藤原帰一

平和っていうのはそんな観念よりも具体的な、目の前の戦争をどうするか、戦争になりそうな状況をどうするかって問題なんです。平和主義を守るか守らないかってことよりも、具体的な状況のなかで平和を作る模索が大事だって思ってます。

平和を唱えるのが理想主義で、戦争が現実なんだっていう二分法は、必ずしも正確じゃないんですよ。現実に向かうと戦争をする、現実から離れるとハト派になるって、そんなバカなことじゃない。現実の分析って言うのは、目の前の現象をていねいに見て、どんな手が打てるのかを考えることです。

現実の分析っていうのは、目の前の現象をていねいに見て、どんな手が打てるのかを考えることです。そのとき、すぐ兵隊を送るのは短絡的です。伝統的な外交というのは、武器を手段としながら、外交交渉、悪くいえばボス交渉と談合によって自分に有利な条件を獲得するってそういう取り引きでしょ。だけど、原則として平和を掲げて国際政治を見てきた人たちってのは、今度は国際関係の力の現実とかいうものにぶつかると、なんというか教条主義的な平和主義者、あるいは教条主義的な戦争主義者になっちゃうみたいです。いまの日本で起こっているのはそういう状況でしょう。だけどそれは事実に即していないんです。
平和って、理想とかなんとかじゃないんです。平和は青年の若々しい理想だとぼくは思わない。暴力でガツンとやればなんとかなるっていうのが若者の理想なんですよ。そして、そんな思い上がった過信じゃなく、汚い取り引きや談合を繰り返すことで保たれるのが平和。この方がみんなにとって結局いい結論になるんだよ、年若い君にとっては納得できないだろうかもっていう、打算に満ちた老人の知恵みたいなもんです。そういうことをね、伝えていきたいんです。

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