Category Archives: story

広瀬弦

申し訳ないんですが、親の老いと言われても、あの人、最後まですごく元気だったんですよ。口が達者で、病院でもけんかばかりしていました。あの世にいる今でもきっと、自分が死んだなんて思っていないんじゃないかな。 そもそも、僕はずっとあの人のことが嫌いだったんです。自分でもどこかの雑誌で「私はダメな母親だった」と書いていた通り、母親としてはあんまり褒めるところがありません。とにかく、わがままで、子どもの僕にも言いたい放題。

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佐野洋子

 100万年も しなない ねこが いました。  100万回も しんで,100万回も 生きたのです。  りっぱな とらねこでした。  100万人の 人が,そのねこを かわいがり,100万人の 人が,そのねこが しんだとき なきました。  ねこは,1回も なきませんでした。

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北川悦吏子

正人:うん。そういうの聞くとなあ ああ女の子だなあなんてキュンとするんだよね。 律 :そんなんだから何人にもなっちゃうんだよ彼女が。 正人:てかさあ 犬飼うとするじゃない? 律 :うん。 正人:で 新しい犬来ました。前の犬 捨てる? 律 :いや。 正人:なっ。俺、そこ、わかんないんだよ。増えてくじゃん、犬。なんで女の子は、増えちゃだめなの? 正人:今、この子を抱きしめたら、絶対好きになる。抱きしめてチューしたら、もう100%好きだよ。 律 :そいでいいじゃん。恋愛ってそういうもんじゃん。 正人:自分さ、律みたいなまじめな人には分からないかもしれないけど、遊んでいるっていう感覚なくて。あー、かわいいな、好きだなと思って付き合うと、どんどんどんどん… 律 :わかった、その先はわかった。どんどん増えていっちゃうんだよな、女の子が。 正人:うん。 律 :犬みたいに。 正人:うん。 律 :新しい犬飼って、次の犬が来たから、前の犬捨てる人いないっていう理屈は前に聞いた。 律 :人間と犬が一緒はまずいんじゃないの? 正人:そっか。でも両方に愛あるよ俺。

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三島由紀夫

 拒みながら彼の腕のなかで目を閉ぢる聡子の美しさは喩へん方なかつた。微妙な線ばかりで形づくられたその顔は、端正でゐながら何かしら放恣なものに充ちてゐた。その唇の片端が、こころもち持ち上つたのが、歔欷のためか微笑のためか、彼は夕明りの中にたしかめようと焦つたが、今は彼女の鼻翼のかげりまでが、夕闇のすばやい兆のやうに思はれた。清顕は髪に半ば隠れてゐる聡子の耳を見た。耳朶にはほのかな紅があつたが、耳は実に精緻な形をしてゐて、一つの夢のなかの、ごく小さな仏像を奥に納めた小さな珊瑚の龕のやうだつた。すでに夕闇が深く領してゐるその耳の奥底には、何か神秘なものがあつた。その奥にあるのは聡子の心だらうか? 心はそれとも、彼女のうすくあいた唇の、潤んできらめく歯の奥にあるのだらうか?  清顕はどうやつて聡子の内部へ到達できるかと思ひ悩んだ。聡子はそれ以上自分の顔が見られることを避けるやうに、顔を自分のはうから急激に寄せてきて接吻した。清顕は片手をまはしてゐる彼女の腰のあたりの、温かさを指尖に感じ、あたかも花々が腐つてゐる室のやうなその温かさの中に、鼻を埋めてその匂ひをかぎ、窒息してしまつたらどんなによからうと想像した。聡子は一語も発しなかつたが、清顕は自分の幻が、もう一寸のところで、完全な美の均整へ達しようとしてゐるのをつぶさに見てゐた。  唇を離した聡子の大きな髪が、じつと清顕の制服の胸に埋められたので、彼はその髪油の香りの立ち迷ふなかに、幕の彼方にみえる遠い桜が、銀を帯びてゐるのを眺め、憂はしい髪油の匂ひと夕桜の匂ひとを同じもののやうに感じた。夕あかりの前に、こまかく重なり、けば立つた羊毛のやうに密集してゐる遠い桜は、その銀灰色にちかい粉つぽい白の下に、底深くほのかな不吉な紅、あたかも死化粧のやうな紅を蔵してゐた。  清顕は突然、聡子の頬が涙に濡れてゐるのを知った。彼の不幸な探求心が、それを幸福の涙か不幸の涙かと、いちはやく占ひはじめるが早いか、彼の胸から顔を離した聡子は、涙を拭はうとはせず、打ってかはった鋭い目つきで、些かのやさしさもなしに、たてつづけにかう言った。 「子供よ! 子供よ! 清様は、何一つおわかりにならない。何一つわからうとなさらない。私がもっと遠慮なしに、何もかも教へてあげてゐればよかったのだわ。ご自分を大層なものに思っていらしても、清様はまだただの赤ちゃんですよ。本当に私が、もっといたはつて、教へてあげてゐればよかった。でも、もう遅いわ。……」  言ひおはると、聡子は身をひるがへして幕の彼方にのがれ、あとには心を傷つけられた若者がひとりで残された。  何事が起ったのだろう。そこには彼をもっとも深く傷つける言葉ばかりが念入りに並び、もっとも彼の弱い部分を狙って射た矢、もっとも彼によく利く毒素が集約されてをり、いはば彼をいためつける言葉の精華であった。清顕はその毒の只ならぬ精錬度にまづ気づくべきであり、どうしてこんなに悪意の純粋な結晶が得られたかをまづ考へるべきだった。  しかるに胸は動悸を早め、手はふるへ、口惜しさに半ば涙ぐみながら、怒りに激して立ちつくしてゐる彼は、その感情の外に立って何一つ考へることができなかった。彼にはこの上、客の前へ顔を出すことが、そして夜が更けて會が果てるまで平然とした顔つきでゐることが、世界一の難事業のやうに思はれた。

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Kearan Pang

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Fernando Pessoa

On s’habitue et c’est plus par routine qu’on aime que pour autre chose. Qu’est-ce que ça pourrait être d’autre ? Ensuite on s’attache, mais on s’attache autrement, et ce sont nos grands enfants qu’on épouse. Certains pensent qu’on devrait les aimer pour ceci ou pour cela. Allons donc ! On ne sait pas pourquoi on aime. Quand on aime déjà on dit qu’on aime pour telle ou telle raison, mais seulement quand on aime déjà. Eux, ils pensent qu’on les aime parce qu’ils sont forts, ou parce qu’ils sont beaux, ou parce qu’ils ont les yeux bleus, ou quelque chose de ce genre. C’est un peu tout ça, monsieur le … Continue reading

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石牟礼道子

海が汚染されるということは、環境問題にとどまるものではない。それは太古からの命が連なるところ、数限りない生類と同化したご先祖さまの魂のよりどころが破壊されるということであり、わたしたちの魂が還りゆくところを失うということである。 水俣病の患者さんたちはそのことを身をもって、言葉を尽くして訴えた。だが、「言葉と文字とは、生命を売買する契約のためにある」と言わんばかりの近代企業とは、絶望的にすれ違ったのである。

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マガジンハウス

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吉野源三郎

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澤田直

ペソア・ウィルスとでも呼ぶべきものが確かに存在する。冒されてしまうと、なかなか治らない。(…)ここには自分の話が書かれている、これは自分と同じだ、などと思ったことがあったらペソア・ウィルスに冒されたと疑ってみたほうがよい。

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Fernando Pessoa

Literature is the most agreeable way of ignoring life.

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Fernando Pessoa

There’s no regret more painful than the regret of things that never were. ** I always live in the present. I don’t know the future and no longer have the past. The former oppresses me as the possibility of everything, the latter as the reality of nothing. I have no hopes and no nostalgia. Knowing what my life has been up till now – so often and so completely the opposite of what I wanted –, what can I assume about my life tomorrow, except that it will be what I don’t assume, what I don’t want, what happens to me from the outside, reaching me even via my will? … Continue reading

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Fernando Pessoa

The feelings that hurt most, the emotions that sting most, are those that are absurd – The longing for impossible things, precisely because they are impossible; nostalgia for what never was; the desire for what could have been; regret over not being someone else; dissatisfaction with the world’s existence. All these half-tones of the soul’s consciousness create in us a painful landscape, an eternal sunset of what we are.

