薄井滋

usui木を削って作るパーシモンヘッドの容積は185cc程度です。高品質のパーシモン材は乱伐などで供給不足となり、合板、樹脂、金属などの代替え素材が試行・販売されました。アメリカのテーラーメード社の製品によってスチール製のウッド型クラブが普及する1985年ごろはその容積、重量ともほとんど木製と変わらず、当時の技術では200cc以上を実現するのが困難でした。1990年に日本のミズノがチタン製ヘッドを世界初に製品化(Ti-110=206cc)します。チタンという比重が軽く、硬度が高い素材を生かしてヘッドの大容積化が加速します。1993年に250cc、1997年に300cc、2000年には400ccを突破します。500cc、1000ccのクラブが試作されるようになり、規制(ヘッドの容量は460ccを上限とする)が実施されました。現在は制限された容積の中で、各社が多岐にわたる性能と性格付けを競い合っています。

2 thoughts on “薄井滋

  1. shinichi Post author

    ドライバーの変遷

    by 薄井滋

    http://www.voice-of-design.com/vod/VOICE13-3.pdf

    「易しい」「飛ぶ」「許す」
    メーカーの戦略商品としての「ドライバー」は当然、よりユーザーに魅力ある製品に優位性があります。残念なことに(私も含めて)顧客の大多数は「下手クソ」ですからいつもきちんと同じ「最適打点」とされる領域に球を当てることができません。常に「易しい」、良く「飛ぶ」さらに失敗を「許す」、これらが新製品のキャッチフレーズとなります。そのためヘッドそのものを大きくする流れを生み出します。

    1)易しい・大容積化の流れ
    木を削って作るパーシモンヘッドの容積は185cc程度です。高品質のパーシモン材は乱伐などで供給不足となり、合板、樹脂、金属などの代替え素材が試行・販売されました。アメリカのテーラーメード社の製品によってスチール製のウッド型クラブが普及する1985年ごろはその容積、重量ともほとんど木製と変わらず、当時の技術では200cc以上を実現するのが困難でした(Fig.3)。1990年に日本のミズノがチタン製ヘッドを世界初に製品化(Ti-110=206cc)します。チタンという比重が軽く、硬度が高い素材を生かしてヘッドの大容積化が加速します。1993年に250cc、1997年に300cc、2000年には400ccを突破します。500cc、1000ccのクラブが試作されるようになり、規制(付属規則II-4B:ヘッドの容量は460ccを上限とする)が実施されました。現在は制限された容積の中で、各社が多岐にわたる性能と性格付けを競い合っています。

    2)飛ぶ・高反発化の流れ
    パーシモンヘッドは自然素材なので当然個体差があり、木材そのものの素性、堅さなどで善し悪しをいいました。通常クラブの保護と反発を求めて「フェースインサート(Fig.4)」という、樹脂や紙を圧縮した素材などを球の当たる部分に装着しました。
    素材がスチール製からチタン製になると、強度や弾力性で有利なので大型化とあわせて軽量化も進みます。また、金属素材の薄肉化の技術も進歩して、打撃面のスプリング効果で飛距離をのばすことも宣伝されました。テニス選手に話を聞くと「ガットは緩い方が球が飛ぶ」との説明で、ゴルフでもインパクト時にフェースを変形させて、ボール側の変形ロスを少なくして飛距離をのばそうという考えです。日本では「高反発」と称されてここ3~4年広く使われました。2008年1月施行の規則改訂で、一定以上の反発係数を超えた数値のヘッドは不適合となりました(付属規則II-4Ci)。現在市場では規制値ぎりぎりの性能を各社が謳っています。

    3)許す・慣性モーメントの増大
    インパクト時に最適打点を外すと、クラブヘッドはブレてフェースが動き、ボールにまっすぐでない回転を与えます。ヘッドそのものの進行速度も減少してしまいます。「曲がって、飛ばなくなる」訳です。悪影響を少なくする工夫が失敗を許すことにつながります。そこで、ヘッドの重心点からなるべく離れた部分を重くするようにして、ブレ難い、動きの鈍いクラブを作ります。ヘッドのブレの大きさに関係するのが慣性モーメント(MOI)の値で、これも規則で上限が規定されました。パーシモンでは不可能だった、ヘッドの内部のデザインで、素材加工技術や設計コンセプトなど進歩がこれからも大いに期待される部分です。

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