平川秀幸

真実が政治的イデオロギーや経済的利害によって捻じ曲げられてはならないというのは、科学に限らず、社会全般において侵すべからず大事な原則だろう。
その意味で価値中立性は、科学にとって重要な倫理的規範なのだということができる。
とはいえ、価値中立性という概念が全く問題のないものかといえば、答えは明らかにNOだ。
「規範としての価値中立性」の反面には「幻想としての価値中立性」がある。
一番の問題は、この概念が、科学技術と社会の共生成という現実を覆い隠し、科学技術に対する社会的・政治的な観点からの批判的な検討や議論を遮断するロジックとして働いてしまうことである。
科学技術をいわば「社会的・政治的な真空地帯」として聖域化することで「脱政治化」し、公共的ガバナンスの射程を、科学技術の「使い方」や、使い方を決める社会や政治の側だけに限定してしまうのだ。
「科学技術の成果が何か社会に害悪をもたらしたとすれば、それは使い方が悪いからであり、科学技術それ自体は善でも悪でもなく価値中立性である」という主張などはその典型だ。

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