古い家

路地の奥に入っていったところにある
表通りの喧騒から隔離された
緑の多い古い家を訪ねた
やたら階段が多い
はじめに通された部屋は
短い石の階段を上って入る
隣の部屋に移るにも階段がある
中庭に出る時も階段を上る
美術品を保管してある別棟に入るには
すり減った階段を降りて行かねばならず
別棟の中で上の階に移動するには
鉄製の螺旋階段を上がらなければならない
扉はどれも重い
鍵をかけたらビクとも動くまい

薔薇に囲まれた階段を上って 母屋に入る
中は思いのほか明るい
2階に上がる階段は急だ
太いロープは つかまるには心もとなく
手すりは 触ってくれるなと言っている
どれだけの人が ここを上り
この軋む音を 聞いたのだろう

やっとのことで中庭に出る
小石が敷かれた一角に
鉄製の椅子が置かれている
座って 改めて家を眺める
何をしに ここに来たのだろう
君が僕を ここに連れて来たのか
僕が君を ここに連れて来たのか
僕たちは ほんとうに この家に入ったのか

空を見上げる
雲行きが怪しい
僕たちは足早に家を出た
表通りの雑踏が 気持ちよかった

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