黒羽夏彦

人道的介入には、以下の要件が必要とされる。

  1. 極度の人権侵害状況が見られること。
  2. 他の平和的手段を尽くした上で、最後の手段としての武力行使であること。
  3. 人権抑圧の停止が目的で、国益追求など他の政治目的を含めないこと。
  4. 状況の深刻さに比例した手段を取り、期間も最小限にすること。
  5. 相応の結果が期待できること。
  6. 国連安全保障理事会の承認があること。
  7. 個別の国よりも地域的国際機関が、地域的国際機関よりも国連が主導するものを優先させること。

国連憲章では武力不行使が原則とされるが、例外が二つある。第一に自衛権。第二に、国連自身が強制執行する際に武力行使も含まれる。ただし、現時点において国連軍は存在しないため、加盟国に委任する形で人道的介入は行なわれることになる。
とはいえ、人道的介入の原則が確立しているわけではない。歴史的にみても他の政治目的が絡む場合が大半で、純粋な人道目的はまれである。それこそ、ヒトラーはズデーテン地方併合に際してドイツ人が迫害されているという口実をもとにしたように、人道目的・平和目的を建前としつつ国益追求の戦争をふっかける可能性は常にある。教条的な平和主義はもちろん論外であるが、他方で武力介入はじめにありきの議論も避けなければならない。

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