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George Steiner

The fragmentary, the incomplete is of the essence of Pessoa’s spirit. The very kaleidoscope of voices within him, the breadth of his culture, the catholicity of his ironic sympathies – wonderfully echoed in Saramago’s great novel about Ricardo Reis – inhibited the monumentalities, the self-satisfaction of completion. Hence the vast torso of Pessoa’s Faust on which he laboured much of his life. Hence the fragmentary condition of The Book of Disquiet which contains material that predates 1913 and which Pessoa left open-ended at his death. As Adorno famously said, the finished work is, in our times and climate of anguish, a lie. It was to Bernardo Soares that Pessoa ascribed … Continue reading

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Fernando Pessoa

I cultivate hatred of action like a greenhouse flower. I dissent from life and am proud of it. No intelligent idea can gain general acceptance unless some stupidity is mixed in with it. Collective thought is stupid because it’s collective. Nothing passes into the realm of the collective without leaving at the border – like a toll – most of the intelligence it contained. In youth we’re twofold. Our innate intelligence, which may be considerable, coexists with the stupidity of our inexperience, which forms a second, lesser intelligence. Only later on do the two unite. That’s why youth always blunders – not because of its inexperience, but because of its … Continue reading

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明恵

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中島敦

日本には花の名所があるように、日本の文学にも情緒の名所がある。泉鏡花氏の芸術が即ちそれだ。と誰かが言って居たのを私は覚えている。併し、今時の女学生諸君の中に、鏡花の作品なぞを読んでいる人は殆んどないであろうと思われる。又、もし、そんな人がいた所で、そういう人はきっと今更鏡花でもあるまいと言うに違いない。にもかかわらず、私がここで大威張りで言いたいのは、日本人に生れながら、あるいは日本語を解しながら、鏡花の作品を読まないのは、折角の日本人たる特権を抛棄しているようなものだ。ということである。

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泉鏡花

不細工ながら、窓のように、箱のように、黒い横穴が小さく一ツずつ三十五十と一側並べに仕切ってあって、その中に、ずらりと婦人が並んでいました。 坐ったのもあり、立ったのもあり、片膝立てたじだらくな姿もある。緋の長襦袢ばかりのもある。頬のあたりに血のたれているのもある。縛られているのもある、一目見たが、それだけで、遠くの方は、小さくなって、幽になって、唯顔ばかり谷間に白百合の咲いたよう。 慄然として、遁げもならない処へ、またコンコンと拍子木が鳴る。 すると貴下、谷の方へ続いた、その何番目かの仕切の中から、ふらりと外へ出て、一人、小さな婦人の姿が、音もなく歩行いて来て、やがてその舞台へ上ったでございますが、其処へ来ると、並の大きさの、しかも、すらりとした脊丈になって、しょんぼりした肩の処へ、こう、頤をつけて、熟と客人の方を見向いた、その美しさ! 正しく玉脇の御新姐で。

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山本周五郎

家のために働きづめ、その挙句倒れて死んでしまった大切な父。その時母は浮気相手と不義密通を働いていた――。おしのが母をなじると、返ってきたのはおどろくべき言葉だった。「おしのちゃん、あなたの本当の父親はほかにいるのよ。」 母の不義を憎み、次々と母や、男たちに復讐を果たしながらも、不浄な血が流れている自身の存在に悩むおしの。最後の復讐相手、自分の本当の父親と直面したおしのがとった驚くべき行動とは――。

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Janet Dailey

“Aren’t you going to turn off the light?” she whispered. “No.” The hoarseness of his answer betrayed the hot flames of passion that seared him. “I’m not going to let darkness hide your body from my eyes. I’ve waited too long to see it.” The mattress dipped under his weight, rolling her against his length and into his arms. The preliminaries of lovemaking were abandoned as the need to possess her body became greater than the desire to enjoy it. Brig struggled to control the raging fires that flamed through him. They burned hotter and hotter until he could barely withstand them. The blaze was fueled by her writhing and … Continue reading

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Remy Charlip

Fortunately,   Ned was invited to a surprise party. Unfortunately,   the party was a thousand miles away. Fortunately,   a friend loaned Ned an airplane. Unfortunately,   the motor exploded. Fortunately,   there was a parachute in the airplane. Unfortunately,   there was a hole in the parachute. What else could go wrong   as Ned tries to get the party?

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西川美和

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Paul Auster

All along, from the beginning of his conscious life, the persistent feeling that the forks and parallels of the roads taken and not taken were all being travelled by the same people at the same time, the visible people and the shadow people, and that the world as it was could never be more than a fraction of the world, for the real also consisted of what could have happened but didn’t, that one road was no better or worse than any other road, but the torment of being alive in a single body was that at any given moment you had to be on one road only, though you … Continue reading

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Monica R. Gale

As it began, gods and men seem united in a common pleasure: hominum diuumque uoluptas, alma Venus (‘pleasure of gods and men, nurturing Venus’, 1.1—2). As it nears its close, gods and men are separated: Calliope can give the gods uoluptas (‘pleasure’), but men she can only afford requies (‘repose’).

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浜辺美波

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国研出版

(1)最も好きな女君   ① 紫の上(43%)   ② 空蝉・桐壺の更衣・花散里(各9%)   ③ 明石の御方・秋好中宮・浮舟・朧月夜・末摘花・玉鬘・藤壺(各4%) (2)生涯の伴侶にしたい女君   ① 紫の上(33%)   ② 明石の御方(27%)   ③ 花散里(16%)   ④ 雲井の雁・玉鬘・宇治の中の君・六条御息所(各5%) (3)恋人にしたい女君   ① 朧月夜(33%)   ② 夕顔(27%)   ③ 紫の上(13%)   ④ 雲井の雁・玉鬘・軒端の荻・花散里(各6%) (4)友人にしたい女君   ① 朝顔(44%)   ② 明石の御方(33%)   ③ 朧月夜(22%)

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三島由紀夫

世の中の人間は、みんな自分勝手の目的へ向かって邁進しており、他人に関心を持つのはよほど例外的だ、とわかったときに、はじめてあなたの書く手紙にはいきいきとした力がそなわり、人の心をゆすぶる手紙が書けるようになるのです。

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瀬戸内寂聴

石牟礼さんとは指で数えられるほどしか逢っていないのに、まるで毎週逢っていたように、その時々の表情や、よく似合うヘアスタイルが眼底に焼きついている。細々とした声音や、それに似ない強い烈しい言葉の内容も、年月に犯されず、瑞々しく心に焼きついている。いつ逢っても前日のつづきのような親しい口調で心をかたむけて話しかけてくれるので、自分が深く好かれているような温かい気分になってくる。それは石牟礼さんの心の温かさとやさしさのせいだろう。自分がこの偉大な作家に好かれているようなうるおった気分にさせられているのだ。石牟礼さんは嘘をつけない人だから、何かの縁で逢った目前の人物を、心の底から愛そうとされる。嫌な人物に逢うことを、自分が嫌っているからだ。

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Yasunari Kawabata, Edward G. Seidensticker

The train came out of the long tunnel into the snow country. The earth lay white under the night sky. The train pulled up at a signal stop. A girl who had been sitting on the other side of the car came over and opened the window in front of Shimamura. The snowy cold poured in. Leaning far out the window, the girl called to the station master as though he were a great distance away. The station master walked slowly over the snow, a lantern in his hand. His face was buried to the nose in a muffler, and the flaps of his cap were turned down over his … Continue reading

