神田学会

日本画材の老舗得應軒は、神田淡路町、志の田寿司の向かいにある。大阪で筆師をしていた初代が上京し、創業したのが明治17年。今のご主人、宮内隆弘さんは四代目だ。創業当時から、絵の具、筆、紙、墨、すずりなど日本画の材料一式を扱っている。
二代目の市松氏は腕の良い筆師で、橋本雅邦、横山大観など、そうそうたる日本画家の筆をつくっていた。
「なかでも横山大観先生とは親交が深く、いつも『いっちゃんいる?』と店に入ってきたそうです。関東大震災でうちが全部焼けてしまったときも、大観先生のお見舞金で店を再建したと聞いています」と宮内さん。びっくりするような話が飛び出してくる。
また、日本画専用の筆を開発したのも二代目。それまでは中国の書筆が主に使われていたが、筆の弾力や水の含みなどを研究しながら、日本画に最適な筆を完成させたのだという。店内にはさまざまな形の筆が並んでいる。
そしてもうひとつ目をひくのは、顔料の数々だ。天然・新岩などの種類があり、それぞれ原料が異なる。天然顔料の材料は孔雀石や珊瑚など。新岩は、珪酸鉛と金属酸化物を高温で溶かして発色させたものだ。中でも天然顔料の鮮やかさ、深さには目を奪われてしまう。

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