山本マサヤ

SNS上には「事実かわからないけどもっともらしい情報」が溢れている。そのなかから正しい情報を選択する必要があるが、我々はウイルスの専門家ではないため、「正しい情報を見抜け!」「情報リテラシーを高めろ!」と言われても、なかなか難しい。
だからこそ、人間が持つ「信じたい情報を信じる」という脳のクセを理解して、それは「信じるべき情報なのか」「信じたい情報なのか」判断をする必要があるのではないか。
デマ情報は真実よりも約2倍の量リツイートされるという研究結果がある。人の恐怖を煽ったり、新しい刺激のある情報は、その情報が真実かどうか、悪意か善意か関係なく拡散されてしまう。そして、多くリツイートされた情報は「多くの人に支持されている情報」として、人間が反射的に認識してしまう。人間の脳はその都度考えたりせず、省エネで情報や状況を判断できるようにする脳のクセによるものだ。この機能は、情報の判断だけに限らず、物事の良い/悪い、安い/高いなど様々な人間の意思決定に無意識に影響を与えている。
そのことを知っておかなければ、あなたもコロナウイルスのデマ情報に惑わされてしまうかもしれない。

One thought on “山本マサヤ

  1. shinichi Post author

    デマだらけの新型コロナウイルス情報。なぜ人はデマに踊らされてしまうのか?

    by 山本マサヤ

    ハーバー・ビジネス・オンライン

    https://hbol.jp/213348/3

    https://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/デマだらけの新型コロナウイルス情報。なぜ人はデマに踊らされてしまうのか?/ar-BB10dZkI

     COVID-19(新型コロナウイルス)が猛威を振るっており、日本人の感染者も増え続けて死者まで出ている。今後のウイルスの拡散も怖いが、私が同様に怖いと思っているのは、SNSでのデマ情報の拡散だ。

    「信じたい情報」は鵜呑みに

     例えば、「紅茶ポリフェノールがインフルエンザウィルスの感染力を99.9%無力化することが確認された」という情報があるが、実際に論文を読んでみると、紅茶ポリフェノールが効果を発揮するのは、紅茶とウイルスを「ほぼ」同時に服用した場合である。

     実験では、ウイルスと紅茶エキスの混合液を吸引させており、細胞内に侵入してからは紅茶エキスの効果は発揮しないと記載されている。なので、もしこれを実行しようとすれば、ウイルスを吸引してしまったと自分で気づき、その直後に紅茶を飲む必要があるので、あまり宣伝文句のような効果を期待するのは難しいのではないかと思われる。

     このように、SNS上には「事実かわからないけどもっともらしい情報」が溢れている。そのなかから正しい情報を選択する必要があるが、我々はウイルスの専門家ではないため、「正しい情報を見抜け!」「情報リテラシーを高めろ!」と言われても、前提知識がなければなかなか難しい。

     だからこそ、私が思うのは人間が持つ「信じたい情報を信じる」という脳のクセを理解して、それは、「信じるべき情報なのか」「信じたい情報なのか」判断をする必要があるのではないかと考える。

    脳の“省エネ”も背景に

     Twitterを使ったMITの研究によると、デマ情報は真実よりも約2倍の量リツイートされるという研究結果がある。人の恐怖を煽ったり、新しい刺激のある情報は、その情報が真実かどうか、悪意か善意か関係なく拡散されてしまう。そして、多くリツイートされた情報は「多くの人に支持されている情報」として、人間が反射的に認識してしまう。

     これは、人間の脳はその都度考えたりせず、省エネで情報や状況を判断できるようにする脳のクセ(バイアス)によるものだ。この機能は、情報の判断だけに限らず、物事の良い/悪い、安い/高いなど様々な人間の意思決定に無意識に影響を与えている。

     そして、そのバイアスのことを知っておかなければ、あなたもコロナウイルスのデマ情報に惑わされてしまうかもしれない。

    さまざまなバイアス

    ●確証バイアス

     人間は自分が信じたい情報を信じるようにできている。一度、ある仮説を信じるとそれを肯定する情報ばかりに目がいってしまう。さらに、仮説を否定する情報を無意識に無視してしまうようになる。

     例えば、Aさんは一度もインフルエンザになったことがなく日頃から紅茶を飲んでいるとして、それを見たBさんが「ニュースで紅茶が効果があるって言ってたけど、本当なんですね」と、言ったとしよう。

     仮に、Aさんが「いや、毎年予防接種受けてるからだと思いますよ」と言っても、Bさんは確証バイアスに陥っているため、「いや、予防接種は100%予防するわけじゃないから、きっと紅茶の効果ですよ」と、反論してくるだろう。冷静に定量的にインフルエンザへの予防効果を考えたら、予防接種のほうが効果が高いはずだ。

     
     こうなると、正しい判断ができなくなってしまう。何かを信じる前に、まずは情報を網羅的に集めて、定量的・論理的に正しそうな情報を選択しないと、意味がなかったり逆効果なことをやってしまう。

     これは、ビジネスでも言えることだ。会社が抱える問題の仮説をひとつしか立てずに検証をしてしまうと、それを肯定する情報を重要と判断して、否定する情報をイレギュラーな情報や軽微な情報だと判断してしまう。

    中身よりも納得感や数字を見てしまう

    ●ストーリーバイアス

     人は真実よりも「納得感」のあるストーリーがあると、その情報を信じてしまう。よく、霊感商法にも使われるテクニックで、相談に来た人に対して霊能者が、霊の話を絡めながら納得感のあるストーリーを語ると、非現実的なことでも信じてしまうし、記憶に残りやすい。そこに納得感のあるストーリーがあるものの、客観的に見えると事実に沿っていなかったり、本人だけしか納得できない場合が多い。

     
    ●数字の信頼性

     SNSにおける「リツイート数」や「いいね」は、その数が大きいほど多くの人に支持されていると勘違いしてしまう。ただ、先ほど紹介したMITの実験でもあるように、短期間で多く拡散される情報ほどデマの可能性が高いので、数字だけを信じるのも危険である。また、情報の中に「99.9%」のような数字が入ってるだけでも、無意識の情報に対する信頼度を高めてしまうので、「その数字が何なのか?」「根拠があるのか?」を見極める必要がある。

    有名人の盲信は危険

    ●インフルエンサーの影響力

     フォロワー数が多い人や著名人は多くの人々から信頼されている人……という先入観から、彼らが言っている情報も正しいように思ってしまうというハロー効果がある。ただ、心理学に関する著名人の発言も間違ったものが多かったり、読んだ人が間違った解釈をしてしまいそうな投稿を多く見かける。

     著名人であろうとも一人の人間である。だから正しい情報を発信しているわけではなく、著名人だから発言に普通の人よりも責任を持っているわけではない。あくまで情報を選択した自分に責任があることを忘れてはいけない。

     
     人間が持つバイアスは、ここに列挙した代表的なもの以外にも数多くある。それらを全て列挙すると、逆に全てを意識できなくなる。

     まずは、上記4つを意識して、自分が認知した情報が「信じたい情報」なのか、「信じるべき情報」なのか判断してほしい。個人的には、新型コロナウイルスの予防策として、なんだかんだ、手洗い・うがいという基本的なことが最も効果があるのではないかと思う。それは、最も基本的なことで、もっとも効果的なことだからなのではないだろうか。

    【参考文献】

    『紅茶エキスによるインフルエンザウイルス感染性の阻止』国立予防衛生研究所ウィルス部ほか

    『MBA 心理戦術101 なぜ「できる人」の言うことを聞いてしまうのか』グロービス

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