パトロンのちからだけ
それ以外は 何も感じることができない

教会や教会にすがる人がパトロンになれば
 宗教の起源に関する話が絵のなかに描かれ
権力者や金持ちがパトロンになれば
 本人や家族のポートレートが描かれる
そんな絵を見て 何を感じればいいのだろう

絵を見ることに疲れ 椅子に座る
目の前の絵には 輝く白い山が描かれている
絵が描かれたのは1802年
フランス革命の後の混乱にも ナポレオンの台頭にも
まったく関係のない白い山と
争いにまみれた麓の黒い景色

立ち上がり 絵の中を歩く
本に書いてあったことを思い出す

 ルネサンスが始まる頃になると
 商業の発展とともに
 国内取引では銀貨が
 貿易取引では金貨が利用されるようになる
 そして絵が 売買されるようになる

 ルネサンスが過ぎ去る頃には
 幾千もの貨幣鋳造所が作られ
 インプレッショニズムの頃には
 金銀貨が安定的に流通し 小額貨幣も大量に発行される
 すると 画商が現れ 画材店ができ 絵が身近になる

インプレッショニズム以降の絵には
それまでの絵のような遠さがない
そのかわり 絵に値段が付き
値段の高い絵ほど珍重されるようになる

有名な絵の前には人だかりがしていて
無名な絵の前には誰もいない

美術館という不思議な空間を歩き回ったら
感じたことのない疲れを覚えた
美術館から出たら まるで
クラシック音楽のコンサートから出てきたような気がした
外の空気は心地よかった
隣の君は笑っていた
僕も笑った

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