五戒(岩波 仏教辞典 第二版)

在俗信者の保つべき五つの戒(習慣)。
不殺生・不偸盗・不邪淫・不妄語・不飲酒の5項からなる (東晋の超『奉法要』には五戒として、不殺・不盗・不婬・不欺・不飲酒を挙げる)。
原始仏教時代にすでに成立しており、他の宗教とも共通した普遍性をもつ。
しかし行為に関する外形的制約にすぎず、心の動きは問わない。
この点で十善戒に劣り、大乗興起の頃は小乗の持する戒として重んじられなかった。
大乗仏教中期(3世紀頃)以降になると教団運営の主導権が比丘に移り、七衆の波羅提木叉の第一として大・小乗を兼受することが一般化し、再び重視されるようになった。
今日でも在家信者の戒の代表的な地位を占めている。
比丘となるために受戒する場合もこの五戒から受け直すことになっており、いずれの場合も三帰依の後に受けるのを通例とする。

One thought on “五戒(岩波 仏教辞典 第二版)

  1. shinichi Post author

    岩波 仏教辞典 第二版

    日本文化の厚い基層をなす仏教――日常我々の意識下にある幅広く奥の深い,豊饒で多彩な世界への手引き.

    インドから東漸して日本に伝来された仏教は,2500年にわたる受容と深化と展開の歴史のなかで,絶えず新たなるエネルギーを提供してきた.本辞典は,文化交流の視点から,改めて仏教を見直し理解を深めようという意図で編纂された.4200の百科項目に今度,600項目を増補し,全面的に改訂して面目を一新する.

    〈編集〉中村 元,福永光司,田村芳朗,今野 達,末木文美士

    ■日本文化の厚い基層をなす仏教――幅広く奥の深い,豊穣で多彩な世界への手引き

     われわれ日本人の生活の中には,仏教が深く入り込んでいます.仏教的な儀礼や行事が日常生活の大きな節目ともなっています.それだけでなく,無意識のうちにわれわれの人生観を支配している仏教思想は,6世紀に仏教が伝来して以来,日本人の精神的な生活に根底から影響を与えてきました.われわれがふだん触れる言葉・文学・芸術には,仏教ゆかりのものが実に沢山あります.
     仏教を正しく理解すること――それを目指して編纂され,4800の百科項目を収録した本辞典は,現代の慌しい生活の,とりわけ精神的側面を豊かにしてくれるはずです.身の回りに皆様と仏教との〈出会い〉を待っている言葉がさまざまにあるかと思います.愛・永遠・義理・時間・自然・慈悲・菩薩・修行・苦・乞食・生死・因果・億劫・言語・香・笑い…….600項目を新加するなど,面目を一新した新版に,ぜひご期待ください.

    ■さまざまな特色

    1 仏教学者・中国哲学者・国文学者の共同編集によるユニークな仏教の総合辞典.
    2 仏教語を中心に,経典・典籍・美術・仏具・儀礼・習俗,人名・寺名・地名など百科項目を4800項目収録.
    3 日常語・一般語から仏教の思想にせまる独自の項目――愛・永遠・義理・時間・自然・修行・菩薩など.
    4 言葉の解説にとどまらず,広い視野から仏教を展望――社会福祉と仏教,上代文学と仏教,俳諧と仏教,インドの仏教美術など.
    5 広範な日本古典文学の中から適切な用例を収載し,言葉を生きた姿でとらえる.
    6 インド・東南アジア・チベット・朝鮮関連の項目を新加してさらに充実させる.
    7 懇切で平易な記述に加えて,立体的な理解を可能にする工夫――解説文中に,*によって参照とすべき項目を,によって参考となる項目を明示する.豊富な索引用語と合わせて活用の便利を追求する.

    ■付録・索引

    ◆ 図解――寺院建築,伽藍配置,仏像,曼荼羅など
    ◆ サンスクリット語の手引き
    ◆ 仏教史略年表
    ◆ 和文索引,サンスクリット語/パーリ語索引

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