山岡淳一郎

大震災は、社会の底に沈んで見えなかった矛盾を浮かび上がらせる。「空気」のように感じていた制度を具体的に生活の場面に押し出してくる。私たちが暮らす、この国の実相は危急存亡の危機によって「可視化」される、といってもいいだろう。
東日本大震災で、露わになった権力機構の弱点のひとつが「情報共有力の無さ」だ。大規模な原発災害を引き起こした以上、大本営発表式の発信ではなく、正確で質の高い情報を、いかに被災者、周辺地域、非被災地の国民、さらに国際社会と「共有」するかが問われる。「5W1H」で、いま福島原発で何が起きていて、それに誰がどう対応しているのか、悪い方向へ転じたら、どんな危険があるのかといったメッセージを国際機関と連携して公表することが求められる。上意下達の発信ではなく、「共有」が重要になってくる。
ところが、文部科学省の「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」のデータが公表されたのは震災発生から2週間近く経過してからだった。

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