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新美南吉

 そのあくる日もごんは、栗をもって、兵十の家へ出かけました。兵十は物置で縄をなっていました。それでごんは家の裏口から、こっそり中へはいりました。  そのとき兵十は、ふと顔をあげました。と狐が家の中へはいったではありませんか。こないだうなぎをぬすみやがったあのごん狐めが、またいたずらをしに来たな。 「ようし。」  兵十は立ちあがって、納屋にかけてある火縄銃をとって、火薬をつめました。  そして足音をしのばせてちかよって、今戸口を出ようとするごんを、ドンと、うちました。ごんは、ばたりとたおれました。兵十はかけよって来ました。家の中を見ると、土間に栗が、かためておいてあるのが目につきました。 「おや」と兵十は、びっくりしてごんに目を落しました。 「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは」  ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。  兵十は火縄銃をばたりと、とり落しました。青い煙が、まだ筒口から細く出ていました。

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遠藤周作

「生きるって、こんなにむつかしいことかと、この一年で、たっぷり味わいました。一体、美しいこととか、善いことって一体、何なのでしょうか」 「美しいものと善いものに絶望しないでください。人間の歴史は……ある目的に向かって進んでいる筈ですよ。外目にはそれが永遠に足ぶみをしているように見えますが、ゆっくりと、大きな流れのなかで一つの目標に向かって進んでいる筈ですよ」「(この目標とは)人間がつくりだす善きことと、美しきことの結集です」

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雪樹

「…君の見る空が千回晴れたら、きっとまた会える。だから、僕が君の傍にいたこと忘れないでいて…。ね、日向!」 僕にとって精一杯の約束だった。 「や…くそ…く…」 日向は見えなくなりつつある僕に小指を出した。 「…うん。約束だ…」 涙と笑顔と僕らの手は、最後の最後で重なった。 そして、僕は日向の世界から完全に姿を消した。

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Alan Sternberg

“Never go to bed angry with each other!” one such truck proclaims, but people in Camaro City often do. They also go to bed confused – especially the men, who don’t understand why their lives don’t seem to fit anymore. Spirited and stubborn, these people refuse to see themselves as relics of the factory economy. Their more and less fortunate neighbors are also represented here – a girl from the inner city who must choose how to grow up; a young woman of relative privilege who discovers the joy and difficulty of her mother’s work.

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Rune Froseth

“Hi, honey. So, what are we having?” asks Kelsey. I don’t think she knows him—or has even seen him before—but she “honeys” pretty much everybody. “Eh, hmm, eh. Can I have an espresso, please?” For a second Kelsey is quiet—she is at a loss for words. Then she rolls her eyes around the room and bursts out laughing. “Espresso? ESPRESSO? Do we have—tell me—do we look like we have espresso?” Now everybody is laughing. Including the manager in the corner. The guy in the suit blushes. In any other establishment, I guess this would have been regarded as an extremely rude response, and cause for dismissal, or at least a … Continue reading

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Dorota Kobiela, Hugh Welchman

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越川道夫

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森下佳子

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村上春樹

映画が終って場内が明るくなったところで僕も目覚めた。観客は申しあわせたように順番にあくびをした。僕は売店でアイスクリームをふたつ買ってきて彼女と食べた。去年の夏から売れ残っていたような固いアイスクリームだった。 「ずっと寝てたの?」 「うん」と僕は言った。「面白かった?」 「すごく面白かったわよ。最後に町が爆発しちゃうの」 「へえ」 映画館はいやにしんとしていた。というより僕のまわりだけがいやにしんとしていた。奇妙な気分だった。 「ねえ」と彼女が言った。「なんだか今ごろになって体が移動しているような気がしない?」 そう言われてみれば実にそのとおりだった。 彼女は僕の手を握った。「ずっとこうしていて。心配なのよ」 「うん」 「そうしないと、どこかべつのところに移動してしまいそうなの。どこかわけのわからないところに」

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九鬼周造

まず内包的見地にあって、「いき」の第一の徴表は異性に対する「媚態」である。異性との関係が「いき」の原本的存在を形成していることは、「いきごと」が「いろごと」を意味するのでもわかる。「いきな話」といえば、異性との交渉に関する話を意味している。なお「いきな話」とか「いきな事」とかいううちには、その異性との交渉が尋常の交渉でないことを含んでいる。近松秋江の『意気なこと』という短篇小説は「女を囲う」ことに関している。そうして異性間の尋常ならざる交渉は媚態の皆無を前提としては成立を想像することができない。すなわち「いきな事」の必然的制約は何らかの意味の媚態である。しからば媚態とは何であるか。媚態とは、一元的の自己が自己に対して異性を措定し、自己と異性との間に可能的関係を構成する二元的態度である。そうして「いき」のうちに見られる「なまめかしさ」「つやっぽさ」「色気」などは、すべてこの二元的可能性を基礎とする緊張にほかならない。いわゆる「上品」はこの二元性の欠乏を示している。そうしてこの二元的可能性は媚態の原本的存在規定であって、異性が完全なる合同を遂とげて緊張性を失う場合には媚態はおのずから消滅する。媚態は異性の征服を仮想的目的とし、目的の実現とともに消滅の運命をもったものである。永井荷風が『歓楽』のうちで「得ようとして、得た後の女ほど情無いものはない」といっているのは、異性の双方において活躍していた媚態の自己消滅によって齎もたらされた「倦怠、絶望、嫌悪」の情を意味しているに相違ない。それ故に、二元的関係を持続せしむること、すなわち可能性を可能性として擁護することは、媚態の本領であり、したがって「歓楽」の要諦である。しかしながら、媚態の強度は異性間の距離の接近するに従って減少するものではない。距離の接近はかえって媚態の強度を増す。菊池寛の『不壊の白珠』のうちで「媚態」という表題の下に次の描写がある。「片山氏は……玲子と間隔をあけるやうに、なるべく早足に歩かうとした。だが、玲子は、そのスラリと長い脚で……片山氏が、離れようとすればするほど寄り添つて、すれずれに歩いた」。媚態の要は、距離を出来得る限り接近せしめつつ、距離の差が極限に達せざることである。可能性としての媚態は、実に動的可能性として可能である。アキレウスは「そのスラリと長い脚で」無限に亀に近迫するがよい。しかし、ヅェノンの逆説を成立せしめることを忘れてはならない。けだし、媚態とは、その完全なる形においては、異性間の二元的、動的可能性が可能性のままに絶対化されたものでなければならない。「継続された有限性」を継続する放浪者、「悪い無限性」を喜ぶ悪性者、「無窮に」追跡して仆たおれないアキレウス、この種の人間だけが本当の媚態を知っているのである。そうして、かような媚態が「いき」の基調たる「色っぽさ」を規定している。

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島尾敏雄

私はぐらぐらと赤土の崖からころげ落ちる頼りなさに襲われて来る。問題はそのような所にはないのだが、私はもう十箇月の間固着した同じような質問に答弁することを強いられ、それがもつれて行き、私の過去は白々とあばかれ、収拾がつかなくなることを繰返している。ああはじまって行く、はじまって行く。そう思うと頭はくらみ、妻の顔にも憑きものだけが跳梁し、私ののどもとには身勝手なむごい言葉が次々とつき上って来る。そしてそれをとどめることができずに口に出してしまう。

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しまおまほ

 校庭の隅にある、学校名からつけられた「城山エベレスト」という小さな山の頂に立って、チャイムが鳴るまで思いを巡らせていた。すごくもやもやして気持ちが悪いけれど、友だちとも先生とも共有できない。永遠の不思議に支配されていた。  家で父に尋ねてみると、 「生きているから生きているんだよ!」  と身もふたもない答えが返ってきた。  仕方なく、母に聞くと 「ジッタンに聞いてごらんなさい」  と、言う。  さっそく祖父に電話をかける。 「ジッタン、どうしてわたしは生きているの?」  すると祖父の答えはこうだった。 「えらいよ、真帆。真帆がそう疑問をもっている事が生きている証拠なんだよ」  ・・・・・・難しい答え。  しかし、それからその事を考える事はなくなった。

