石牟礼道子

ああ
このような雪夜じゃれば
ひょっとして
ここらあたりの原っぱの
赤いひがん花の
花あかりのもとで
身づくろいしておった
あの
しろい狐御前の子に
また生まれ替わるのかもしれん

いまはまだ
けやきの大樹の根元にいて
天の梢から降ってくる雪にうたれながら
みえない繊い糸を
くわえ くわえ
うなじを反らしているばかり

手も無か
足も 無か
目も無か
めめんちょろの
野蚕さんになっておって
這うて漂浪くのが
役目で
ございます

4 thoughts on “石牟礼道子

  1. shinichi Post author

    1973年・1974年に、詩画集『彼岸花』(版画:秀島由己男)が南天子画廊より刊行されている。

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