生駒芳子

いま私は、おしゃれな伝統工芸作品を開拓し、国内外に紹介するプロジェクトを手がけている。その名も「FUTURE TRADITION WAO」。日本の伝統工芸は、私たちが誇るべき宝であると同時に素材や製法がオーガニックだが、私はこれを極めて「エシカル」な産業だととらえて注目している。

環境問題が深刻化し、消費の動機が問われるいま、人々が求めるものは何か? その答えの一つが、“ていねいに作られたもの”であり、また“夢や物語を宿したもの”ではないだろうか。

One thought on “生駒芳子

  1. shinichi Post author

    伝統工芸から生まれた、ファンタジーをまとう新ブランド

    by 生駒芳子

    http://www.asahi.com/and_w/fashion/TKY201309050235.html

     いま私は、おしゃれな伝統工芸作品を開拓し、国内外に紹介するプロジェクトを手がけている。その名も「FUTURE TRADITION WAO」。日本の伝統工芸は、私たちが誇るべき宝であると同時に素材や製法がオーガニックだが、私はこれを極めて「エシカル」な産業だととらえて注目している。

     中でも、漆を用いた商品は、今さまざまな発展を遂げている。「漆」と聞くと、昔ながらの器や重箱を思い浮かべがちだが、その既成概念をいい意味で大きく崩してくれるのが、会津若松の「坂本乙造商店」だ。3代目の坂本理恵さんがブランド「坂本これくしょん」を80年代に立ち上げ、アクセサリーとバッグを展開している。それらは一見、「これが、漆?」と思うほどモダンでありながら、深い色、美しい光沢、豊かな輝きが、昔ながらの漆のクオリティを物語っている。

     木で作られたアクセサリーは、手に取ると驚くほど軽い。バッグの革には蒔絵がほどこされ、独特の装飾を生み出している。すでに、広く根強いファンを持つブランドだ。

     この「坂本これくしょん」から今秋、強い個性をもつ“妹ブランド”「mado mado collection」が誕生した。坂本理恵さんの娘の坂本まどかさんがデザインを手がける。彼女の生み出すファンタジー世界が、ブランドコンセプトのベースとなっている。

     「絵から飛び出てきたような世界や、わくわくする夢のある色を思い浮かべながら、バッグや小物を作りました」と、まどかさん。

     何よりも、独特の物語がブランドの決め手となっている。

     「ボンちゃんという17歳くらいの女の子が主人公です。彼女は、いつも6歳の頃の自分に戻りたいと思っている。夢の世界に生きるボンちゃんのファンタジーを表現しています」

     キャンバス地や革の上に、蒔絵の技法が丁寧に施されたボストンバッグやポーチには、ボンちゃん、丘の上の家、気球などが描かれ、持っているだけで夢の世界にトリップできそうだ。ブランドを立ち上げるにあたり、絵本も制作したという。

     坂本まどかさんは、京都造形芸術大学で日本画を学んだ経歴を持つ。家業の「漆」の世界で育ちながらアートを志した経験から、伝統的技法とモダンなファンタジーとをハイブリッドさせる独特のスタイルが、自然と生まれたという。単にかわいいだけではなく、アーティストの創造性がしっかりとベースにあって、配色もシックだ。それは、持ち歩くことで癒されたいと考える、忙しくアクティブな女性の心をしっかりとつかみそうな世界観。先端ファッションとの融合の可能性を感じさせる、これまでの伝統工芸には見られない新しい個性だ。

     環境問題が深刻化し、消費の動機が問われるいま、人々が求めるものは何か? その答えの一つが、“ていねいに作られたもの”であり、また“夢や物語を宿したもの”ではないだろうか。

    このブランドは、母から娘へと、ものづくりのDNAが発展的に受け継がれている点も素敵だ。「mado mado collection」 は、今の時代の問いに答える未来系のブランドに思える。

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