中庸

『ニコマコス倫理学』のなかに「μεσοτης」という徳が出てくる
行き過ぎの「蛮勇」と足らなさ過ぎの「臆病」の間の「勇気」とか
財貨についての行き過ぎと足らなさ過ぎの間の「満足」とか
怒りについての行き過ぎと足らなさ過ぎの間の「温和」とか
名誉についての行き過ぎと足らなさ過ぎの間の「矜持」とか
行き過ぎと足らなさ過ぎの間にあるのが「μεσοτης」という徳だ
アリストテレスは「μεσοτης」を守ることが大事だと説いた
「μεσοτης」は 孔子の『論語』のなかに出てくる「中庸」に似ている
孔子の孫の子思が完成させた『中庸』で説明されていることのそれぞれは
どれも「μεσοτης」のようだ

「μεσοτης」はいい
「中庸」もいい
極端でないのがいい
思慮深いところもいい

極端は面白い
だから信じる人は多いけれど
真実から遠いことが多い
逆に中庸は面白くない
だから人気はないけれど
真実に近いことは多い

中庸であるには
一方で努力し
他方で諦めるということを
しなければならない
相反することのバランスを保つのが
中庸なのだ

中庸を身につけた人は少ない
でも 中庸を身につけた人がいたら
どんなにいいだろうと思う

身につけることのできない中庸に
憧れている
その憧れは
君への憧れに似ている
ずっと憧れている

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