白井さゆり

今の金融市場はいびつです。3カ月先しか見ていない海外のヘッジファンドが円安を見込んで円を売るポジションをとり、いつでも売り逃げできるような期間の短い国債や株に投資している。そういった短期筋のヘッジファンドは儲けることだけが目的なので責められませんが、日本経済のことはよく知りません。でも彼らがいつも最初に動き、市場を牛耳っているのです。

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2 Responses to 白井さゆり

  1. shinichi says:

    白井さゆり氏が警鐘 今年半ばまでに金融政策正常化すべき

    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/221036

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    東京五輪後の日本経済

    by 白井さゆり

  2. shinichi says:

    世界の年金基金など、長期投資の人たちも日本市場に入ってきていますが、ヘッジファンドと違って日銀に対し、「大きな歪みをもたらす政策はダメ」と、批判的な見方も多いです。中央銀行が10年の長期金利まで0・1%に低く抑えるというのは異常だと私にはっきり言う人もいます。彼らは企業をきちんと分析して投資しています。安倍政権は、長期投資の人たちをもっと見る必要があります。

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    私は、今年の半ばくらいまでに金融政策を正常化したほうがよいと思っています。今年3月ごろまでは1・6%以上の経済成長が続く見通しです。米国の大型減税が実施されると、日銀が現状維持ならば日米の金利差はさらに開く。ますます円安が進み、日本株はさらに上昇するでしょう。18年は世界の好景気も続きます。しかし、19年以降は欧米が減速局面に入り、日本も2020東京五輪に向けた特需が一服し、減速の兆しが出てくる。東京五輪後の経済は厳しくなるので、再び緩和できる余地を残しておくためにも、今のうちに正常化しておくべきなのです。

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    企業収益が今、すごく好調で、日本株が一段と高くなっている。もはや日銀が支える必要はありません。ところが、圧倒的な影響力がある短期筋は日銀の金融緩和がこのまま続くと信じているから、正常化に動いたら、逆に円高・株安になる。日銀はそれが怖くて動けない。しかし、いつかは資産の買い入れをやめなければならない。まずは、それに向けて買い入れ額を着実に減らしておく必要がある。そのタイミングは今を逃すとない。

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    ECB(欧州中央銀行)は日銀とは状況が大きく異なります。欧州では市場が正常化を織り込んでいるから、サプライズなく正常化できている。ECBも一昨年までは「物価上昇率2%をしっかり達成する道筋を見極めるまで、緩和を続ける」と言っていた。しかし、投資家がみなドイツ国債を欲しがるので、ECBが買える分が不足した。副作用への批判も強まり、2%の達成は見えないけれど、「ここまで好景気で、成長しているのならもういいね」ということで、市場も納得している。

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    日銀の公表文は国債買い入れを「年間80兆円メド」としていますが、現状はならすと50兆円程度に減らしている。長期金利が下がりすぎてマイナスにならないよう抑えているからなのですが、言っていることとやっていることが違うので、市場参加者の見立ては、「これ以上の緩和は無理だから2019年ぐらいには正常化に入る」と「緩和は続くし、さらに緩和するだろう」の両極端に分かれる。曖昧な言い方と曖昧な政策を続けることがいいことなのかどうか、と思います。

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    東京五輪後の日本では、再雇用の団塊世代が本格的に退職します。加えて、慢性的な人手不足で、経済活動が抑制される。これを私は「成長制約」と呼んでいます。そうなれば、日銀には緩和を続けてほしいとの声が強まり永遠に出口にたどり着けなくなってしまうと危惧しています。

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    本来、金融緩和というのは長く続けられないので、景気後退局面にやるもの。逆に、今のような景気のいい時にはやめるものです。金融緩和時にはセットで構造改革をし、その際、規制緩和によって既得権を失う人も多いけれど、そういう人たちの苦しみも金融緩和によって軽減できる。短期間だからこその政策なのです。ところが、緩和を長くやりすぎて当たり前になって、改革の意欲がなくなっているのが現状。本末転倒しています。

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    78円という円高は、異常で、米国が大規模緩和をする中、日銀は何の手も打てないのかと世間から猛批判されただけでなく、世界の中央銀行からも批判された。あの時は、やれる方法は全て導入してみる必要がありました。結果的に、消費を過熱してインフレを起こしたり、実質賃金を増やしたりする好循環は起きなかったけれど、超円高・株安は是正され、企業収益や外国人旅行者の増加に貢献しました。やってみなければ分からなかったし、それをやらないで済んだのか、というのが正直な気持ちです。だから、私も賛成したのです。

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    せめて2017年に買い入れ資産をもっと減らしておくべきでした。インフレ率2%の達成時期を6回も先送りするのではなく、難しいと認めればよかった。2%の物価安定目標に上下1%を許容範囲とすれば、2%はあきらめていないことを周知しつつ、家計や企業も日銀がなにがなんでも毎年2%達成を目指していると誤解するのを回避できます。その期間に必要で持続的な金融政策をパッケージにして出すべきでした。曖昧が一番いけない。

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    驚くことに、家計の預貯金残高は、どんどん増えている。定年を迎えた団塊の世代が再雇用され、以前より長く働いている分、収入も多く、それが貯蓄に回っているのです。加えて、保険の加入率と保険料の払い込みが減り、その分も預貯金に回っている。証券投資も増えていない。ゼロ金利なのに異常ですよ。本来ならもっと利回りを高めて老後の資産形成が必要なのに、ゼロ金利で利回りが低い預貯金への投資が増えているということは、高齢者の将来の生活が苦しくなるということですから。

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    株式市場を信用していないのでしょう。貯蓄性保険や変額年金保険、MMFなどの商品がなくなってしまったことも大きい。国債の利回りが低すぎて採算が取れないので金融機関がやめてしまった。その結果、皮肉なことに、家計にとって投資の選択肢が少なくなり、預貯金が増えているという状況です。現在の金融環境が続くと保険・年金の運用資産が低迷し、国民の老後の不安を高める恐れがあります。

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    中央銀行の総裁というのは、信頼できる物価見通しを出して、長期的視点でこの国の将来を考えながら、正直になることに尽きると思います。いったんは、円高・株安になるかもしれないけれど、そこは勇気を持って。国内の市場関係者はみな先行きを心配しています。それなのに、「問題ない」とフタをしてしまうのではなく、そうした人たちに対して、どう答えるのか。総裁は市場と誠実に向き合わなければダメだと思います。

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