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森は連合赤軍に新しい方法を導入したが、これはアメリカではグループ心理療法としてよく行われるもので、さまざまな自己開発グループに広がっている。この療法の目的はより強い自己の形成を助けることにあるが、最初の段階では集団による批判、追及を行って、むだな防衛心を強く自覚させ、それを取り除かせようとする。通常、グループを率いるのは熟練した指導者で、集中批判というものが非常に残酷になっていきがちなことをよくわかっていて、行きすぎにならないように議論の方向をうまくコントロールする。
グループの指導者がはっきりしていれば、その人間が行きすぎに歯止めをかけることができる。しかし、明確な指導者なしで意識高揚法、グループ批判会がはじめられた場合でも、アメリカでは、グループは普通、平等主義の意識が強いので、そのプロセス自体に異議や不安を表明することができ、過度に批判的になるのを抑えることができる。しかしそれでも、素人がこの療法を用いるのは危険で、行きすぎが見られる場合が多い。ドラッグ中毒者のリハビリや、自己改善セラピーなどは、この療法を誤用しているとして非難されている。
連合赤軍は、行きすぎの傾向に歯止めをかける手段を二つとももっていなかった。熟練した指導者もいなかったし、グループの平等主義もなかったのである。
>パトリシア・スタインホフ 『死へのイデオロギー』
>http://neojaponisme.com/?x=0&y=0&s=Patricia+Steinhoff