劇作家の井上ひさしさんには大学を休学し、故郷の岩手県で国立療養所の職員になっていた時期がある。ある日、療養所の所長さんから、こんな質問を受けた。
「二人の患者さんがいる。一人はボロボロの身なりで子どもを抱いている母親らしき女性。もう一人は見るからにお金持ちそうな威張り腐った態度の男性。君はどちらを先に医者へ案内しますか」-。「それは貧しい人です」。井上さんは答えた。返ってきたのは「君はだめだねえ」だった。「病気の重い方を先に案内するんだよ」。病人に貴賤貧富はなく、考えるべきは病状の重さである
劇作家の井上ひさしさんには大学を休学し、故郷の岩手県で国立療養所の職員になっていた時期がある。ある日、療養所の所長さんから、こんな質問を受けた。
「二人の患者さんがいる。一人はボロボロの身なりで子どもを抱いている母親らしき女性。もう一人は見るからにお金持ちそうな威張り腐った態度の男性。君はどちらを先に医者へ案内しますか」-。「それは貧しい人です」。井上さんは答えた。返ってきたのは「君はだめだねえ」だった。「病気の重い方を先に案内するんだよ」。病人に貴賤貧富はなく、考えるべきは病状の重さである
筆洗
東京新聞
(2018年7月12日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018071202000178.html