最果タヒ

 今の日本語は、できるかぎりはっきりと、わかりやすく、誰にでも伝わるように整理して表現することが求められる。けれど、私にとって詩はその真逆にある言葉だった。わかりあうことなんてできないような、もやもやした曖昧な部分を、わからないままで、言葉にする。「わからないけれど、でも、なんかいいなって思った」と言ってもらえるとき、私はその詩がかけてよかったな、と思う。すべてを明確に記すことはないけれど、そのかわりに、グラデーションのような感覚を言葉にすることができるはずで、少なくとも私はそう信じてきたのだ。最初に訳そうとしたこの歌で、私は詩の言葉で訳す意味みたいなものを見つけた気がした。途方も無いことだな、とも思った。思ったけれど、でも私は、逃げないだろうな。一つ目の訳。そのとき、そんなことを考えていた。

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1 Response to 最果タヒ

  1. shinichi says:

    百人一首という感情

    by 最果タヒ

    9
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     花の色は 移りにけりな いたづらに
         わが身世にふる ながめせしまに 
                     小野小町


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