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石牟礼道子

  いやだいやだ、目というものがあるのはいやだ。いろいろ見えてしまうからいやだ。  

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小川未明

 人魚は、南の方の海にばかり棲んでいるのではありません。北の海にも棲んでいたのであります。  北方の海の色は、青うございました。ある時、岩の上に、女の人魚があがって、あたりの景色を眺めながら休んでいました。  雲間から洩れた月の光がさびしく、波の上を照していました。どちらを見ても限りない、物凄い波がうねうねと動いているのであります。  なんという淋しい景色だろうと人魚は思いました。

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Renée Carlino

You know when you’re looking at someone and you can’t help but smile at how oblivious they are to their own charm? That’s what was happening to me, and it was making me feel…happy. Euphoric. Something indescribable. It was like we already knew each other, like we had met in a previous life. Memories that didn’t exist began exploding in my mind like fireworks. I smiled at him; he smiled back. There was some sort of affinity between us, but I didn’t know where it was coming from, exactly. I didn’t know this guy half an hour ago, but now I needed to know him. He glanced past me at … Continue reading

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Romain Gary

L’amour, tu sais, ce dont il a le plus besoin, c’est l’imagination. Il faut que chacun invente l’autre avec toute son imagination, avec toutes ses forces et qu’il ne cède pas un pouce du terrain à la réalité ; alors, là, lorsque deux imaginations se rencontrent… il n’y a rien de plus beau.

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森下佳子

するとひとつだけ気付いたことがありましてね。一日雲を見ておろうが何をしておろうが、誰も何も言わねえんでさ。家も、銭も、知る人もねえ。けど、裏返しゃあ、俺がどこで何をしようとかまわねぇわけで。 これから先は、何にも誰にも縛られず、己の心に従って生きてやるのだと決めたんでさぁ。 (どこぞのお家なぞに縛られるわけにはいかぬということか) けど、気付いたら、仲間に縛られ、町に縛られ。ざまぁねえでさぁ。

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近藤祐

私たちは映画『マトリックス』のように、「世界一の都市東京」というヴァーチャルな白昼夢を見ているのではないか。幻覚の表皮を一枚めくれば、過剰消費社会という底なし沼が私たちをのみ込もうとしている。都市空間もまた消費対象であることを免れ得ず、昔ながらの町並みは呆気なく消え失せ、効率性・合理性を至上目的とする優等生的な空間が出現する。そこには歴史的な時間軸にそって蓄積した多様性や不整合性は存在しない。 ** そのような時代状況にあって、私は『生きられる都市を求めて』において、現代都市の私たちを窒息させる合理性の網の目から逃れ、偶発的に「彷徨う」ことを提案した。しかしそれだけでは充分でない。都市空間のみならず、私たちの生の拠点となる居住空間もまた、限度なき商品化にさらされているからである。そのもっとも顕著な例である分譲マンションの広告は、私たちを「上質で豊かな」ライフ・スタイルへと勧誘する。そこには便利さ、快適さに加え〈広さ〉という絶対的な価値が孕まれる。実際に家は広いほどよいことを誰も疑わない。では〈広さ〉に対置される〈狭さ〉は、ただのデメリットでしかないのか。

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Kenneth Grahame, Charles van Sandwyk

When Mole is drawn out of his underground abode (‘Hang spring-cleaning!’) by the imperious call of Spring, he is fascinated by the world above his home. The first animal he meets is lively Ratty, who introduces him to the beauties of the river and the joys of ‘simply messing about in boats’. Mr Toad, irrepressible aristocrat and creature of crazes, shatters this rural calm with his discovery of the automobile. ‘Villages skipped, towns and cities jumped – always somebody else’s horizon! Oh, bliss! Oh, poop-poop!’ Soon he is risking life and limb indulging his new-found passion, experiencing brushes with the law and landing himself in prison, much to the concern … Continue reading

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김선아

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菊池道人

どちらか一方だけが正しいというような場合は、余り多くはない。大抵はどちらの言い分にもそれなりの理があるものだ。例えば、周郎が申したように、張角の説く教えに縋りつく者たちは、飢えや病に苦しんでいる、それを考えねばということは正しい。また、孫堅殿が国家の安寧のために不逞の輩を成敗するということも、理があり、まして、それを侮辱されたのは、子として許しがたいというのも、もっともな心情じゃ。しかし、そのもっともな理や情がぶつかると、無益な争いとなり、どちらの言い分も死んでしまうものだ。 正しい事を言うと、とかく、人を傷つけてしまうものだよ。わしも若い頃は官吏の端くれであったが、余りに歯に衣を着せずに物を申すものだから、本来ならば味方になってくれそうな人々まで敵に回してしまった。かと言って、何も言わずにいればよいというものではない。先ずは、相手が如何なる立場の者であるのかを考えねばならぬ。

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Charles McGrath

Who isn’t a critic? We are born picky and judgmental, and as we get older we only become more opinionated and more sure of ourselves. Just look at all the bluster that passes for criticism these days on the Internet, where the guiding principle is that everyone has a right to air his own opinion, and that all opinions, just by being firmly held, are equally valid and important. Probably never in history has there been more suspicion of established or professional critics, or more self-­appointed arbiters clamoring to take their place. How many of these voices are worth paying attention to is something else. If for a start we … Continue reading

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Adam Kirsch

The roots of criticism lie not in judgment but in receptivity and response. Everyone, upon encountering a work of art, has some kind of response, ranging from boredom or incomprehension to amazement and gratitude. In this sense, everyone really is a critic, in a way that not everyone is a painter or a poet. It requires some special talent to create an artwork, but any conscious person will have a reaction to that artwork. What makes someone a critic in the vocational sense is, first, the habit of questioning her own reactions — asking herself why she feels as she does. Second, she must have the ability to formalize and … Continue reading

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Michel de Montaigne

Chez moy, je me destourne un peu plus souvent à ma librairie, d’où, tout d’une main, je commande mon mesnage : Je suis sur l’entree ; et vois soubs moy, mon jardin, ma basse cour, ma cour, et dans la plus part des membres de ma maison. Là je feuillette à cette heure un livre, a cette heure un autre, sans ordre et sans dessein, à pieces descousues : Tantost je resve, tantost j’enregistre et dicte, en me promenant, mes songes que voicy. ** Chez moi, je me détourne un peu plus souvent à ma librairie, là, tout d’une main , je commande à mon ménage. Je suis sur l’entre, … Continue reading

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村上春樹

だから僕は、小説家になったほとんど最初の段階で、文章を使って個人的な言い訳をすることだけはやめようと決心した。僕はそれほど強い人間ではないから、日常においてはあるいはついつい言い訳のようなことをしてしまうかもしれない。でもそのために文章を使うことだけはやめようと。いささか大げさな言い方だとは思うけれど、たとえ世界中に誤解されたとしてもそれはそれで仕方ないじゃないか、と基本的には僕は思っている。逆に言えば「小説家というのは良くも悪くも、そんなにみんなにすんなりと理解されちゃかなわないだろう」ということである。「知は力なり」という言葉もあるけれど、小説家にとってはむしろ「誤解は力なり」という方が正しいのではないか。小説の世界では理解を積みかさねて得られた理解よりは、誤解を積み重ねて得られた理解の方が、往々にしてより強い力を持ちうるのだ。

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山下肇

木の葉っぱにしたって、寸分違わぬ葉など二枚とないといわれるぐらいだから、千人の人間の中にだって、その心ぐみや思考方法においてぴったり一致する者など二人といないだろう。こうと仮定すれば、敵の数が多いことに驚くというよりは、むしろこれほど多くの友人や味方を持っていることを驚く方が当然だよ。

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花房観音

セックスで快楽の芯に近づく時に「堕ちてゆく」という感覚がある。身も心も快感の波に呑まれ流され、遂には海の底に沈んでいく。それは理性を失わせもするし、社会性をも時には崩壊させるけれど、ひどく心地がよく、気づけば自ら堕ちることを望んでいる。 中世、紀州和歌山は補陀落渡海の地であった。補陀落渡海は捨身の修行であり、僧たちが船に乗り那智の浦より観音菩薩の住まう浄土である補陀落を目指すのだが、いずれは海の底に沈む生きながらにしての水葬だった。 『籠の鸚鵡』は、一九八〇年代の和歌山が舞台だ。主人公は町役場の出納室の室長・梶康男、四八歳の今まで妻ひと筋で子どもはいない。平凡で真面目な公務員である梶は、スナックに勤める女・カヨ子との出会いにより運命を大きく狂わされる。

