田中宏幸

KayamaRikaここ数年、「自己責任」という言葉がよく使われるようになっています。誰かが、困難に直面していても、それはすべてその人のせい。こうした認識のもと、「だから、困っている人を助ける必要はない」という「強者の論理」が導かれることとなります。こうした考えは、現代社会の動きを象徴しているのでしょう。現実に目を向ければ、福祉は次々と削られ、不安定雇用の増大によって、働いてもまともに生活できない人も目だってきています。そして、弱い立場の人間が、政府など権力者に楯突くと、中傷や個人攻撃などバッシングの嵐……。
そうした「自己責任」の考えが広がる中で、ストレスや息苦しさ、精神的な苦痛を抱えている人も少なくありません。しかし、その辛さは、本当に自分自身のせいなのでしょうか、と香山さんは問いかけます。すなわち、その「悩み」は本当に自己責任なのか、と。自分自身が変われば、その「悩み」は解消されるのか、と。

One thought on “田中宏幸

  1. shinichi Post author

    「悩み」の正体

    by 香山リカ

    http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn0703/sin_k346.html

    いまどきの「悩み」と向き合い、ココロを解きほぐす

     精神科医としての臨床経験を活かし、現代人の心の問題をはじめ、様々な社会問題を鋭く考察しつづけている香山リカさんの新刊です。香山さんは、一昨年、岩波新書より『いまどきの「常識」』を刊行しました。「反戦・平和は野暮」「お金は万能」など、日本社会に広がりつつある、新たな「常識」を取り上げ、それらが人々に受け入れられつつある背景、その問題性などを鋭く考察しました。同書は、出版されるや大きな反響を呼び、現在も多くの読者に読まれています。その香山さんが、今回は、現代人の「悩み」に向き合います。

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     本書では、「場の空気が読めなかったらどうしよう」「働いても生活できない」「まじめに生きてきて損をした」など、現代人ならではの「悩み」を30ほど取り上げ、その「悩み」が生じる背景や原因を探ります。そうすることで、そうした「悩み」が、けっして「自己責任」などではないことが明らかになることでしょう。疲れた心を解きほぐすためにも、まずは「悩み」の正体を見極めることからはじめてみては、いかがでしょうか。

    (新書編集部 田中宏幸)

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