悪い夢

高いところに上って街を眺めていたら
なにもかもが おかしく思えてきて
うつつがこんななら
いっそのこと夢に行ってしまおう とか
うつつと夢を入れ替えてしまおう とか
ろくでもないことを考え始めてしまった

うつつと夢を行き来している夢を見て
夢のなかで見た夢のことを思い出す

求められもしないで見た夢と
求めもしないで見た夢のなかの夢は
交わることがなさそうで
でも同じ夢なのかもしれないと思って
それで 何がおかしいのかを少し整理してみた

海や川や運河と陸との間には堤防があって
水のところと そうでないところとが
あまりにもきっちりと分けられていて
整然としていて 窮屈で 直線ばっかりで
道路も 直線ばっかりで
建物の敷地は 四角くて
見ていて うんざりしてきた

山や丘や崖や海や川や湖や池が
森や林や木や葉や根や草や花と
一緒になって作ってきた景色には
直線はなかったから
直線ばかりの街を見ていると おかしくて
この直線がなくなってしまったらいいのにと
思ってしまったのだ

墓石のようなビルが 整然と並ぶ街は
まるで巨大な霊園のようだ
人が作るものはどうしていつも
こんなにも醜いのだろう
機能美とかなんとか 言いつくろってみても
優しさが消えたのは 隠すことができない

動きが消えてしまった街を
車だけがゆっくりと動いてゆく
土を耕す人が見えるわけもなく
種を蒔く人も見えるわけがない
見えるわけのない たき火の煙が
なぜか なつかしい

下に見える景色は
うつつなのか夢なのか
夢のなかのうつつなのか
夢のなかの悪い夢なのか

これはうつつではないよね と言う
うつつの君が微笑む
やっぱりこれはみんな
夢なのかもしれない

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