「他人事」「たにんごと」という表記(書き方)と言い方・読み方は、どちらも放送では原則として用いないことにしています。「自分に関係ないこと」などを意味する場合の伝統的な言い方は「ひとごと(人事)」[ヒトゴト]とされ、放送でもこの語法を採っています。表記は、「ひと事」または「ひとごと」です。 ×「他人事」「たにんごと」
「他人事」「たにんごと」という表記(書き方)と言い方・読み方は、どちらも放送では原則として用いないことにしています。「自分に関係ないこと」などを意味する場合の伝統的な言い方は「ひとごと(人事)」[ヒトゴト]とされ、放送でもこの語法を採っています。表記は、「ひと事」または「ひとごと」です。 ×「他人事」「たにんごと」
「ひとごと(人事)」と「たにんごと(他人事)」
by 豊島秀雄
NHK放送文化研究所
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/152.html
Q: 「他人」に「事」と書く「他人事」について、「ひとごと」と「たにんごと」という二とおりの読み方・言い方を耳にします。放送での読み方などは、どうなっているのでしょうか。
A: まず、「他人事」「たにんごと」という表記(書き方)と言い方・読み方は、どちらも放送では原則として用いないことにしています。「自分に関係ないこと」などを意味する場合の伝統的な言い方は「ひとごと(人事)」[ヒトゴト]とされ、放送でもこの語法を採っています。表記は、「ひと事」または「ひとごと」です。 ×「他人事」「たにんごと」
解説
ご指摘の「他人事」という用語は、近年「ひとごと」に加えて「たにんごと」という読みで使われることも多く、むしろ最近では一般に後者のほうを耳にすることが多いようです。しかし、「自分には関係ないこと」「自分には利害関係のない他人(たにん)のこと」などを意味する場合の伝統的な語・ことばは「人事(ひとごと)」[ヒトゴト]とされ、多くの国語辞書が【ひとごと】「人事」を採っています。また、これについて国内の主な新聞社や通信社も、「ひとごと」または「人ごと」の表記(表現)を認めているだけで、「たにんごと」「他人事」については認めていません。このような状況の中で、NHKでも平成12年(2000年)2月に放送用語委員会でこの件について改めて審議しました。その結果、「タニンゴトということばは誤読から発生したもので、原則として使わない」ことにし、従来通り「表記は○ひと事 ×他人事 読みは○ヒトゴト ×タニンゴト」と決めています。
この用語委員会の決定の理由や戦前の国語辞書を含めた辞書調査などによりますと、「他人事」「たにんごと」ということばが生まれた背景については、次のようなことが考えられます。
《もともと「他人(たにん)のこと」を意味する語・ことばには「ひとごと」という言い方しかなく、この語に戦前の辞書は「人事」という漢字を主にあてていた。ところが「人事」は「じんじ」と区別できないので「他人事」という書き方が支持されるようになり、これを誤って読んだものが「たにんごと」である。》
上記の背景を指摘したうえで、用語委員会は決定の理由を「このような背景から考えると、いたずらに類義語を増やすものとしても、このことばの使用は勧められない」と結んでいます。 なお、「他人」を「ひと」と読むのは表外音訓(常用漢字表にない読み)です。
(『NHK日本語発音アクセント辞典』P766、『NHK新用字用語辞典 第3版』P471、『NHKことばのハンドブック第2版』P172参照)
電子計算機は「コンピュータ」「コンピューター」? 他
by 豊島秀雄
NHK放送文化研究所
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/110.html
Q: 以前から気になっていることですが、電子計算機について、「コンピュータ」と「コンピューター」の両方の書き方を見ます。放送での決まりはあるのでしょうか。
A: 「コンピューター」と長音符号をつけてのばしています。
解説
「computer」について電子機器業界など専門分野では、確かに「コンピュータ」というように語末に長音符号をつけない場合が多く、『学術用語集』(電気工学編)でも「コンピュータ」と表記しています。しかし、外来語には特に英語には、「computer」をはじめ「elevator」「calendar」のように「-er」「-or」「-ar」などで終わる単語が多く、カタカナにする場合その大部分は一般には長音符号「ー」をつけて書く傾向があり慣用化しています。このため、放送での表記・書き方は「コンピューター」とし、読む時も語尾をのばしています。国内の主な新聞社や放送局も同じ表記をしています。
また、語末が「-y」で終わる「party」や「authority」も、「パーティー」「オーソリティー」のように原則として長音符号を用いて書いています。
<例外>
Kennedy ケネディ(人名)
このほか、外来語の長音符号の表記についてはNHKでは次のような放送上の細 則(決まり)を設けています。
(1)原語の二重母音[ei][ou]などは、原則として「ー」を用いて書く。
<例>
ゲーム:game メール:mail レート:rate
ボート:boat ホーム:home ローン:loan
<例外>
エイト:eight ペイ:pay レイアウト:layout
フェイルセーフ:fail-safe ケインズ:Keynes(人名)
サラダボウル:salad bowl ボウリング:bowling
(2)慣用により長音符号の代わりに母音字を添えて書くものがある。
<例>
バレエ:ballet(フランス語,×バレー)
「排球」はバレーボール
ミイラ:mirra(ポルトガル語,×ミーラ)
(『ことばのハンドブック』P212~213参照)