言葉にすることで、自分が本当にそう思っているのか、うそをついてはいないか、それがはっきりするんです。
スタディのときもよく僕は、その建物を言葉にしてみることがあります。言葉にすると、自分がうそをついている部分がわかる。”こういう考えで、こういうふうにつくった建物です”と言ったときに、どこかで自分に対してうそをついていると感じるときがあって、それが言葉にするとはっきりするんです。本当におもしろいと思って言っているのか、そうでないのかが、わかる。人は、美しいと特に思っているわけでもないのに、勢いで美しいと言ってしまって、言ったあとに”違うじゃないか”と思ったりもするでしょう。
言葉でうまく言えたからいいとか、言葉にできないからダメということでは、全然ないんです。むしろ逆に、言葉でうまく言えたことでダメだと感じることもあるのです。
言葉にすると、外側から眺められるでしょう。自分の思いみたいなものを、客観的に聞けるようなところがあるんです。
思っていることを言葉にできるかというより、言葉が、何を思うかを決めるんだと思います。言葉にしたときに”ああ、自分はそういうことを言いたいのか”と、可能性が開かれるようなことですね。または逆に、言葉にしたときの違和感から、それを自分は言いたくなかったのだ、とも思う。
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by 西沢立衛