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Julie Clarini

C’est bien sûr à Proust qu’on pense quand il faut présenter Trésor du terroir. Les noms de lieux de la France. A Proust, à La Recherche, à Combray et Guermantes, à Parme, à toutes ces pages splendides sur le pouvoir d’évocation de quelques syllabes… Chez Proust, « le Nom propre est (…) un signe », remarquait Roland Barthes en 1967. Ce signe est « toujours gros d’une épaisseur touffue de sens, qu’aucun usage ne vient réduire, aplatir, contrairement au nom commun qui ne livre jamais qu’un de ses sens par syntagme ». Alors Proust, bien sûr. Mais on pense aussi à l’enfance, à ces trajets en voiture où chaque village … Continue reading

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Caroline Leavitt

I never intended to get a tortoise. I was in a troubled relationship with a man who was the opposite of me in almost every way. While I felt exiled every time I left Manhattan, he yearned to move to the country. When we discovered we both wanted a pet, though, we thought we finally had found common ground. I was allergic to dogs and cats, so we scouted for other possibilities at the pet store. Finally I pointed to a crowded tank, a glossy shell and a pair of orange ringed eyes. “This is what you want?” he asked doubtfully. I nodded. We named the tortoise Minnie, and by … Continue reading

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Nicola Yoon

Everything’s a risk. Not doing anything is a risk. It’s up to you. Love is worth everything. Everything. Life is a gift. Don’t forget to live it. In the beginning there was nothing. And then there was everything. You can’t predict the future. It turns out that you can’t predict the past either. Wanting just leads to more wanting. There’s no end to desire. Maybe we can’t predict everything, but we can predict some things. We are lips and arms and legs and bodies entangled. For the first time in a long time, I want more than I have. One sees clearly only with the heart. Anything essential is invisible … Continue reading

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Nicola Yoon

Natasha: I’m a girl who believes in science and facts. Not fate. Not destiny. Or dreams that will never come true. I’m definitely not the kind of girl who meets a cute boy on a crowded New York City street and falls in love with him. Not when my family is twelve hours away from being deported to Jamaica. Falling in love with him won’t be my story. Daniel: I’ve always been the good son, the good student, living up to my parents’ high expectations. Never the poet. Or the dreamer. But when I see her, I forget about all that. Something about Natasha makes me think that fate has … Continue reading

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Robert Sullivan

When I wrote the following account of my experiences with rats, I lived in an apartment building on a block filled with other apartment buildings, amidst the approximately eight million people in New York City, and I paid rent to a landlord that I never actually met-though I did meet the superintendent, who was a very nice guy. At this moment, I am living out of the city, away from the masses, in a bucolic little village with about the same number of inhabitants as my former city block. I wouldn’t normally delve into my own personal matters, except that when I mention my rat experiences to people, they sometimes … Continue reading

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Oscar Wilde

He looked anxious and puzzled, and seemed to be in doubt about something. I felt it could not be modern scepticism, for Murchison was the stoutest of Tories, and believed in the Pentateuch as firmly as he believed in the House of Peers; so I concluded that it was a woman, and asked him if he was married yet. ‘I don’t understand women well enough,’ he answered. ‘My dear Gerald,’ I said, ‘women are meant to be loved, not to be understood.’ ‘I cannot love where I cannot trust,’ he replied. ‘I believe you have a mystery in your life, Gerald,’ I exclaimed; ‘tell me about it.’

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Affinity Konar

We were made, once. My twin, Pearl, and me. Or, to be precise, Pearl was formed and I split from her. She embossed herself on the womb; I copied her signature. For eight months we were afloat in amniotic snowfall, two rosy mittens resting on the lining of our mother. I couldn’t imagine anything grander than the womb we shared, but after the scaffolds of our brains were ivoried and our spleens were complete, Pearl wanted to see the world beyond us. And so, with newborn pluck, she spat herself out of our mother.

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Jojo Moyes

You are pretty much the only thing that makes me want to get up in the morning. You only get one life. It’s actually your duty to live it as fully as possible. I thought, briefly, that I would never feel as intensely connected to the world, to another human being, as I did at that moment. I will never, ever regret the things I’ve done. Because most days, all you have are places in your memory that you can go to. I held him close and said nothing, all the while telling him silently that he was loved. Oh, but he was loved. I have become a whole new … Continue reading

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古川日出男

護摩ごまは邸内いっぱいに立ち籠めている。焚き入れられた芥子けしが臭う。それを三人の女がそれぞれに嗅かいでいる。一人は、褥しとねにいる。一人は、間仕切りの几帳きちょうの向こう側にきちんと膝を揃えて座している。一人はしきりと立ち働いている。だが三人とも嗅かいでいる。

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芥川龍之介

 彼は雨に濡れたまま、アスフアルトの上を踏んで行つた。雨は可也烈しかつた。彼は水沫の満ちた中にゴム引の外套の匂を感じた。  すると目の前の架空線が一本、紫いろの火花を発してゐた。彼は妙に感動した。彼の上着のポケツトは彼等の同人雑誌へ発表する彼の原稿を隠してゐた。彼は雨の中を歩きながら、もう一度後ろの架空線を見上げた。  架空線は不相変鋭い火花を放つてゐた。彼は人生を見渡しても、何も特に欲しいものはなかつた。が、この紫色の火花だけは、――凄まじい空中の火花だけは命と取り換へてもつかまへたかつた。

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太宰治

 節子は、誰よりも先きに、まず釈放せられた。検事は、おわかれに際して、しんみりした口調で言った。 「それではお大事に。悪い兄さんでも、あんな死にかたをしたとなると、やっぱり肉親の情だ、君も悲しいだろうが、元気を出して。」  少女は眼を挙げて答えた。その言葉は、エホバをさえ沈思させたにちがいない。もちろん世界の文学にも、未だかつて出現したことがなかった程の新しい言葉であった。 「いいえ、」少女は眼を挙げて答えた。「兄さんが死んだので、私たちは幸福になりました。」

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C. S. Lewis

Edmund says to Ramandu’s daughter: “When I look in your face I can’t help believing all you say: but then that’s just what might happen with a witch too. How are we to know you’re a friend?” She replies, “You can’t know . . . you can only believe — or not.”

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石牟礼道子

空の雲が厚くたれ下ってきて、雨粒が一滴二滴と頬や頭に落ち始めるときの、一種恍惚とでもいってよい安堵感を、何にたとえようか。まさしく天の慈雨である。山々の草木とともにうちふるえるような感じで、公然と農作業を休んでよい。誰に気がねもなく集まってバカ話をしようが、寝ころんでいようが、男たちは昼間から焼酎を飲み、村全体が祝祭気分で山童や、がらっぱ(河童)の話などが賑わい、新しい民話も生まれる。つらい労働を体験しているばばさまたちも、それに加わった。 私の育った水俣川の河口地帯では、女が農事にたずさわらないということには、周囲の目が冷ややかだった。

