別の空間

時は水の流れのように進み続け
止まったり戻ったりすることはない
春夏秋冬は繰り返すけれど
同じ春は二度と来ない
時が繰り返すことはない
 
目に見える空間はどこまでも広がっていて
際限のない空間は無限なのか有限なのか
ある空間が永遠に変わらないことはなく
ここはここ そこはそこと
言い切ることはできない

目を閉じて ふーっと息をして
耳を澄ませて 地面に触れて
風を受け入れて 別の空間のなかに落ちてゆく
 
見慣れた景色なのに 慣れない風が吹いていて
その場所に似合わない人たちが ゆったりとした時のなかで
聞いたことのない言葉を話している
 
ここはどこだ
という言葉の意味を わかる人はいない
みんなまるで
ここだけが大事みたいにしている
過去のことは水の流れに乗せ
未来のことは時の風に任せて
みんなまるで
だけが大事みたいにしている
 
過去とも未来とも関係のない

他のどことも関係のない
ここ
周りの場所と流れる時から孤立して
見えない何かを守り 怯えている人たちがいる
 
時間と空間を入れ替えてみれば 心は穏やかになるようで
暦や時計は空間のもの 地図や磁石は時間のもの
その場所で起こることは すべて一回かぎり
その時間に起こることは 他の時間にも起こりうる
 
始まりと終わりのない時間は
まるで円の上を回っているようで 同じことが何度も繰り返す
終わりに向かうその場所は
まるで戻ることがないかのように 同じ景色を二度は見せない

そんな空間にはいられないと思って
もう一度 目を閉じて ふーっと息をして
耳を澄ませて 地面に触れて
風を受け入れて 元の空間に戻る
 
この空間にある まるで円みたいな愛は
始まりと終わりがなくて いつまでも続く
愛だけではなく人生も 永遠に繰り返す
 
この時間にある 終わりに向かう愛は
始まりがあって終わりがあって いつまでも終わりに向かう
愛だけではなく人生も いつも終わりに向かう
 
終わらない愛や人生が 永遠の繰り返しだと知れば
終わりに向かう愛や人生が 輝きに満ちた瞬間の集まりに思えてくる
 
終わりに向かう愛は きっと いいものなのだ
終わりはきっと とてもいい時間で そこはきっと とてもいい場所なのだ
いつか終わりにたどり着く
誰も彼も 君も僕も

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