侘びとは、洗練されており、上品で優美な簡素さに、感動や美を見いだそうとする美意識を意味する。その侘びの精神を作り出しているものは、木や、土、石、わら、竹、各種の食材などの自然の素材である。それらを使って、本来持っている色・形・質感・味・香りなどを引き出して表現することによって得られる美しさが、侘びの心髄である。自然の中に見られる美であるが、自然に置かれている状態の美というよりは、素材の持つ良さを最大限に引き出そうとする人の手が加わることによって生れる美しさである。
寂びは、動詞の「寂ぶ」(「荒れる、古くなる、色が褪せる」の意)の連用形から生じている。形容詞の「寂しい」や、動詞の「寂びる」、金属の場合には「錆びる」という語に意味の繋がりがある。「枯れて風情が出る」とか「古びて趣が出る」と言われるように、時間が経過することによって引き出されてくる美意識を意味する。日々、愛情を注ぎながら使い込んでいる間に、自然とにじみ出てくる美しさや味わいを意味している。
侘び・寂びの色彩美とその背景―和の伝統的色彩美の特性を求めて
by 吉村耕治、山田有子
日本色彩学会誌 第41巻 第3号 (2017年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsaj/41/3+/41_40/_pdf
Wabi sabi suki : the essence of Japanese beauty
edited by Itoh Teiji (伊藤ていじ), Tanaka Ikko (田中一光) and
Sesoko Tsune (瀬底恒)
text by Itoh Teiji (伊藤ていじ)
translated by Lynne E. Riggs (リン・リグス)