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島崎あき

泣きそうになりながら、必死で書きました。もうやるしかなかったのでしょうね。文法が分かっていて、書きたいものがあれば書けるんです。作家はどれだけ気持ちを訴えることができるかが大切ですから。 これまで知らなかった日本のことを知り、時には涙を流しました。作家本人が感動しなければ、誰が感動するんでしょう。そうでなければ気持ちは訴えられません。 私は長編作家ではないので、せいぜい1日1ページ書くのが限度です。その分何度も書き直しますけど。100ページあれば10回は書き直しますね。 言葉は考えがはっきりしていれば、簡潔になります。 大人になってから学ぶ言葉をパーフェクトに習得するのは無理です。今でも辞書を引きながら新聞を読んでいます。でも、毎日が勉強なので退屈することがないですね。 (モントリオールについて)ここの人は良く言えばおおらか、悪く言えば大雑把ね。でもおおらかでないと芸術は育たないと思うわ。 生きるということは何か自分にできる最大の力を見出して社会に貢献することではないかしら。モントリオールは日本と比べて家族行事や親戚の集まりが少なく人間関係がシンプルだから自分の時間がたくさんあるわね。だから基本的なもの(子育てなど)以外に何か熱中できる仕事や趣味がないと落ち込んじゃうと思うわ。 わたしの本が語学学校などでテキストとして使われていると聞くと、ほんとうにうれしいですね。

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Olivier Laban-Mattei

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Cécile Allegra

Monica est en veine aujourd’hui. Très en veine. Elle parle de son enfance, de sa mère prostituée, de sa mère sans homme et avec trop d’hommes à la fois, qui a fait six gosses seule et déménagé quatre fois. Terminus au Villaggio Coppola, ancien complexe résidentiel de luxe destiné aux salariés de l’ONU, devenu après le grand tremblement de terre un no man’s land sordide, où échouent les maudits, les rebuts et les fous. A onze ans, déjà femme, Monica se promène dans son quartier. Un type la remarque. Il se présente chez la mère : « Je l’aime bien votre gamine, j’aimerais la suivre ». A Naples il y … Continue reading

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Ursula K. Le Guin

But you must not change one thing, one pebble, one grain of sand, until you know what good and evil will follow on that act. The world is in balance, in Equilibrium. A wizard’s power of Changing and of Summoning can shake the balance of the world…. To light a candle is to cast a shadow.

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中島敦

今から一年程前、自分が旅に出て汝水のほとりに泊った夜のこと、一睡してから、ふと眼を覚ますと、戸外で誰かが我が名を呼んでいる。声に応じて外へ出て見ると、声は闇の中から頻りに自分を招く。覚えず、自分は声を追うて走り出した。無我夢中で駈けて行く中に、何時しか途は山林に入り、しかも、知らぬ間に自分は左右の手で地を攫んで走っていた。何か身体中に力が充ち満ちたような感じで、軽々と岩石を跳び越えて行った。気が付くと、手先や肱のあたりに毛を生じているらしい。少し明るくなってから、谷川に臨んで姿を映して見ると、既に虎となっていた。自分は初め眼を信じなかった。次に、これは夢に違いないと考えた。夢の中で、これは夢だぞと知っているような夢を、自分はそれまでに見たことがあったから。どうしても夢でないと悟らねばならなかった時、自分は茫然とした。そうして懼れた。全く、どんな事でも起り得るのだと思うて、深く懼れた。しかし、何故こんな事になったのだろう。分らぬ。全く何事も我々には判らぬ。理由も分らずに押付けられたものを大人しく受取って、理由も分らずに生きて行くのが、我々生きもののさだめだ。自分は直に死を想うた。しかし、その時、眼の前を一匹の兎が駈け過ぎるのを見た途端に、自分の中の人間は忽ち姿を消した。再び自分の中の人間が目を覚ました時、自分の口は兎の血に塗れ、あたりには兎の毛が散らばっていた。これが虎としての最初の経験であった。それ以来今までにどんな所行をし続けて来たか、それは到底語るに忍びない。ただ、一日の中に必ず数時間は、人間の心が還って来る。そういう時には、曾ての日と同じく、人語も操れれば、複雑な思考にも堪え得るし、経書の章句を誦んずることも出来る。その人間の心で、虎としての己れの残虐な行のあとを見、己の運命をふりかえる時が、最も情なく、恐しく、憤ろしい。しかし、その、人間にかえる数時間も、日を経るに従って次第に短くなって行く。今までは、どうして虎などになったかと怪しんでいたのに、この間ひょいと気が付いて見たら、己はどうして以前、人間だったのかと考えていた。これは恐しいことだ。今少し経てば、己の中の人間の心は、獣としての習慣の中にすっかり埋もれて消えて了うだろう。ちょうど、古い宮殿の礎が次第に土砂に埋没するように。そうすれば、しまいに己は自分の過去を忘れ果て、一匹の虎として狂い廻り、今日のように途で君と出会っても故人と認めることなく、君を裂き喰うて何の悔も感じないだろう。一体、獣でも人間でも、もとは何か他のものだったんだろう。初めはそれを憶えているが、次第に忘れて了い、初めから今の形のものだったと思い込んでいるのではないか? いや、そんな事はどうでもいい。己の中の人間の心がすっかり消えて了えば、恐らく、その方が、己はしあわせになれるだろう。だのに、己の中の人間は、その事を、この上なく恐しく感じているのだ。ああ、全く、どんなに、恐しく、哀しく、切なく思っているだろう! 己が人間だった記憶のなくなることを。この気持は誰にも分らない。誰にも分らない。己と同じ身の上に成った者でなければ。

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梨木香歩

――さっきはもっとはっきりとしていたのだ。 ――そうだろう。あれは毎年そうだ。もうじきすっかり消える。木槿が満開になる頃、それを助けとして立ち現れるのだ。季節ものの蜃気楼のようなものだ。木槿の横に小さい燈籠があるだろう。 ――ああ。 ――あれは埋め込まれてあの低さになっている。土に埋め込まれている部分には、地蔵菩薩が彫られている。が、地蔵菩薩は実はマリア像に見立てられているのだ。それでマリア燈籠と呼ぶものもある。元々は織部好みの燈籠として茶人の間で拡がったのだが、その部分を埋めて隠れキリシタンの礼拝に使われたこともあるらしい。  私は唖然とし、それから、 ――それでは、堀り出そう、高堂、掘り出してきれいにして差し上げようではないか。 と、息せき切って云った。高堂は少しうんざりしたように、 ―――おまえはどうしてそう単純なんだ。俺は当時―――初めてあの現象を見たとき、まだ幼かったが、それでもそのとき一緒にいた叔父にこう云われて納得したのだ。信仰というものは人の心の深みに埋めておくもので、それでこそああやって切々と美しく浮かび上がってくるものなのだ。もちろん、風雪に打たれ、堪え忍んで鍛え抜かれる信仰もあろうが、これは、こういう形なのだ、むやみに掘り出して人目に晒すだけがいつの場合にも最良とは決して限らないのだ、ことに今ここに住む我らとは、属する宗教が違う。表に掘り出しても、好奇の目で見られるだけであろうよ、それでは、その一番大事な純粋の部分が危うくなるだけではないのか、と。

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久留島武彦, アヤ井 アキコ

春の日に、おおかみと出会ってしまったひつじのおやこ。 身を守るため、「いまはおいしくありませんよ。・・・あきにはふとっているでしょう」と言ってしまい、 「ならば、あきにはたべてもよいというのだな」と出来ない約束をしてしまう。 秋が迫り、ひつじのおやこが困るなか、遊び仲間のうさぎが、おやこの為に知恵を出す。 豪奢に着飾り、動物の皮をくくり付け、月宮殿の使いに扮するひつじたち。 おおかみに出会ったうさぎは言う。 「おおかみのかわがたらぬ。すぐ、そのかわをぬいでさし出せ」。 おおかみはほうほうの体で逃げ出していった。 おおかみが去ったあと、うさぎは言った。 「あとでこまるようなやくそくは、けっしてしてはいけませんよ」と。

