橘玲

性市場では、多数の若い男性と若い女性が互いに性的パートナーを得ようと複雑なゲームを行っている。保守的な社会では、大半の女性が婚前交渉を拒むから、男性が(売春以外で)セックスを手に入れるためには、結婚によって生涯にわたる経済的援助を約束しなければならない。いうまでもなく、これは男性にとってきわめてハイコストな取引だ。
このとき、あるタイプの女性が避妊を条件にカジュアルセックスを受け入れるようになったとしよう。これは一部の商店が(ほとんど)同じ商品を格安で販売するのと同じだから、“消費者”はこぞってこの女性に殺到するはずだ。
そして、この「受け入れてくれる(やらせてくれる)」女の子はまちがいなくモテるのだ。
そうなると、道徳的な女の子(とても多い)はカレシ獲得競争できわめて不利な立場に置かれることになる。好きな男の子がいても、セックスを拒んでいると、カレは「やらせてくれる」女の子のところに行ってしまうのだ。
ユニクロの登場でフリースやジーンズなどカジュアルウェアの価格が大きく下落したように、一部の女の子がカジュアルセックスを楽しむようになると、それにひきずられて性市場における女の子のセックスの価格も下落してしまう。このようにして、保守的で道徳的な社会であっても、多くの女の子が婚前交渉に応じざるを得なくなる。
研究者の推計(マリナ・アドジェイドによる)では、2002年に性体験をもった未婚のティーンエイジャー(13歳~19歳)のうち、「ピルで避妊できる」との理由でセックスした割合は1%に満たない。
このごくわずかな女性が、性市場での男の子と女の子の「ゲーム」のルールに大きな変化をもたらし、コンドームなしのセックスを拒否できない女の子を激増させることにつながっているという。

One thought on “橘玲

  1. shinichi Post author

    言ってはいけない
    残酷すぎる真実

    by 橘玲

    この社会にはきれいごとがあふれている。人間は平等で、努力は報われ、見た目は大した問題ではない――だが、それらは絵空事だ。往々にして、努力は遺伝に勝てない。知能や学歴、年収、犯罪癖も例外でなく、美人とブスの「美貌格差」は約三六〇〇万円だ。子育てや教育はほぼ徒労に終わる。

    I 努力は遺伝に勝てないのか

    【1】遺伝にまつわる語られざるタブー
    馬鹿は遺伝なのか/依存症・精神病は遺伝するのか/犯罪は遺伝するのか
    〔コラム1〕遺伝率
    〔コラム2〕遺伝と犯罪

    【2】「頭がよくなる」とはどういうことか――知能のタブー
    親の収入と子どもの学歴の関係は/人種とIQについてのタブー/差別のない平等社会をつくれないワケ/「知能格差」の真因とは
    〔コラム3〕ユダヤ人はなぜ知能が高いのか
    〔コラム4〕アジア系の知能と遺伝

    【3】知識社会で勝ち抜く人、最貧困層に堕ちる人
    経済格差の根源は何か/超高学歴でエリート主義のスノッブたち/強欲な1%と善良で貧しい99%/日本社会に潜む「最貧困層」

    【4】進化がもたらす、残酷なレイプは防げるか
    犯罪は「凶暴な男」の問題/進化のために赤ん坊が殺される/妻殺しやレイプを誘発する残酷な真実/オランウータンもレイプする/夫婦間のレイプはなぜ起こるのか?
    〔コラム5〕実の親と義理の親の子殺し
    〔コラム6〕家庭内殺人と血縁

    【5】反社会的人間はどのように生まれるか
    こころを支配するもの/心拍数と反社会的行動の因果関係/犯罪者になる子ども、実業家になる子ども/「発汗しない子ども」は良心を学習できない/「賢いサイコパス」と「愚かなサイコパス」/少年犯罪者や異常性欲者への驚愕の治療法/脳科学による犯罪者早期発見システム/子どもの選別と親の免許制/非科学的な人権侵害よりも脳科学による監視社会を
    〔コラム7〕犯罪と妊婦の喫煙・飲酒

    II あまりに残酷な「美貌格差」

    【6】「見た目」で人生は決まる――容貌のタブー
    写真から性格や未来がわかる/外見から知性は推測できる/「最初の直感」の的中率/「面長の顔」は「幅の広い顔」に殺されている/顔立ちによる残酷すぎる損得

    【7】あまりに残酷な「美貌格差」
    美人とブスでは経済格差は3600万円/「美貌格差」最大の被害者とは/会社の業績を上げる経営者の顔とは/容姿による差別を生む市場原理

    【8】男女平等が妨げる「女性の幸福」について
    「男と女は生まれながらにしてちがっている」/男と女は別々のものを見ている/「男らしさ」「女らしさ」の正体とは/「母性愛」のもと、オキシトシン/男女でちがう「幸福の優先順位」
    〔コラム8〕女子校ではなぜ望まない妊娠が少ないのか

    【9】結婚相手選びとセックスにおける残酷な現実
    一夫多妻と一夫一妻はどちらが得か/メスの狡猾な性戦略/避妊法の普及が望まない妊娠を激増させる/低学歴の独身女性があぶれる理由

    【10】女性はなぜエクスタシーで叫ぶのか?
    ヒトの本性は一夫一妻?/睾丸とペニスの秘密/女性の性衝動は弱いのか?/チンパンジーとボノボ/農耕社会がすべてを変えた?/女性がエクスタシーで叫ぶ理由/フリーセックスのユートピアは遠い

    III 子育てや教育は子どもの成長に関係ない

    【11】わたしはどのように「わたし」になるのか
    双生児の奇妙な類似/「高貴な血」と「穢れた血」/遺伝するもの、しないもの/「こころの遺伝」の明暗

    【12】親子の語られざる真実
    「氏が半分、育ちが半分」の真偽/言語・宗教・味覚にまつわる遺伝の真相/子どもはなぜ親のいうことをきかないのか

    【13】「遺伝子と環境」が引き起こす残酷な真実
    同じ遺伝子でもちがう性格になるケース/「選抜された22人の少年たち」の実験/黒人少年が生き延びるたったひとつの方法/英才教育のムダと「バカでかわいい女」


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