トリクルダウン経済学(Trickle-down economics)

在位70年に及んだエリザベス女王死去の喪が明けた英国を待ち受けていたのは、財源なしで大規模な恒久減税を強行するトラス氏の経済政策「トラスノミクス」に対する市場の厳しい洗礼だった。高騰するエネルギー費対策として1500億ポンド(約23兆2900億円)、500億ポンド(約7兆7600億円)の恒久減税に市場は一斉にポンド売りに走った。
トラスノミクスは1980年代にロナルド・レーガン米大統領やマーガレット・サッチャー英首相が提唱したトリクルダウン(滴り落ちる)経済学による。政府は富裕層や企業に対し減税を行って成長を促す。税率が低ければ銀行は融資を増やし、起業や投資が拡大する。経済のパイが大きくなれば、富裕層や企業が受ける恩恵が労働者にも行き渡るという理論だ。
国際通貨基金(IMF)は「貧困層と中間層の所得シェアを増やすと成長率が高まる。上位20%の所得シェアを増やすと逆に成長率が低下する。金持ちがさらに金持ちになると、その恩恵は全体に行き渡らない」とトリクルダウン経済学を否定している。ジョー・バイデン米大統領も「トリクルダウン経済学にはうんざり。それは全く機能しない」とツイートした。

4 thoughts on “トリクルダウン経済学(Trickle-down economics)

  1. shinichi Post author

    早くも破綻したトラス英首相の「富裕層のための減税」政策は、日本経済の近未来像か

    木村正人

    https://www.newsweekjapan.jp/kimura/2022/09/post-184.php

    <野党・労働党は「政府は経済のコントロールを失い、ポンドを暴落させた」と痛烈批判。「トリクルダウン」経済学はやはり機能しない?>

    [英イングランド北西部リバプール発]リズ・トラス英首相の大規模減税で通貨ポンドが歴史的な水準まで暴落する中、最大野党・労働党のキーア・スターマー党首は27日、リバプールで開かれている年次党大会で演説し、「金利やインフレ率は上昇し、借金は増加する。政府は英国経済のコントロールを失い、ポンドを暴落させた」と批判した。

    在位70年に及んだエリザベス女王死去の喪が明けた英国を待ち受けていたのは、財源なしで大規模な恒久減税を強行するトラス氏の経済政策「トラスノミクス」に対する市場の厳しい洗礼だった。高騰するエネルギー費対策として1500億ポンド(約23兆2900億円)、500億ポンド(約7兆7600億円)の恒久減税に市場は一斉にポンド売りに走った。

    トラスノミクスは1980年代にロナルド・レーガン米大統領やマーガレット・サッチャー英首相が提唱したトリクルダウン(滴り落ちる)経済学による。政府は富裕層や企業に対し減税を行って成長を促す。税率が低ければ銀行は融資を増やし、起業や投資が拡大する。経済のパイが大きくなれば、富裕層や企業が受ける恩恵が労働者にも行き渡るという理論だ。

    国際通貨基金(IMF)は「貧困層と中間層の所得シェアを増やすと成長率が高まる。上位20%の所得シェアを増やすと逆に成長率が低下する。金持ちがさらに金持ちになると、その恩恵は全体に行き渡らない」とトリクルダウン経済学を否定している。ジョー・バイデン米大統領も「トリクルダウン経済学にはうんざり。それは全く機能しない」とツイートした。

    一生懸命働いても家族に安心感すら与えられない

    トラス氏が富裕層減税を正当化するために持ち出した「トリクルダウン」にバイデン氏(米民主党)が反応したのは、不倶戴天の敵ドナルド・トランプ前米大統領(米共和党)がトリクルダウン経済学の信奉者だからだ。再選を占う中間選挙が近づいているだけに、いくら特別関係にある同盟国、英国の首相トラス氏の発言でも看過できないというわけだ。

