江田憲司

私は、アベノミクスは残念ながら、今年秋頃には頓挫すると見ています。政権発足以来、株価は上昇していますが、金融緩和も財政出動もあくまで一過性のカンフル剤にすぎません。ただ、その効果も切れかかっている。そこで、持続的な景気回復のための成長戦略が重要になってくるわけです。
成長戦略とはすなわち、規制改革の断行です。農業への株式会社の参入、発送電分離等の電力自由化、医療や介護、子育てへの民間活力の導入といった政策で、実体経済を動かしていく。しかし、こうした政策を実現させようと思えば、規制に守られた農協や電力会社、医師会、福祉団体などの抵抗を打ち砕かなければなりません。
ところが、これらの団体や企業はすべて自民党の有力な支持基盤です。衆院選や参院選では、「昔の名前で出ています」といった族議員がゾロゾロ復活しました。彼らの影響力が今、強まりつつあります。
安倍総理は規制改革に前向きな姿勢に映ります。官邸主導で霞が関の官僚も抑えているようにも見える。しかし、その実態は竜頭蛇尾。最初のアドバルーンは高く上げるのですが、族議員や官僚の抵抗に遭い、ことごとく骨抜きにされているのが現実です。

2 thoughts on “江田憲司

  1. shinichi Post author

    安倍改革をぶち壊す霞が関と族議員

    江田憲司

    文藝春秋2014年2月特大号

    http://gekkan.bunshun.jp/articles/-/950?page=3

     一つ具体例を挙げましょう。新聞各紙で大きく報じられた「コメの減反制度の廃止」。初めに話を聞いたときには、いよいよ本気で改革するつもりかと、私も期待していたのです。

     ところが、政府が農業の強化策をまとめた「農林水産業・地域の活力創造プラン」には、「減反廃止」という言葉はどこにもありませんでした。では一体どういう政策になったのか。

     二〇一四年度から、減反に参加する農家向けの補助金を半減させる代わりに、飼料用米などに転作した農家への補助金を最大で三割上積みすることになりました。この結果、農村の平均所得は一三%増になるそうです。

     結局、税金で賄う補助金が今より増える。しかも、農地を手放す兼業農家も減り、大規模化が進まない可能性が高い。これのどこが改革なのか。零細農家まで全部面倒を見るバラマキそのものです。これでは日本の農業は弱体化するばかりでしょう。

     もし減反を全面的に廃止すれば、コメの単価は下がります。一時的に農家の所得は減るかもしれない。しかし、日本のコメは安全だし、大変美味しい。例えば一俵一万五千円するコメが八千円まで下がれば、北京やシンガポールでも飛ぶように売れるでしょう。

     このように農業を輸出型の産業にしなければ、将来はないと思います。そのためには、農業の担い手に、若い人や、仕事をリタイアした中高年など新しい血を入れていくこと。そして減反廃止だけでなく、規制を緩和し、農業に新規参入を促進していくことです。株式会社の農地取得を可能にしたり、事実上、既存農家の協力を得なければ設立できない農業生産法人の要件(役員・出資制限など)を緩めて、市場志向型の農業へと転換していけばいい。

     そうした改革が進めば、農業はまだまだ成長できると思います。

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  2. shinichi Post author

    (sk)

    衆院選や参院選でゾロゾロ復活した『昔の名前で出ていますといった族議員』こそが、民意を反映しているのではないだろうか。

    こうあるべきという思い込みや思い上がりが、 “should” と “must” のオンパレードとなり、誰も望まない政策になる。

    こうあるべきというのを押し付けるのは、民主主義とはいわず、全体主義という。

    意見が合わないから同じ政党にはいられないといって、辞めたり、除名したり、どの党の人たちも、みんな心が狭すぎる。

    政策は一部の人たちが作って押し付けるものではなく、みんなの意見を反映してできるものだと、思い直したほうがいい。

    アメリカの共和党の「小さな政府」という政策をコピーするということは、アメリカの共和党が作り出すとんでもない格差を日本にも生み出そうということだとみんなが理解すれば、だれもそんな政党の候補者には投票しない。

    かわいそうだが、正義を掲げる政治家はいつも、集団を誤らせて終わる。

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