京都に咲く一輪の薔薇(ミュリエル・バルベリ)3

奥州が啓蒙の時代にあった頃、まだ封建時代にあった日本に小林一茶という名の俳人がおりました。大変な苦労人であった彼は、ある日、京都の禅寺、詩仙堂に立ち寄りました。彼はここで座敷に腰を下ろし、長い間庭を眺めていたといいます。見習い僧が庭に真円を描き、円のうちにある砂の繊細さ、石の美しさを自慢げに語りまりた。一茶は無言のままでした。若い僧はさらに石庭の深遠な意味について熱弁をふるいました。それでも一茶は黙っています。若い僧はその沈黙をいぶかりながらも、円の完璧さについて力説しました。すると一茶は、砂と石の向こうにある見事なツツジを手で示し、若い僧に言いました。「円の外に出てごらんなさい。ほら、そこの花が見えるようになりますよ」

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