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Bill Murray

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石牟礼道子

地: ことにもヒトはその魂魄を己が身命より抜き取られ、残れる身の生きてはをれど、ただぞろめきゆき来する悪霊の影たるを知らず。かかる者らの指先がもて遊び創り出させし毒のさまざま、産土の山河、はてはもの皆の母なる海を妖変させたること、生類の世はじまって以来一台変事、ほとほと救ひ難し。ここにおいて竜神に命ぜらる。 ** 不知火: 誰が創り給ひし地の星ぞ。破れ墜つる空より見ればいまだ蒼き碧の宝珠とかや。 菩薩(尉): あいやそこまで。不知火がいまはの狂乱もつともなり。海底の世のこれまでありしは、陸に先がけてめぐり春秋の豊かなればにて、生類の幼命すべて、もとここより生ぜし。その幼命ら陸に揚りては、草木とも虫とも人の様にとも形を変じ、幾万替りもせし世の幻妙を、かの流星の光芒が写しとつてゆくらんか。やよこれ聞き候へ。不知火を恋路が浜に呼びとりしは、汝がかかげ来しみ灯りにて、生類のかくなり来たる行末をば、心恋しきものらに読みとらせよとの天の宣旨なればなり。姉弟、生類の命脈を浄めんとしてこれに殉ず。

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村上春樹

背筋をまっすぐのばして目を閉じると、風のにおいがした。まるで果実のようなふくらみを持った風だった。そこにはざらりとした果皮があり、果肉のぬめりがあり、種子のつぶだちがあった。果肉が空中で砕けると、種子はやわらかな散弾となって、僕の裸の腕にのめりこんだ。そしてそのあとに微かな痛みが残った。

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梨木香歩

 どのくらいそうして歩いたのか、気が付くと見覚えのある山道に出てきた。  すると、いきなりキツネの女がこちらを向いて、  ―――お帰りっ。 と、和尚に一喝した。和尚は、普段に似合わない、妙に卑屈は笑いを浮かべたかと思うと、あっという間に煙のように消えてしまい、近くの藪で大きな音がした。それこそキツネにつままれたような顔をしていると、  ―――あれはタヌキです。 と、キツネの女がすまして云った。私は気圧されておずおずと、  ―――お山の帰り、といっていたが。  ―――一乗寺の狸谷不動山のことです。寄り合いがあったのでしょう。  ―――私を化かそうとしたのか。  ―――少しからかうぐらいのつもりだったのでしょうが、ここまできて、もっと上手のものにバカされそうになったのです。  ―――それは・・・・・・  ―――竹の花。六十年に一回咲くという、竹の花が、今、山寺の周りで満開なのです。お気をつけなさいませ。

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Michiko Ishimure

There is a living spirit in every tree, in every weed, in every blade of glass. Fish and earthworms, all living beings are endowed with a soul which stays behind and enters a new life when they die. You can’t rely on God, on any god, when it comes to Minamata Disease. They say that God created the world and Man to be a living image of Himself. But has God also created Chisso Corporation and organic mercury? Is this bunch of murderers who poison innocent people a divine creation? Is this bunch of murderers who poison innocent people a divine creation? They say that if you die a natural … Continue reading

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後藤惣一

明治・大正・昭和と60年間にわたって子どもたちに童話を語り続けた久留島武彦。その活動は日本国内にとどまらず、世界各国にも赴いて見聞を広げ、それを基に多くの童話を創作しました。このお話もそうして生まれた作品の一つで、お隣の韓国が舞台になっています。 原作は『虎の子の大発見』と題され、武彦自らが自信作と認める作品を収録した『童話 久留島名話集』(昭和9年出版)に掲載されています。 ・・・ 武彦は、『童話 久留島名話集』の序文で次のように書いています。 「総じて『お話』の書物は、子供自身の手に渡して読ませるよりも、(中略)文を読んで聞かしめられる事が、お話の有つ徳性を最も好く徹底せしめる所以である事を知られたい」 すなわち、子どもに読ませるのではなく、大人が読み聞かせるほうが、お話の真意がよく伝わるというのです。活字を読むより言葉で聞くほうがわかりやすく、生き生きと内容が伝わってくることは、大人の方もご経験済みでしょう。 さて、この話の真意は、「人間がこわいのは、牙でも爪でもなく、知恵があるからだ」というところにあります。しかし原作者の思いを尊重し、お話の中ではあえて活字にしていません。読み聞かせが終わったら、ぜひ、お子さんと膝を交えて、楽しく語り合ってみてください。

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石牟礼道子

 松葉はたくさん集まったし、もうしばらくしたら、母親が、大きな女籠を天秤棒で荷って、松葉を採り集めに来るでしょう。今夜はあったかいお風呂が、松葉の煙に包まれて沸くのです。 「あのなあ、爺さま」 「うん、なんじゃ」 「赤ちゃんはみんな、海やら、川やらから、流れてくるちゅうのは、ほんと?」  爺さまは眩しげに瞬いて、しばらく黙っておりました。爺さまが片手をかけている竈小屋の壁の根元に、幼い椿の木がありました。固い蕾があちこちついていて、おちょぼ口をしたような蕾のまん中に、かすかな紅が、ちょんとついています。粉雪が、かわいい蕾のまわりに流れるように降っていて、厚いつやつやした葉っぱに当たっては、枯れ色をした草むらの中に吸いこまれてゆきます。 「ふう、海からなあ」  爺さまはとてもやさしい目つきになって、海の方へ顎をしゃくるようにしました。 「ほう、海も雪ぞ」  みっちんも、松の林のあいだから海の方を眺めました。今日は向こう縁の天草島は見えなくて、茫々としている灰色の空の奥には、いったい何があるのか、すっかり遠くなって見えません。 「そうじゃのう、ああいう海から、いのちちゅうのは、来たかもしれん」 「ひとりで?」 「ひとりじゃとも」 「赤子のとき?」 「うんと、うんと、赤子のときじゃ」 「舟に乗って?」 「舟に乗ってじゃ」 「川を流れて?」 「うん、川をも下るぞ」 「難儀なこっちゃなあ」  斧を杖にして立ったまんま、爺さまはのけぞるようにして、大笑いしました。 「この世に来るのは、おたがい、難儀なこっちゃ、大仕事じゃ」  爺さまはふっとまじめそうな顔になりました。 「みっちんや、お前も、よう来たのう、遠かところから」 「爺さまもなあ」 「おお、爺さまもなあ、そうじゃとも」

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かわさき市民アカデミー

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J. R. R. Tolkien

Farewell sweet earth and northern sky, for ever blest, since here did lie and here with lissom limbs did run beneath the Moon, beneath the Sun, Lúthien Tinuviel more fair than mortal tongue can tell. Though all to ruin fell the world and were dissolved and backward hurled unmade into the old abyss, yet were its making good, for this- the dusk, the dawn, the earth, the sea- that Lúthien for a time should be.

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Osacr Wilde

“Oh, your theories about life, your theories about love, your theories about pleasure. All your theories, in fact, Harry.” “Pleasure is the only thing worth having a theory about,” he answered in his slow melodious voice. “But I am afraid I cannot claim my theory as my own. It belongs to Nature, not to me. Pleasure is Nature’s test, her sign of approval. When we are happy, we are always good, but when we are good, we are not always happy.” “Ah! but what do you mean by good?” cried Basil Hallward. “Yes,” echoed Dorian, leaning back in his chair and looking at Lord Henry over the heavy clusters of … Continue reading

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藤沢周平

風は強いだけでなく、ぞっとするほどつめたかった。振りむいて空をみたさよは、思わず恐怖に襲われて声を立てるところだった。さよがこれから帰って行く新大橋の向う岸の町町は、日を浴びて白くかがやいているのに、あたけの北にひろがる町町の上の空は、見たこともない厚い鉛いろの雲に埋めつくされていた。そしてその一段低いところを、薄い黒雲が右に左に矢のように走り抜けているのだった。 あの橋さえわたってしまえば、と必死に走りながらさよは思った。だが橋にたどりつく一歩手前で、日が雲に隠れてあたりは夕方のように暗くなり、つづいて雷が光った。ほんの少し間を置いてからさよのまわりが一斉に固い音を立てはじめた。そしてそれはすぐに、耳がわんと鳴るほどの雨音をともなう豪雨になって、さよだけでない橋の上のひとびとに襲いかかってきた。 その雨の中に紫いろの光がひっきりなしに光り、雷鳴はずしずしと頭の上の空をゆるがした。「落ちたよ」と誰かが叫ぶ声がして、さよはおそろしさに足が竦むようだった。するとそのとき、びしょ濡れの身体に後ろから傘をさしかけた者がいた。

