既得権益(宮台真司)

自決前の三島由紀夫は「日本はからっぽ」と書いた。日本では一夜にして天皇主義者が民主主義者に豹変する。価値を貫く構えがなく、上と横を見てポジション取りをする。丸山眞男も同じことを言っており、近代という物差しから見た「日本人の劣等性」だと見ている。日本人は縄文の昔から「和を以て貴しとなす」で、自らを貫徹して闘うことより集団の調和を重んじてきた。そして江戸時代には移動が禁止され、人々は周りにいる人と一緒に一生を過ごすようになった。かくて御上に媚びる「ヒラメ」や、周囲を見て浮かないようにする「キョロメ」のメンタリティが強化された。山岸俊男の調査で、「日本人は所属集団でのポジション争いに執念し、すべての集団を包含するプラットフォーム(公)には貢献しない」ことが分かっている。「公(パブリック)」は自力で市民社会を建設した欧米の概念で、日本には存在しない。ヒラメやキョロメが大切にするのは「公」ではなく、自分自身の安寧だ。この「日本人の劣等性」が日本衰退の原因なのだ。
劣等性を抱える日本人は、「既得権益」を動かすことができない。本来は時代とともに生産性の高い分野に資本(人・物・カネ)を移動させることで経済は発展するが、日本では既得権益を温存する力が強すぎて産業構造の変化が起きない。政府は法人減税分を消費増税で埋め合わせ、正社員を守るために非正規雇用を増やしている。公共事業でも「電通・パソナ図式」と言われる中抜き構造が強固で、大ボス企業に役人が天下り、その役人が政策を立てる。さらに野党も先進国では標準的な「正社員・非正社員の区別廃止」と「労働力の公正な移行措置(所得保障と職業訓練)」を提唱せず、労働組合の既得権益を温存する。その構造を支えているのは国民自身なのだ。

5 thoughts on “既得権益(宮台真司)

  1. shinichi Post author

    既得権益を温存し衰退する日本…社会学者・宮台真司「愚かな総理を生み出したのは、からっぽの民衆だ」

    週刊現代

    自信なさげにボソボソ喋るメガネの男、キシダに国を任せていて大丈夫なのか? 世界は、日本の総理に厳しい目を向けている。いったいどうすれば日本は復活できるのか、国内外の7人の「知の巨人」に聞いた。6人目は社会学者・宮台真司氏だ。 

    https://gendai.media/articles/-/101911

                                

    三島由紀夫と丸山真男の日本人批判

    政治家が民衆から選ばれるものである以上、民衆の質が上がらない限り立派な総理大臣は出てきません。誰が総理になっても金太郎飴のように愚かな総理が誕生します。

    ’70年、自決前の三島由紀夫は「日本はからっぽ」と書きました。日本では一夜にして天皇主義者が民主主義者に豹変する。価値を貫く構えがなく、上と横を見てポジション取りをする。

    ’50年代から政治学者の丸山眞男も同じことを言っており、近代という物差しから見た「日本人の劣等性」だと見ています。

    日本人は縄文の昔から「和を以て貴しとなす」で、自らを貫徹して闘うことより集団の調和を重んじました。そして江戸時代には移動が禁止され、人々は周りにいる人と一緒に一生を過ごすようになった。

    かくて御上に媚びる「ヒラメ」や、周囲を見て浮かないようにする「キョロメ」のメンタリティが強化されました。

    世界的に知られた社会心理学者・山岸俊男氏の調査で、「日本人は所属集団でのポジション争いに執念し、すべての集団を包含するプラットフォーム(公)には貢献しない」ことが分かっています。

    「公(パブリック)」は自力で市民社会を建設した欧米の概念で、日本には存在しない。ヒラメやキョロメが大切にするのは「公」ではなく、自分自身の安寧です。この「日本人の劣等性」が日本衰退の原因なのです。

    「電通・パソナ図式」が横行

    劣等性を抱える日本人は、「既得権益」を動かすことができません。本来は時代とともに生産性の高い分野に資本(人・物・カネ)を移動させることで経済は発展しますが、日本では既得権益を温存する力が強すぎて産業構造の変化が起きません。

    政府は法人減税分を消費増税で埋め合わせ、正社員を守るために非正規雇用を増やしています。公共事業でも「電通・パソナ図式」と言われる中抜き構造が強固で、大ボス企業に役人が天下り、その役人が政策を立てます。

    さらに野党も先進国では標準的な「正社員・非正社員の区別廃止」と「労働力の公正な移行措置(所得保障と職業訓練)」を提唱せず、労働組合の既得権益を温存する。その構造を支えているのは国民自身なのです。

    私たちはどうすればいいのか。「個人的自力救済」と「共同体的自力救済」がありますが、前者は無差別殺傷に向かいかねないため、残された道は後者しかない。

    民主政を小規模化し、共同体自治に基づいて自立的経済圏を回していくのです。参考になる事例としては、スペインの「ミュニシパリズム」(共同体自治主義)があります。

    これは「この決定で自分はいいが、あの人やこの人はどうなるだろうと想像できて気にかけることが民主政の条件だ」とするルソー主義に基づくものです。バルセロナではこの運動が実を結び’15年に地域政党が勝利、既得権益と闘いながら市立保育園や公営のDV被害者救済サービスが設置されました。

