>榊淳史

>「見てはいけない」という禁令を破る話は、たとえば、鶴女房などがある。西洋にも、禁令の話がある。比較してみると、西洋の場合は、禁令を破ってつらい思いをするが、しかし、そのあと、救い手(たとえば王子様)が現れて、結婚などで締めくくる、というパターンがあるのに対し、日本の場合は、禁令を出した本人が、悲しみのあまりにいなくなってしまう、そして、禁令を破ったものは、その場に取り残される、というパターン。
つまり、西洋の場合は、なんらかの結果(たとえば、結婚)があるのに対し、東洋の場合は、元の状態(たとえば、独身)に戻ってしまうのだ.このことを、西洋のある昔話研究者が「すべてを失った無の状態になる」といい、しかし、これを河合先生は禅にも通じる円環的全体性(終わりも始まりも包含している状態)と見て、東洋的な世界観である、と言っている。

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