    一方、スターマー氏は党首演説で「(ポンド暴落は)何のために。あなたのためでも、労働者のためでもない。1%の富裕層に対する減税のためだ」と指弾した。「かつて保守党は太陽が照っている時に屋根を修理せよと説いた。しかし今の保守党政権は屋根の修理に失敗しただけではない。土台や窓を壊し、今度はドアを吹き飛ばしている」

    「トリクルダウン経済学は上手く行かない。金持ちをより金持ちにしても英国が良くなるわけではない。本当の問題は低賃金で不安定な仕事をあまりにも多く作りすぎていることだ」

    「価格上昇で莫大な利益を得ているエネルギー大手BPのトップは、エネルギー危機では同社は『キャッシュマシン』になると言ったが、そのお金は労働者から吸い上げられている。私は安普請の住宅で育った。だからインフレの感覚はよく覚えている。請求書が払えずに電話が切られた。生活費を稼ぐのがいかに大変だったか、簡単なことではなかった」

    「しかし『一生懸命働けば何でも達成できる、英国で公平な機会を得ることができる』という不文律があった。今は一生懸命に働いても、家族に安心感を与えることすらできない。子供たちが自分たちより良い人生を送れないことを心配している家族の姿は英国という国の現実を物語っている」とスターマー氏は言う。

    公有の再生エネルギー会社を設立

    スターマー氏は「2030年までに100%クリーンな電力を供給する」と宣言した。「陸上風力発電を2倍に、太陽光発電を3倍に、洋上風力を4倍にし、潮力、水素、原子力に投資する。100万人以上の新規雇用を創出できる」。公的資金で再生可能エネルギー会社「グレート・ブリティッシュ・エナジー」を設立し、公有化する。利益は再投資に回される。

    「クリーンな電力の機会を活用する新会社だ。雇用や成長を生み出し、ウラジーミル・プーチン露大統領のような暴君へのエネルギー依存を解消する」と力を込めた。フランスで完全に国有化され、英国で1万人以上の雇用を生み出す仏電力会社EDFがモデルだという。脱炭素経済への移行で、より公正で公平な社会を目指す。

    スターマー氏を支えるレイチェル・リーブズ影の財務相も26日「私たちは国家緊急事態に直面している。エネルギー価格は上昇し、食料の値段も上がっている。賃金はそれに追いつかない。富裕層減税、バンカーのボーナス引き上げで毎年500億ポンド以上の国債が積み上げられる。すべてのコストを借金に転嫁する無謀な決断のせいだ」とトラス氏を攻撃する。

    すでにインフレが進み、金利が上昇する中、トラス政権は1972年以降どの予算よりも多くの借金を一挙に積み上げたとリーブズ氏は指摘する。「市場からのメッセージは明確だ。輸入コストが上昇し、物価が上昇する。政府の借入れコストは上昇し、国債の利子を支払うために多くの税金が使われる」と懸念を示す。

    「カジノで負けが込むギャンブラー」

    「高い不平等は働く人々の購買力を削ぎ、社会的コストを公共サービスに押し付ける。富は上から下へ流れていくものではない。下から上へ、そして中から外へ流れていくものなのだ。保守党政権はカジノで負けが込んでいるギャンブラーのようだ。しかし、彼らは自分たちのお金を賭けるのではなく、あなたのお金を賭けている」(リーブズ氏)

    トラスノミクスと、27日国葬が行われた安倍晋三元首相の経済政策アベノミクスの違いは中央銀行(日銀)の異次元の量的緩和が伴っているかどうかだ。現代貨幣理論(MMT)の成功モデルとされるアベノミクスについてどう思うか、筆者はミニ集会でリーブズ氏を直撃した。リーブズ氏はこう答えた。

    「私がイングランド銀行(英中央銀行)にいた時の最初の仕事は日本担当エコノミストだった。2000年のことで当時、日本はゼロ金利で、量的緩和を追求し始めていた。英国が10年後に経験したのと似たような問題が起きていた。現在の英国経済が独特なのは金融政策と財政政策が全く逆方向に動いていることだ」

