五感

静かな場所は好きだけれども 音のない世界は いやだ
母の耳が老いてから聞こえなくなったせいもあるけれど
水の音も風の音も聞こえないのを想像すると つらい

落ち着いた照明の場所は好きだけれども 光のない世界は いやだ
真っ暗な闇の中に閉じ込められた夢を見たせいもあるけれど
君の目も君の唇も見えないのを想像すると つらすぎる

五感がなんだったかは すぐには思い出せないけれど
君の声を聞いて 君の顔を見て 君の匂いを嗅いで
君とのキスを味わって 君の肌に触れるのを想像してたら
五感だけでなく 他の感覚も欲しくなってきた

五感以上の感覚を持って森に入って 木や石とわかり合えたら
五感以上の感覚を持って山に登って 鳥や水とわかり合えたら
五感以上の感覚を持って君を抱きしめて 君とわかり合えたら
どんなにいいだろう

五感以上の感覚がきっとある
想像するのよりずっとたくさんの感覚がある
そんな感覚を研ぎ澄まして眠れば
きっといい夢を見ることができる

でも今夜は五感だけでいい
五感をぜんぶ使って君と眠ろう
きっといい夢を見ることができる
そう思う

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