宮下直

はるか太古の地球には、細菌のように小さくて作りが単純な生き物しかいなかった。それが今では、数千万種ともいわれる多種多様な生き物が暮らしている。だが、生物は常に繁栄の連続だったわけではない。生命の誕生以来、5回の「大量絶滅」を経験してきた。その最大のものは、古生代の末期に起きた大量絶滅で、なんと90%以上の生物の種が絶滅したといわれている。古生代の海で大繁栄した三葉虫もその犠牲になった。恐竜を絶滅させた中生代末期の大量絶滅はそれよりも小規模で、70%程度の絶滅だったらしい。巨大隕石の衝突による地球環境の激変がその原因であるとされている。
そして現在は、第6の大量絶滅の時代といわれている。これは、他ならぬ私たち人間の種々の営みが原因である。こうした「生物多様性の危機」を、自然の摂理とみなして放置するのか、それとも人間の英知を集めて回避するのか、それはすべて私たちの生き方にかかっているし、生き方自体にも影響するに違いない。

One thought on “宮下直

  1. shinichi Post author

    第6の大量絶滅時代を救う知恵

    人と自然、生物多様性の時空,地球生態系

    工作舎web連載読み物

    by 宮下 直

    http://www.kousakusha.co.jp/planetalogue/p_index.html

    私たちが住んでいる地球は、生命に満ち溢れた世界である。しかし現在は、第6の大量絶滅の時代といわれている。多様な生命に満ち溢れる生態系が、どのような病状にあるのか、またその原因は何なのか、そしてその解決にはどのような人間の考え方が必要なのかを問う。

    現代は第6の大量絶滅の時代と言われている。1年間に4万種が地球上から姿を消しているという見積もりもある。最近、この数値はやや大げさであることがわかってきたが、それでも年間数千のオーダーで減少していることはおそらく間違いない。世界の森林面積が、わずか1分間に東京ドーム3個分という驚くべきスピードでなくなっている現状を考えれば、事態の深刻さを想像できるだろう。しかも、森林減少は、地球上でもっとも多くの生物種が棲む熱帯雨林で集中的に起こっているのである。

    一方、私たちが暮らす日本ではここ50年間、森林面積はほとんど変化していない。宅地の面積は緩やかに増えてはいるが、国土面積に占める割合からすれば微々たるものである。だから、土地利用の面からみれば楽観的に思えるかもしれないが、実はそうでもない。日本でもさまざまな生き物が減り続けている。とくに西洋文明の大波が押し寄せた明治期と、生活の豊かさを追い求めた高度経済成長期には、多くの種の絶滅や激減が起こった。古くは100年前に絶滅したニホンオオカミ、30年前に自然界からは姿を消したトキ、そして先ごろ絶滅宣言が出されたニホンカワウソは記憶に新しい。最近ではもっと身近な生き物も姿を消している。アカトンボやスズメといった普通種でさえ、ここ10年程の間でかなり減っているらしい。

    だが、ニホンカワウソが棲んでいた川や湖が消え去ったわけではないし、アカトンボやスズメの棲み家である水田が各地で急減しているわけでもない。100年前に絶滅したニホンオオカミについても、棲み家である森林はいまでも紀伊山地や中部山岳地帯に広大に残っている。日本をはじめとする温帯の国々で起きている生物の減少要因は、熱帯の森林伐採のように、誰が見ても明らかなものとは少し違うようだ。

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