丘より見ゆる海は青し
夏の畑につくりし
胡瓜のごとき色を
にがく走らせたり
海はひねもす
わが乾ける瞳を刺し
われは此処に住みて
はや四年となりし
わが生活はまづしけれど
まづしさも己のものぞと
一筋にがき海に向かひて
語りきたれる
妻よ
今日も海は光れリ
人の住む陸を抱きて
するどく海は光れり
丘より見ゆる海は青し
夏の畑につくりし
胡瓜のごとき色を
にがく走らせたり
海はひねもす
わが乾ける瞳を刺し
われは此処に住みて
はや四年となりし
わが生活はまづしけれど
まづしさも己のものぞと
一筋にがき海に向かひて
語りきたれる
妻よ
今日も海は光れリ
人の住む陸を抱きて
するどく海は光れり
海は光れり
by 加川文一
この詩は
という桐田しづの短歌で始まる。
桐田しづは加川文一の妻であり、こころの支えであった。
『南加文藝』 (ロサンゼルスに根づいた文芸誌)
『鉄柵』 (戦時中に収容所内で発行されていた文芸誌)
Hidden Flam (詩集 in English, 1930)
不 安
by 加川文一
知らないものに対して
僕は臆病だ
知っているものに対しては
もっと臆病だ
存在は哀しい
底流れのした肩のやうにかなしい
ひらひらと一匹の蝶が
僕の肩をかすめて
野の方へ飛んでいく
路ばたには
小さい花が咲いている
埃を浴びて誰にも知られず
小さい花の小さい眼が
痙攣している