    「岸田のせいだ」と言うのは簡単です。でも、任せた政治家のせいにするだけでは何も変わらない。政治を自らの問題として引き受け、自分たちで政治を回す構えが必須です。

    Reply
  2. shinichi Post author

    既得権益

    ウィキペディア

    https://ja.wikipedia.org/wiki/既得権益

    時流にそぐわなくなった特権としてその社会的集団を非難するときによく使用される。

    社会的集団が利己的に活動すると、存続している限り、それだけ勢力も拡大していくはずなので、大抵何らかの既得権益を保持するようになる。

    既得権益を成立させている要因は、その集団の持つ総資本量であったり、コネであったり、互恵状態になれる集団同士の寡占的な協力関係であったり、その集団の構成員の多さであったり、暴力的な脅迫であったりと多様である。

    社会の中で富(資本)は、集団や個人の実力や正確な評価に対して適切に分配されなければならないが、1度既得権益が生まれると、既得権益そのものが更なる富を獲得する力となるため、既得権益の有無や大小だけで富の分配が大きくなされてしまい、結果として実力や正確な評価に対する富の分配が行われなくなる。

    既得権益によって獲得された資本そのものが、更なる資本を得るための力を持ち、資本余裕ができるとリスクも取りやすくなるため、既得権益はより一層強靭化する。

    このような既得権益をもつこと自体によって得られる富の獲得は、社会の中の非合理的な資本分配であり、実力や正確な評価が報われないために社会に歪みや無気力が発生する。

    格差は適切に発生するのは問題ないが、あくまで実力や正確な評価に比例してなされるべきものであり、既得権益によって保護された力で分配されるべきではない。現在では既得権益が拡大し強固になる一方で、非合理的な格差も拡大している。

    Reply
  3. shinichi Post author

    私たちはどこから来て、どこへ行くのか

    by 宮台真司

    進む社会の分断。台頭する排外主義とポピュリズム。基本的人権・民主主義という我々の拠って立つ価値が足元から揺らぐ今、不安と絶望を乗り越えて社会を再構築する一歩は、「私たちはどこから来たのか」を知ることから始まる。

    Reply
  4. shinichi Post author

    私たちはどこから来て、どこへ行くのか 宮台真司著

    サブカルで解く「生活」の空洞化

    by 橋爪大三郎

    https://www.nikkei.com/article/DGXDZO68700050S4A320C1MZC001/

    いま社会がおかしい。産業空洞化。デフレと格差。三万人の自殺者。動機不明の犯罪。ヘイトスピーチ。官僚支配と政治の無力。膨らむ国の借金。……そう感じるあなたは、本書を読みなさい。歯ごたえがあるがよく噛めば、ああそうか、と腑に落ちるはずだ。

    著者・宮台氏はシステム論を武器に、理論家として現代社会と格闘し、サブカルチャーも継続して研究してきた。《宮台社会学35年分のエッセンス!!》(帯)が濃縮して盛り込まれている。

    著者は戦後を、〈秩序〉の時代/〈未来〉の時代/〈自己〉の時代、に大きく区分。その変遷を、郊外化やコンビニの普及、コミュニケーションの変容などを織りまぜ、詳細に記述していく。浮かび上がるのはポストモダンと呼ばれる時代の真実、すなわち《〈システム〉の全域化による、〈生活世界〉の空洞化》だ。〈システム〉には外がなく、全体を見渡す視点は存在しない。これは苦しい。

    70年代から時代と並走した著者の語るサブカルチャー論は、読み進むにつれヒリヒリした痛みの感覚を呼び覚ます。〈システム〉の枠組みで社会を考えることは、自己言及の渦のなかで自分の根拠をさぐり当てようとする、もがき苦しみにほかならない。宮台氏の用語は独特で難しいが、そんな現実を初めて切り出し、概念化し、命名しているのだからやむをえない。今回は巻末に、堀内進之介氏らによる150項目の註釈(ちゅうしゃく)がついていて、初心者にも親切だ。

    もうひとつ重要なのは、先進国に共通する〈システム〉の分析に加え、《特殊日本的問題》への処方箋も掲げている点だ。トクヴィルやパーソンズを参照すれば、日本の中間集団は欧米と違い〈システム〉にぶら下がっていて、〈生活世界〉を設計する発想に欠けるのは明らか。住民投票が民主主義再生の突破口ではないかとする。

    ガラパゴス島さながらに、独自のサブカルチャーを繁茂させた日本は、「クール」だと世界の注目を集めた。それを徹底して考察する宮台氏の仕事は疑いなく、世界第一級の業績である。一般読者も楽しめる本書を、手軽に手にできる幸運を感謝すべきだろう。

    Reply
  5. shinichi Post author

    宮台真司
    秩序の時代 ⇒ 未来の時代 ⇒ 自己の時代

    見田宗介
    理想の時代 ⇒ 夢の時代  ⇒ 虚構の時代

    大澤真幸
    理想の時代 ⇒ 虚構の時代 ⇒ 不可能性の時代

    Reply

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *