松永伸司

美的なダメ出しをすることになんの理由があるのか? 良いものを選別すればいいのであって、だめなものは放っておけばいいのではないか? 答えは単純だ。われわれは、肯定的な批評も否定的な批評も両方必要としている。成功から学べるものと同じくらい失敗から学べることはある。
対象がなんであれ、あらゆる批評の本質的な側面は評価だ。ちゃんとした批評は、評価を理由によって裏づけなければならない。記述は、ある創作物がどのようなものか、その諸部分がどのように互いに関連しあっているかを読者に伝えることだ。記述は、批評の他の側面の基礎になる。比較は、異なる創作物同士の類似と差異を指摘することだ。文脈化は、その作者が以前に作った作品、その着想源、より広い文化的状況といった枠組みのなかに当の作品を位置づけることだ。解釈は、この創作物の意味や重要性はなんなのかという問いに答えようとすることだ。これらの批評要素は、結局のところ評価の材料になるものだろう。それらは、理由づけられた評価のための土台を批評家に与えるものだ。

This entry was posted in learning. Bookmark the permalink.

One Response to 松永伸司

  1. shinichi says:

    Svendsen「ファッション批評について」

    by 松永伸司

    http://9bit.99ing.net/Entry/84/

    評価、記述、比較、文脈化、解釈

    ちゃんとした(proper)批評は、以下の5つの主要な構成要素を持っている。

    評価(evalutation)
    記述(description)
    比較(comparison)
    文脈化(contextualizaion)
    解釈(interpretation)

    このなかで批評の中心になるのは評価だ。批評の目的は、ある創作物のうちにある価値がなんなのかを、できるかぎり明瞭に述べることだ。しかし、評価それ単独では、ちゃんとした批評としては十分ではない。なんの批評基準も明示的な理由も与えずに、たんに評価をするというだけでは、批評とは呼べないだろう。また、「批評」(criticism)にしろ「批判」(critique)にしろ、たんなる否定的な意見と混同されることがよくあるが、正当化(justify)されていない意見は、否定的であろうが肯定的であろうが批評ではない。

    「criticism」と「critique」は、「判断する」(judge)や「決定する」(decide)を意味するギリシア語の「クリネイン」(krinein)から来ている。「クリネイン」はまた、「分ける」(separate)、「区別する」(distinguish)、「識別する」(discriminate)、「確定する」(determine)などを意味する。批評は、諸事物について判定を行い、どれが良くてどれが悪いかを区別することを目指す実践だ。批評には否定的なものも肯定的なものもあることは強調しておく必要がある。

    美的なダメ出しをすることになんの理由があるのかという疑問があるかもしれない。良いものを選別すればいいのであって、だめなものは放っておけばいいのではないか? 答えは単純だ。われわれは、肯定的な批評も否定的な批評も両方必要としている。成功から学べるものと同じくらい(場合によってはそれ以上に)失敗から学べることはある。

    わたしは、対象がなんであれ、あらゆる批評の本質的な側面は評価だと考えている。これは議論の余地のある主張だが、ここではそのような批評観を前提する。それに加えて、ちゃんとした批評は、評価を理由によって裏づけなければならない。

    記述は、ある創作物がどのようなものか、その諸部分がどのように互いに関連しあっているかを読者に伝えることだ。記述は、批評の他の側面の基礎になる。比較は、異なる創作物同士の類似と差異を指摘することだ。文脈化は、その作者が以前に作った作品、その着想源、より広い文化的状況といった枠組みのなかに当の作品を位置づけることだ。解釈は、この創作物の意味や重要性はなんなのかという問いに答えようとすることだ。これらの批評要素は、結局のところ評価の材料になるものだろう。それらは、理由づけられた評価のための土台を批評家に与えるものだ。

    ファッション批評家がもっとも関心を寄せるのはオートクチュールかもしれない。それは、解釈できる内容や独創性という点で、より豊かであるように思えるからだ。とはいえ、既製服もまた、少なくとも同程度に批評的な検討に値すると思う。人々の生活のなかで実際に役割を果たしているのは、その種の服だからだ。単純に美しさだけを目指した服もあれば、美しさは重要視せずに豊かな内容を表現することを目指した服もある。

    ファッション批評家は、ファッションの歴史にやたら詳しくあるべきだし、歴史の流れや転換点を指摘できなければならない。歴史を知ることで、明示されていない影響関係や様式的な結びつきを見てとることができるようになる。そうした事柄を指摘することが、ファッション批評家の仕事の重要な部分だ。

Leave a Reply

Your email address will not be published.