>森住康二

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出店したものの、店はがらがら。2日かけて作ったスープを泣きながら捨て、2年目には資金が底をついた。深夜1人で厨房にこもり、怒りに涙があふれた。
 見かねた友人が、気分転換に東京ディズニーランドへ連れて行ってくれた。そこで見たミッキーマウスにはっとした。「彼の周りには家や車、飛行機、そしてミッキーを支える仲間たちがいる。しかし、僕には何ひとつない。ミッキーの幸せが、夢に向かって頑張った結果のように見えました」
結果を出せなかった自分を恥じ、人目もはばからず夢の国で号泣した。
 「ミッキーの件以来、『自分はすべてをやりきったか』ということを自問しました。すると、妥協していた部分が見えたんです」
使う食材を見直し、食材は心を込めて洗った。スープは、初心に戻ってていねいにダシを取った。次第に口コミで客足が増えると、週刊誌に紹介された。1年後には、行列の絶えない店になっていた。
 その後、「ちゃぶ屋」を東京・護国寺に移し、2006年にMISTをスタート。昨年はじめ、香港でもMISTを開店したところ、12月発売の香港版ミシュランで一つ星に選ばれた。
 「フレンチの人間にとってミシュランの星は格別。僕も15年前、両親に『ラーメンで星を取る』と宣言していたほど。これからも、ラーメンをさまざまな形で提供していきたい」

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