松尾芭蕉

花見の句のかかりを心得て、軽みをしたり

木のもとに汁も鱠も桜かな

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  1. shinichi Post author

    元禄3年の『ひさご』前後頃から、芭蕉は「かるみ」の域に到達したと考えられる。これは『三冊子』にて『ひさご』の発句

    木のもとに汁も鱠も桜かな (このもとに しるもなますも さくらかな)

    の解説で「花見の句のかかりを心得て、軽みをしたり」と述べている事から考えられている。「かるみ」の明確な定義を芭蕉は残しておらず、わずかに「高く心を悟りて俗に帰す」(『三冊子』)という言が残されている。試された解釈では、身近な日常の題材を、趣向作意を加えずに素直かつ平明に表すこと、和歌の伝統である「風雅」を平易なものへ変換し、日常の事柄を自由な領域で表すこととも言う。

    この「かるみ」を句にすると、表現は作意が顔を出さないよう平明でさりげなくならざるを得ない。しかし一つ間違えると俳諧を平俗的・通俗的そして低俗なものへ堕落させる恐れがある。芭蕉は、高い志を抱きつつ「俗」を用い、俳諧に詩美を作り出そうと創意工夫を重ね、その結実を理念の「かるみ」を掲げ、実践した人物である。

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