    「500億ポンドの景気刺激策は裕福な人たちを不釣り合いに助けるものだ。インフレ目標を掲げるイングランド銀行の金利引き上げは住宅ローンだけでなくクレジットカードなどの負債を抱えている人々に不釣り合いな打撃を与える。つまり逆行する財政刺激と金融引き締めが同時に起きている。これは災いのもとだ」

    「イングランド銀行は必要があれば行動を起こすと発言したが、率直に言って政府が行ったことのために反応せざるを得なかったのだ。私たちは責任ある経済政策を追求する政府を必要としているが、今の私たちにはそれがない」とリーブズ氏は言った。世界中がインフレに見舞われる中、日本もアベノミクスに終止符を打つべき時が来ている。

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  2. shinichi Post author

    Trickle-down economics

    https://en.wikipedia.org/wiki/Trickle-down_economics

    Trickle-down economics is a term used in critical references to economic policies that favor the upper income brackets, corporations, and individuals with substantial wealth or capital. In recent history, the term has been used by critics of supply-side economics. Whereas general supply-side theory favours lowering taxes overall, trickle-down theory more specifically advocates for a lower tax burden on the upper end of the economic spectrum.

    Major examples of US Republicans supporting what critics call “trickle-down economics” include the Reagan tax cuts, the Bush tax cuts and the Tax Cuts and Jobs Act of 2017. In each of the aforementioned tax reforms, taxes were cut across all income brackets, but the biggest reductions were given to the highest income earners, although the Reagan Era tax reforms also introduced the earned income tax credit which has received bipartisan praise for poverty reduction and is largely why the bottom half of workers pay no federal income tax. Similarly, the Tax Cuts and Jobs Act of 2017 cut taxes across all income brackets, but especially favored the wealthy.

    The term “trickle-down” originated as a joke by humorist Will Rogers and today is often used to criticize economic policies that favor the wealthy or privileged while being framed as good for the average citizen. David Stockman, Ronald Reagan’s former budget director, championed Reagan’s tax cuts at first, but later became critical of them and told journalist William Greider that “supply-side economics” is the trickle-down idea:

    It’s kind of hard to sell ‘trickle down,’ so the supply-side formula was the only way to get a tax policy that was really ‘trickle down.’ Supply-side is ‘trickle-down’ theory.
    — David Stockman, The Atlantic

    Political opponents of the Reagan administration soon seized on this language in an effort to brand the administration as caring only about the wealthy. Some studies suggest a link between trickle-down economics and reduced growth, and some newspapers concluded that trickle-down economics does not promote jobs or growth, and that “policy makers shouldn’t worry that raising taxes on the rich […] will harm their economies”.

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  3. shinichi Post author

    トリクルダウン理論

    https://ja.wikipedia.org/wiki/トリクルダウン理論

    トリクルダウン理論(トリクルダウンりろん、英: trickle-down effect)とは、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富がこぼれ落ち、経済全体が良くなる」とする経済理論である。18世紀の初頭に英国の精神科医であるマンデヴィルによって初めてこのような考え方が示され、その後の古典派経済学に影響を与えた。均霑理論(きんてんりろん)とも訳される。

    2014年現在では、提唱された当時とは時代的背景が大きく異なることもあり、否定的な意見が多い。

    「トリクルダウン (trickle down) 」は英語で「徐々にあふれ落ちる」を意味し、大企業や富裕層の支援政策を行うことが経済活動を活性化させることになり、富が低所得層に向かって徐々に流れ落ち、国民全体の利益となる」とする仮説である。「トリクルダウン」という名称は、ウィル・ロジャースの発言に由来するとされる。

    新自由主義の理論によれば、ジニ係数が上昇したとしても、自由競争と国際貿易によって、貧困層も含む全体の所得が底上げされると考えられていた。

    OECD(経済協力開発機構)は、2014年12月に貧富の格差と経済成長に関する実証研究を発表した。

    OECDの実証研究によれば、貧富の格差が拡大すると経済成長を大幅に抑制することが示されている。所得格差は経済成長を損ない、所得格差を是正すれば経済成長は活性化されるとして、トリクルダウン効果を否定している。とりわけ教育や医療などの公共サービスを充実させるよう提言している。

