からだ

情とか心とかは 頭の中だけでなく 腹にも胸にも指先にも存在し
それぞれ勝手なことをする

頭に来て 頭が真っ白になり 頭が切れ 頭に入れ 頭を痛め 頭を悩ませ 頭を抱え 頭を冷やす
胸にこたえ 胸を痛め 胸に響き 胸に穴が空き 胸を衝き 胸に刻み 胸に浮かび 胸に納める
腹にこたえ 腹が立ち 腹ができ 腹が居て 腹が据わり 腹が癒え 腹を抱えて笑い 腹が決まる
指を指し 指を噛み 指を折り 指を弾き 指がふるえ 指を出し 指を立て 指をあて 指で示す
背を追い 背を向け 背にして 背伸びして 背が見えず 背に眼はなく 背に腹はかえられない
尻に火が付き 尻に帆を掛け 尻を落ち着け 尻を拭い 尻が重く 尻が軽く 尻を叩き 尻に敷く
手が離せず 手が出て 手を切り 手が空き 手が焼け 手が塞がり 手が出ず 手が後ろに回る
足を引っ張り 足を運び 足を延ばし 足を棒にし 足を掬い 足を洗い 足を向けて寝られない
口を開き 口を封じられ 口を挟み 口を慎み 口を出し 口を閉ざし 口を滑らす 口を結ぶ
耳にし 耳を塞ぎ 耳を澄まし 耳に挟み 耳に残り 耳に障り 耳に入れ 耳を疑い 耳を傾ける
唇を噛み 唇を尖らせ 唇を押さえ 唇を翻し 唇を封じ 唇を寄せ 唇を噛み 唇を噛みしめる
首を傾げ 首を横に振り 首を賭け 首を縦に振り 首を刎ね 首が据わり 首が飛び 首になる

情や心も負けじとばかり
それぞれ勝手なことをする

情に触れて 情を知り 情が湧き 情を増し 情を通じ 情に燃え 情にすがって 情に打たれる
心を交わして 心を許し 心を寄せて 心を開き 心は震え 心に染みて 心を動かし 心は痛い

足を引っ張られても 歩くことはできるし
手を切っても 手は切れていない

頭のなかが死んだとしても
耳は耳を澄ませて聞いている
たとえ脳が働かなくなっても
耳を傾け聞いている

胸のなかが死んだとしても
心は震えて痛がっている
たとえ心臓が止まっても
張り裂けそうにしている

脳死といっても人が死んだわけではない
人が死んでも細胞が死んだわけではない

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