shinichi Post author30/10/2017 at 10:56 pm 和泉式部 http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/izumi.html つれづれと空ぞ見らるる思ふ人あまくだりこむものならなくに 夕暮に物思ふことはまさるやと我ならざらむ人にとはばや 黒髪のみだれもしらずうちふせばまづかきやりし人ぞ恋しき 世の中に恋といふ色はなけれどもふかく身にしむものにぞありける 涙川おなじ身よりはながるれど恋をば消たぬものにぞありける いたづらに身をぞ捨てつる人をおもふ心やふかき谷となるらむ 逢ふことを息の緒にする身にしあれば絶ゆるもいかが悲しと思はぬ 絶え果てば絶え果てぬべし玉の緒に君ならむとは思ひかけきや 君恋ふる心は千々にくだくれどひとつも失せぬものにぞありける かく恋ひばたへず死ぬべしよそに見し人こそおのが命なりけれ 人の身も恋にはかへつ夏虫のあらはに燃ゆと見えぬばかりぞ 人はゆき霧はまがきに立ちとまりさも中空にながめつるかな ともかくも言はばなべてになりぬべし音になきてこそ見せまほしけれ 見し人に忘られてふる袖にこそ身を知る雨はいつもをやまね 枕だに知らねば言はじ見しままに君語るなよ春の夜の夢 白露も夢もこの世もまぼろしもたとへて言へば久しかりけり かをる香によそふるよりはほととぎす聞かばやおなじ声やしたると ながむらん空をだに見ず七夕にあまるばかりの我が身と思へば 待つとてもかばかりこそはあらましか思ひもかけぬ秋の夕暮 秋風はけしき吹くだに悲しきにかきくもる日は言ふかたぞなき まどろまであはれ幾日になりぬらむただ雁がねを聞くわざにして 惜しまるる涙にかげはとまらなむ心も知らず秋はゆくとも 霜がれは侘しかりけり秋風の吹くには荻のおとづれもしき 君は君われはわれとも隔てねばこころごころにあらむものかは 絶えしころ絶えねと思ひし玉の緒の君によりまた惜しまるるかな おぼめくな誰ともなくて宵々に夢に見えけむ我ぞその人 いとどしく物ぞかなしきさだめなき君はわが身のかぎりと思ふに わが魂のかよふばかりの道もがなまどはむほどに君をだに見む 今宵さへあらばかくこそ思ほえめ今日暮れぬまの命ともがな おのが身のおのが心にかなはぬを思はば物は思ひ知りなむ 津の国のこやとも人を言ふべきにひまこそなけれ葦の八重葺き なにごとも心にこめて忍ぶるをいかで涙のまづ知りぬらむ 身の憂さも人のつらさも知りぬるをこは誰が誰を恋ふるなるらむ とことはにあはれあはれはつくすとも心にかなふものか命は 半天にひとり有明の月を見てのこるくまなく身をぞ知りぬる なきながす涙に堪へで絶えぬれば縹の帯の心地こそすれ 物おもへば沢の蛍も我が身よりあくがれいづる魂かとぞみる 人知れず物思ふことはならひにき花に別れぬ春しなければ あらざらむこの世のほかの思ひいでに今ひとたびの逢ふこともがな Reply ↓
和泉式部
http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/izumi.html
つれづれと空ぞ見らるる思ふ人あまくだりこむものならなくに
夕暮に物思ふことはまさるやと我ならざらむ人にとはばや
黒髪のみだれもしらずうちふせばまづかきやりし人ぞ恋しき
世の中に恋といふ色はなけれどもふかく身にしむものにぞありける
涙川おなじ身よりはながるれど恋をば消たぬものにぞありける
いたづらに身をぞ捨てつる人をおもふ心やふかき谷となるらむ
逢ふことを息の緒にする身にしあれば絶ゆるもいかが悲しと思はぬ
絶え果てば絶え果てぬべし玉の緒に君ならむとは思ひかけきや
君恋ふる心は千々にくだくれどひとつも失せぬものにぞありける
かく恋ひばたへず死ぬべしよそに見し人こそおのが命なりけれ
人の身も恋にはかへつ夏虫のあらはに燃ゆと見えぬばかりぞ
人はゆき霧はまがきに立ちとまりさも中空にながめつるかな
ともかくも言はばなべてになりぬべし音になきてこそ見せまほしけれ
見し人に忘られてふる袖にこそ身を知る雨はいつもをやまね
枕だに知らねば言はじ見しままに君語るなよ春の夜の夢
白露も夢もこの世もまぼろしもたとへて言へば久しかりけり
かをる香によそふるよりはほととぎす聞かばやおなじ声やしたると
ながむらん空をだに見ず七夕にあまるばかりの我が身と思へば
待つとてもかばかりこそはあらましか思ひもかけぬ秋の夕暮
秋風はけしき吹くだに悲しきにかきくもる日は言ふかたぞなき
まどろまであはれ幾日になりぬらむただ雁がねを聞くわざにして
惜しまるる涙にかげはとまらなむ心も知らず秋はゆくとも
霜がれは侘しかりけり秋風の吹くには荻のおとづれもしき
君は君われはわれとも隔てねばこころごころにあらむものかは
絶えしころ絶えねと思ひし玉の緒の君によりまた惜しまるるかな
おぼめくな誰ともなくて宵々に夢に見えけむ我ぞその人
いとどしく物ぞかなしきさだめなき君はわが身のかぎりと思ふに
わが魂のかよふばかりの道もがなまどはむほどに君をだに見む
今宵さへあらばかくこそ思ほえめ今日暮れぬまの命ともがな
おのが身のおのが心にかなはぬを思はば物は思ひ知りなむ
津の国のこやとも人を言ふべきにひまこそなけれ葦の八重葺き
なにごとも心にこめて忍ぶるをいかで涙のまづ知りぬらむ
身の憂さも人のつらさも知りぬるをこは誰が誰を恋ふるなるらむ
とことはにあはれあはれはつくすとも心にかなふものか命は
半天にひとり有明の月を見てのこるくまなく身をぞ知りぬる
なきながす涙に堪へで絶えぬれば縹の帯の心地こそすれ
物おもへば沢の蛍も我が身よりあくがれいづる魂かとぞみる
人知れず物思ふことはならひにき花に別れぬ春しなければ
あらざらむこの世のほかの思ひいでに今ひとたびの逢ふこともがな