    OECDの実証研究では、以下のことが結論づけられている。以下にその結論を引用する。

    • 富裕層と貧困層の格差は今や大半のOECD諸国において、過去30年間で最も大きくなっている。このような所得格差の趨勢的な拡大は、経済成長を大幅に抑制している。
    • 上位10%の富裕層の所得が、下位10%の貧困層の所得の9.5倍に達している。所得格差の全般的な拡大は、他の所得層を大きく引き離している1%の超富裕層によって牽引されているが、成長にとって最も重要なのは、置き去りにされている低所得の世帯である。
    • また、所得格差による経済成長に対するマイナスの影響は、貧困層ばかりでなく、実際には下位40%の所得層においても見られる。
    • 租税政策や移転政策による所得格差への取り組みは、適切な政策設計の下で実施される限り、経済成長を阻害しない。
    • 所得再分配の取り組みについては、特に人的資本投資に関する主要な決定がなされる対象である子供のいる世帯や若年層を重視するとともに、生涯にわたる技能開発や学習を促進すべきである。これは、とりわけ社会的背景の貧しい人々は、教育に十分な投資をしないためである。

    経済学者のジョセフ・E・スティグリッツは、トリクルダウン効果により、経済成長の利益は自動的に社会の隅々まで行き渡るという前提は、経済理論・歴史経験に反している、と指摘している。

    政治経済学者のロバート・B・ライシュは、一部の富裕層が消費するより、分厚い中間層が消費するほうが消費規模は拡大する、と主張している。

    経済学者の野口旭は「日本銀行が唱える『ダム論』はある程度までは妥当性があると考えられる。しかし、現在(2001年)の日本では、企業がどんどん賃金を下げ、労働者を解雇・リストラを進めていることによって企業の収益が改善したとも考えられる。企業収益の改善が、名目賃金の改善に結びつくとは必ずしもいえない。名目賃金が下がっていけば、将来不安が起きる。これでは、企業の収益が拡大しても、個人消費につながらない」と指摘している。

    ミクロレベルの議論としては、経済学者の田中秀臣、安達誠司は「アメリカ型の成果主義がもてはやされる理由は、一部のエリート・サラリーマンが業績を伸ばすことによって、組織全体がその成果の果実を享受できるという『したたり効果(trickle-down)』の考え方が前提にある。しかし、このような『したたり効果』は、組織メンバーのモラル低下を生み出す可能性もある」と指摘している。

    経済学者の神野直彦は自著において、トリクルダウン理論が有効となるには「富はいずれ使用するために所有される」、「富を使用することによって充足される欲求には限界がある」という二つの前提が成立しなければならないが、現代では富は権力を得る目的で所有されているので理論は有効ではない、と指摘している。

    2015年5月に発行された国際通貨基金 (IMF) の文書では「貧困層と中流階級の所得シェアを増やすと成長率は上昇し、上位20%の所得シェアが伸びるにつれて成長率が低下する」としている。

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  4. shinichi Post author

    アベノミクス「富の滴」は低中所得層に届かなかった、データで徹底検証
    by 西井泰之
    https://diamond.jp/articles/-/250276

    アベノミクスとは何だったのか 正体つかめぬ政策、その本質は
    by 原真人
    https://webronza.asahi.com/journalism/articles/2022080300003.html

    ドル円が乱高下、一時152円接近も146円台に反転-当局介入と報道
    by Masaki Kondo、Ye Xie
    https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-10-21/RK43LCT1UM0Y01

    安倍政権発足時(2012年12月26日)のドル円の為替レートは1ドル=85円36銭(午後5時時点)、それが10年後の今(2012年10月21日)は、1ドル=151円94銭を付けるまでになった。

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