2 thoughts on “松原隆一郎, 堀部安嗣

  1. shinichi Post author

    なぜ人は書庫を作ってまで本を持ちたがるのか

    by 西牟田靖

    http://www.dotbook.jp/magazine-k/2014/02/26/why_do_they_build_personal_libraries/

    杉並区の阿佐ヶ谷で用事を済ませた後、原付バイクを中野方面へ走らせているときのことだ。早稲田通り沿いに四角くてほとんど窓のない風変わりな建物を沿道に見つけた。今まで気がつかなかったのは阪急電車の客車に似た小豆色という落ち着いた色で全体が塗られているからなのかもしれない。

    建物が気になって、徐行したところ、その建物の前を掃き掃除している一人の男性をお見かけした。立ち姿の美しいガシッとした体形には見覚えがある。さっそく僕はその男性に話しかけた。

    「松原先生ですか」
    「あっ、西牟田くん。こんにちは。なんでこんなところにいるの」

    松原隆一郎さん。彼は東大大学院で社会経済学を教えている教授で、多数の著書を持っている。武道家としての一面を持っていたり、前衛ジャズに造詣が深かったりという多才な人だ。

    この連載の二回目でも、松原さんに蔵書の話をうかがったことがある。そのときは書庫建設が着工される直前の時期であった。その後、どうなったのか気になっていたが、無事に着工、そして竣工していたらしい。

    「たまたま通りがかったんです。おっしゃってた書庫、これなんですね」
    「今、時間ある? 中見ていく?」

    松原さんは掃除をやめ、書庫を案内してくれた。ドアを開けて中に入るとそこは別世界。中には丸い吹き抜けが上から下まで空いていた。書棚は吹き抜けのまわりの壁すべて。書棚から垂直に段違いでステップがせり出している。本棚とらせん階段は一体化していて、登ってみると絵巻物のように背表紙が展開し、登っているという実感や時間の概念が吹っ飛びそうになる。階段を登ったり降りたりしながら内壁と一体化した書棚の本を見ることができるのだ。これはすごい。

    「壁が書棚になっているというつくりはけっこうあるんです。だけど普通は四角。外側が台形で中が丸というのは珍しいんです」

    そう言って松原さんは静かに胸を張った。でもなんで中も四角にしたりとか、外も中も円形にしなかったのだろうか。床が抜けずたくさん本を置くためにはどのような工夫がなされているのだろうか。書庫という空間の居住性はどうなっているのだろうか。

    建物の構造ににわかに興味がわいた僕は、建築家が来るタイミングに合わせて、後日出直すことにして、松原さんの書庫を後にした。

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