神谷美恵子

キリスト教だけが真理を握っていると考える人々の狭量さは耐えがたいものだ。キリスト自身の排他性にその根がある。

私が「キリスト者」になれない理由は、イエスが三十歳の若さで自ら死におもむいたためだ。三十歳といえば心身ともに絶頂のとき。そのとき思う理想と、六十五歳ににして経験する病と老いに何年もくらすことは、何というちがいがあることだろう!!私はまだしもブッダのほうに、人生の栄華もその空しさも経験し老境ににまで至って考えたことのほうに惹かれる。

One thought on “神谷美恵子

  1. shinichi Post author

    神谷美恵子 聖なる声

    by 宮原安春

    この前後に、無教会主義、クエーカーという若い時代に傾倒したキリスト教から離れだし、仏教に近づきだしている。

    「キリスト教だけが真理を握っていると考える人々の狭量さは耐えがたいものだ。キリスト自身の排他性にその根がある」と四十歳代に書いていたことがもっと進んだ。

    「私が『キリスト者』になれない理由は、イエスが三十歳の若さで自ら死におもむいたためだ。三十歳といえば心身ともに絶頂のとき。そのとき思う理想と、六十五歳ににして経験する病と老いに何年もくらすことは、何というちがいがあることだろう!!私はまだしもブッダのほうに、人生の栄華もその空しさも経験し老境ににまで至って考えたことのほうに惹かれる」

    ここで『大乗仏典』や明恵上人、空海、良寛、貞心尼などを、体調のよいときに読んでいた。また、キリスト教、医学、精神科がからみあった加賀乙彦の『宣告』、辻邦夫の『春の戴冠』といった小説を読み、自ら書きたいという欲求、古くからのデーモンに内面をたぎらせていた。

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