主人公 足利義政(再生)


足利義政(あしかが・よしまさ)
永享八年生まれ。室町幕府第八代将軍。六代将軍足利義教の三男。早世した七代将軍足利義勝の同母弟。三代将軍足利義満の孫。母は日野重子。妻の日野富子は重子の兄の孫。富子との間に生まれた子が九代将軍足利義尚。異母弟に足利義視と足利政知(実際には兄)がいる。


「無能な将軍」でもなく、「日本文化の始祖」でもない、

   室町幕府八代将軍の、知られざる「こころ」の内。

東山山荘に招いた9人の客との「対話」をとおして、浮かびあがる彼の「思い」とは。

美を追求することで、義政が実現したかった世界とは。


憂き世ぞとなべて云へども治めえぬ我が身ひとつに猶嘆くかな


春来ぬとふりさけみれば天の原あかねさし出づる光かすめり

置きまよふ野原の露にみだれあひて尾花が袖も萩が花摺り

今日はまづ思ふばかりの色みせて心の奧をいひはつくさじ

見し花の色を残して白妙の衣うつなり夕がほのやど

さやかなる影はそのよの形見かはよしただくもれ袖の上の月

今日はまた咲き残りけり古里のあすか盛りの秋萩の花

わが思ひ神さぶるまでつつみこしそのかひなくて老いにけるかな

わが庵は月待山のふもとにてかたむく月のかげをしぞ思ふ

こぎわかれゆけばかなしき志賀の浦やわが古郷にあらぬ都も

つらきかな曽我の河原にかるかやの束の間もなく思ひみだれ


何事も夢まぼろしと思い知る身には憂いも喜びもなし