平家物語

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。
遠くの異朝をとぶらへば、秦の趙高、漢の王莽、梁の朱忌、唐の禄山、これらは皆、旧主先皇の政にも従はず、楽しみを極め、諫めをも思ひ入れず、天下の乱れんことを悟らずして、民間の愁ふるところを知らざつしかば、久しからずして、亡じにし者どもなり。
近く本朝をうかがふに、承平の将門、天慶の純友、康和の義親、平治の信頼、これらはおごれる心もたけきことも、皆とりどりにこそありしかども、間近くは六波羅の入道前太政大臣平朝臣清盛公と申しし人のありさま、伝え承るこそ、心も詞も及ばれね。

3 thoughts on “平家物語

  1. shinichi Post author

    平家物語

    作者未詳だが、「覚明(源義仲の右筆)や中原信康(源義経の右筆)が書いた合戦記がまとめられて平家物語になった」と考えている人が多い。

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  2. shinichi Post author

    祇園精舎は、インドのコーサラ国首都シュラーヴァスティー、現ウッタル・プラデーシュ州シュラーヴァスティー県にあった寺院である。釈迦が説法を行った場所であり、天竺五精舎の1つである。

    沙羅は、フタバガキ科Shorea属の常緑高木。シャラソウジュ、サラノキ、シャラノキともいう。二本並んだ沙羅の木の下で釈尊が入滅したことから、沙羅は沙羅双樹とも呼ばれる。

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