昭和天皇

   手紙ありがたう しつかりした精神をもつて 元気で居ることを聞いて 喜んで居ます
   国家は多事であるが 私は丈夫で居るから安心してください 今度のような決心をしなければならない事情を早く話せばよかつたけれど 先生とあまりちがつたことをいうことになるので ひかへて居つたことを許してくれ 敗因について一言いわしてくれ
   我が国人が あまり皇国を信じ過ぎて 英米をあなどつたことである
   我が軍人は 精神に重きをおきすぎて 科学を忘れたことである
   明治天皇の時には 山県 大山 山本等の如き陸海軍の名将があつたが 今度の時は あたかも第一次世界大戦の独国の如く 軍人がバツコして大局を考へず 進を知つて 退くことを知らなかつたからです
   戦争をつづければ 三種神器を守ることも出来ず 国民をも殺さなければならなくなつたので 涙をのんで 国民の種をのこすべくつとめたのである
   穂積大夫は常識の高い人であるから わからない所があつたら きいてくれ
   寒くなるから 心体を大切に勉強なさい
   九月九日                                        父より
   明仁へ

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