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須賀敦子

昼間の疲れに押し倒されるようにして、すこしとろとろとしたようだった。ふいにベッドからほうりだされるような、からだが、無数の小さな手にささえられて宙に浮いたような感覚にゆすぶられて目がさめた。鐘。近くの教会の鐘が、夜中のヴェネツィアにむかってなにかを声高に告げている。時計を見ると一二時だった。とはいっても、それは、鐘楼の時計が、ただ、昨日から今日への境目としての時間を告げる、というふうではなくて、二○○年まえのこの夜、輝かしい彼らの音楽史の一ページとして、はじめて自分たちの歌劇場をもつことになったヴェネツィア市民の狂喜の時間をここでもういちどかみしめているような、まるでうつつをぬかしたような鳴りかただった。そして、その鐘の音を、冬の夜、北国の森を駆けぬけるあらしのような拍手が追いかけた。建物の内側の拍手と外側の拍手が重なりあって、家々の壁に、塔に、またそれらのかげに隠れた幾百の運河に、しずかな谺をよびおこすのを、私はもうひとつの音楽会のように、白いシーツのなかでじっと目をとじて聴いていた。

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小沼丹

猿 / 喧嘩 / 小さな手袋 / 地蔵さん / コタロオとコヂロオ / 長距離電話 / 後家横丁 / 断片 / 井伏さんと将棋 / 複製の画 / 木山さんのこと / チエホフの本 / 古い本 / 庄野のこと / 障子に映る影 ** つくしんぼ / 或る日のこと / 狆の二日酔ひ / 蝙蝠傘 / 落し物 / 古い唄 / 道標 / 籤 / 帽子の話 / コップ敷 / 鰻屋 / 秋風 / 虫の声 / 焚火の中の顔 / 蕗の薹 / 窓 / 辛夷 / 赤蜻蛉 / 文鳥 / 泥鰌 / お玉杓子 / 巣箱 / 地蔵 / ぴぴ二世 / 鵯の花見 / 侘助の花 *** 町の踊り場 / 珈琲挽き / 古本市の本 / 盆栽 / 夏の記憶 / 標識燈 / 「塵紙」 / 追憶 / 幻の球場 / 酒のこと / 人違ひ / 小山さんの端書 / 松本先生 / 日夏先生 / … Continue reading

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田所周

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梶井基次郎

時どき私はそんな路を歩きながら、ふと、そこが京都ではなくて京都から何百里も離れた仙台とか長崎とか――そのような市へ今自分が来ているのだ――という錯覚を起こそうと努める。私は、できることなら京都から逃げ出して誰一人知らないような市へ行ってしまいたかった。第一に安静。がらんとした旅館の一室。清浄な蒲団。匂いのいい蚊帳と糊のよくきいた浴衣。そこで一月ほど何も思わず横になりたい。希わくはここがいつの間にかその市になっているのだったら。――錯覚がようやく成功しはじめると私はそれからそれへ想像の絵具を塗りつけてゆく。なんのことはない、私の錯覚と壊れかかった街との二重写しである。そして私はその中に現実の私自身を見失うのを楽しんだ。

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石牟礼道子

膝を病んで、傾き傾き、難儀して歩みおらいたで、あのとき吊り橋もたしか、戦さのために切りほどいてあったかもしれんよな。 わたいは頭陀袋を下げて先きに歩いて、子どものことじゃけん、まだ半分は眠いが一心で、くずり泣きしながら、 ぎしり、ぎしりと揺るる吊り橋を渡ってゆきおったが、うしろからかかさんの、 「負いずりの紐ば負い直すけん、渡ってしまえ。兄者殿の、落っちゃえらるけん」 そういわいた。 わたいが先に渡ってしもて、わっぱり吊り橋ちゅうは揺れておとろしかん、いくらなんでも目がさめて、ぶるんとふるうて振り返り申したのと、 かかさんの、 「ろくー-っ!」 とおめいて落っちゃえらるのと、谷の下ではげしい水の音がしたのと、いっしょで。

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Mary McCarthy

Maybe any action becomes cowardly once you stop to reason about it. ** Being abroad makes you conscious of the whole imitative side of human behavior. The ape in man.

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Jean Rhys

She was so lonely that she grew away from other people. That happens. It happened to me too but it was easier for me because I hardly remembered anything else. For her it was strange and frightening. And then she was so lovely. I used to think that every time she looked in the glass she must have hoped and pretended. I pretended too. Different things of course. You can pretend for a long time, but one day it all falls away and you are alone. We were alone in the most beautiful place in the world, it is not possible that there can be anywhere else so beautiful as … Continue reading

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石牟礼道子

「九十九万九千九百九十九の次は何か、いうてみろ」 と亀太郎がいう。手にあまる大きなお椀からおつゆをこぼしかけ、わたしはへきえきして呟く。 「百万」  数というものを覚えかけてみると、大人たちが面白がって、もちっと数えてみろ、もちっと数えてみろという。数えてゆくうちにひとつの予感につきあたる。たぶんこれはおしまいという事にならないのだと。どだいそのように初歩的な数ならべなどは、五、六十銭の日傭とり人夫の日常世界には無意味なのだけれども、親バカと焼酎の肴に思いつくのである。娘にすれば親のために答えてみせねばならなかったが、いったいいくつまで数えてみればおしまいということになるだろう。数というものは無限にあって、ごはんを食べる間も、寝てる間もどんどんふえて、喧嘩が済んでも、雨が降っても雪が降っても、祭がなくなっても、じぶんが死んでも、ずうっとおしまいになるということはないのではあるまいか。数というものは、人間の数より星の数よりどんどんふえて、死ぬということはないのではあるまいか。稚い娘はふいにベソをかく。数というものは、自分の後ろから無限にくっついてくる、バケモノではあるまいか。  一度かんじょをはじめたら最後、おたまじゃくしの卵の管のような数の卵が、じゅずつながりにぞろぞろびらびら、自分の頭の中から抜け出して、そのくねくねとつながる数をぞろ曳きながら、どこまでも「この世のおしまい」までゆかねばならぬ直感がする。わたしはすっかりおびえて熱を出す。

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Alexandre de la Patellière, Matthieu Delaporte

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La Voile

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Theodore Melfi

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鈴木織恵

歌人として定子の女房となった清少納言の作品『枕草子』には、華やかな宮廷生活と美しく聡明な定子の姿が描かれていますが、実は、この頃の定子は父の道隆が病没し、政治的に苦しい立場にありました。清少納言が、華やかな宮廷生活を『枕草子』に描き、漢詩を題材とした歌を詠んだ背景には、漢籍を好む一条天皇に、定子の美しさや聡明さをアピールすることで、一条天皇の寵愛を得ようする苦心がありました。なんとか定子は一条天皇の第一皇子を出産しますが、再び懐妊した時に、兄弟の伊周らが花山上皇との乱闘事件を起こして失脚してしまいます。定子は失意の中で皇女を出産して亡くなると、清少納言も宮中を退出しました。 一方、道長の娘の彰子は十二歳で一条天皇の中宮となりますが、入内して五年が過ぎても子どもが授かりませんでした。一刻でも早い皇子出生を願う道長は、一条天皇が彰子の元を足繁く訪れるようにと、和泉式部や赤染衛門などの有名な歌人を女房にし、豪華な調度品をそろえます。そのような中で道長の目に留まったのが、当時評判の『源氏物語』作者の紫式部でした。紫式部が彰子の元に出仕した当時、一条天皇は亡き定子を慕うばかりで、彰子にはなかなか子どもが授からない状況下にありました。彰子の女房たちはさぞや焦っていたに違いありません。つまり、紫式部が清少納言を非難する背景には、道隆の娘定子と道長の娘彰子の争い、そして道隆の息子伊周と道長、つまり甥と叔父との主導権争いがあったのです。その主導権争いに最終的に勝利し、「一の人」として政治の主導権を握ったのは藤原道長でした。

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anitube

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